『阿蘭陀流』!異端の俳諧師井原西鶴の生んだ素晴らしい俳句の数々

 

「俳諧の 息の根とめん 大矢数(おおやかず)」

貞享(じょうきょう)元年(1684年)井原西鶴満38才の時、

“すみよっさん”

こと、
大坂の住吉大社の社前で執り行った独吟会にて、

なんと一昼夜かけて次から次へ句を

「詠んで詠んで詠みまくろう」

という無謀な企画。

題して

『西鶴大矢数』

その冒頭で

したり

と詠んだのが記事頭の句。

そして、
詠みも詠んだり

なんと!
23500句!

4秒で1句

という人智のおよばぬ超ハイペース!

実は
井原西鶴、
元々俳句で売り出していたんですね。

今回はこの面妖な男のひねり出した名俳句の数々を紹介いたします。

 

「I am『阿蘭陀流』!」浪速のばさら俳諧師見参

だれが言い出したか

『阿蘭陀流(おらんだりゅう)』

奇をてらい不逞。

異風にして斬新。

世の常道をどこまでもあざ笑うかのように今日もゆきます。

独立独歩の井原西鶴!!

この男が俳諧を志したのが満16才の時。

23才で早くも点者(俳諧を評点する人)に。

31才”いくたまさん(大坂の生國魂神社)”で万句俳諧を興行!
↑まるで野外フェスやん!

この時、

「世こぞって濁れり 我一人清(すめ)り」

(世の中はみな濁っとる。せいぜいわしだけやな。清いんは)

「賤(やつがれ)も狂歌を吐けば、
世人阿蘭陀流などさみして、
かの万句の数にものぞかれぬ」

(わしみたいなもんでも、どしょうもない歌吐き散らせば、
世の中は阿蘭陀流などと悪しざまにしくさりおる。
なんの。
この万句の数にもおよばんかい!)

「雀(すずめ)の千こゑ鶴の一声」

(雀の千声でもな。塵も積もれば鶴の一声ぐらいにはなりおんねん!)

今風に言えば
浪速に現れたカリスマロックスターじゃないでしょうか。

満35才で奥さん亡くなって追善供養にまた1000句の追善興行ですよ!
↑そこまで芸にしてまうんかいっ!

その後も1600。

3000。

4000。

と、どんどん実績を伸ばし、

とうとうあの前人未到の記録にまで到達してしまった、

とういうわけです。

ヤンチャさでは同時代の近松門左衛門も松尾芭蕉も足元にもおよびません。

 

井原西鶴名句集

長持(ながもち)に 春かくれゆく 衣がへ

長持とは今のタンスです。

つまり、春は衣替えの季節。

寒かった季節ずっと着ていた衣類をタンスの中にしまいこむ。

そこに、さりげないものや季節に対する思いを垣間見せているのでしょう。

鯛(たい)は花は 見ぬ里もあり 今日の月

鯛や桜の花を見ることができない里もあるだろうけど。

今宵の月はそんな万人のためにも照っているね。

大晦日(おおみそか) 定(さだめ)なき世の 定かな

この頃は年を越えるというのは大変でした。

一年の総決算ですから、借金を清算するなど、逃れがたいいろんな人の世のドラマが起こってまいります。

そんななんともやるせない世こそがこの世の定めなんだよな。

浮世の月 見過しにけり 末(すえ)二年

井原西鶴数えで52の年。

旧暦の九月九日。

辞世の句です。

「この世の月 見てまいりました 52年」

という意味です。

そこにこめられた思いというものはみなさんでぜひ想像してください。

きょうのまとめ

若いころはとかくムチャクチャで、

世にまかり通るためにまあ風狂のかぎりをつくした人です。

生き馬の目を抜く商都大坂で、

人の動きと銭の動きを見極め、

どこまでも
シニカル(冷笑的)で

スペキュレーティブ(投機的)で

リーズナブル(合理的)。

しかし、そこは生存競争シビアなビジネス至上の社会。

それにつきまとう多くの栄達と没落をナマで目の当たりにすることになります。

さらに本人は、
息子を二人とも早いうちに養子に出したといわれ、

奥さんを、

そして、
盲目だった娘さんも若くして亡くしました。

あれだけ栄華を誇った自分の文名においても近松門左衛門や松尾芭蕉といった若い才能の突き上げを経験しました。

① 井原西鶴は『大矢数』と銘打ち、「一日に何句の俳諧を人前でひねり出せるか」という興行を行い、最高で23500句という驚異的な記録を打ち立てた

② 井原西鶴はかなり異端の俳諧師で、人からは『阿蘭陀流』と呼ばれていた

③ 井原西鶴の俳句はいずれも普通の人のさりげない心情をてらいなく詠ったところに味のあるものが多い

時の移ろい、
そして、
人のごくありふれた日常と心情のさりげなさ。

邪道と言われても、極めぬけばここまで行くんですね。

そして、思うんですが、なにが彼のこれを支えたんでしょうか。

 










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