麒麟がくる第三十五回「義昭、まよいの中で」|それでも光秀は将軍に仕えたい?

 

幕府や将軍との関係悪化を顧みない織田信長の勢いをストップさせるため、今や彼のナンバーワン家臣・明智光秀(十兵衛)の命が狙われた。

絶対に光秀が今死なないのはわかっていても、心配ではあるこの『麒麟がくる』第三十五回

今週も視聴した感想を見たまま、感じたままをお伝えしよう。
 

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光秀。城持ち大名としての自覚を


ついに近江おうみ坂本城主となる明智光秀。

このステータス、エライかエラくないかで言ったら、やっぱエライだろう。

光秀はお殿様!

ならば光秀よ、城持ち大名であるという自覚を持とうか。

キミはお殿様なのである。

だがドラマで見る彼の態度は、今までと変わらないフツーさ加減だ。

偉そうな殿様に豹変しろとは言わないが、大丈夫なのか?

みんな光秀に付いてきてる?

明智左馬助さまのすけと藤田伝吾以外の家臣がいるのかも分からないので心配だ。 

今回、光秀を狙った暗殺計画を知らせて助けてくれた伊呂波太夫へのお礼も、光秀自身が彼女の家に足を運ぶのではなく、本来なら彼女を呼びつけてもオッケーのはず。

それくらいの身分なんだから。

全然ハングリーじゃない光秀

今回光秀は帝にも興味を持ち始めた。

帝に向いて働こうとする信長の気持ちを理解するためなのか? 

光秀の狙いがよくわからない。

彼はどこかふわふわしている。

立ち位置がはっきりしないというか。

・将軍義昭の切羽詰まった感じ

・信長の神仏を恐れぬ貪欲ぶり

・秀吉の出世への憧れ

みんな欲望を持って力の限りギリギリで生きているのに、光秀だけが城主としての自覚もまだなく、全然ハングリーじゃない。

・麒麟が来る世の中を作りたい

・大きな国を作りたい

・武士の棟梁は将軍であるべきだ!

そんな理想や観念ばかりを追いかける光秀が必死になればなるほど、我々は共感しにくい。

応援したいのに、具体性のない光秀の必死さに共鳴できない。

もっとギラギラしようよ、光秀。

ここは戦国時代だ。
 

さよなら、摂津晴門

ついに明智光秀に摂津晴門せっつはるかどが直接触手を伸ばした。

将軍主催の茶会で光秀を暗殺しようと計画したのだ。

口のかるい駒ちゃんから善意で伝えられた極秘情報は、伊呂波太夫からさらに細川藤孝への伝言ゲームとなって伝えられた。

で。

どうして光秀は、その藤孝の「ア・ブ・ナ・イ」のアドバイスを受けてもなお足音も高々に危険エリアに向かうのだ? 

相手が何人で、どこに潜むのかも知らぬままで先へ進む無謀。

案の定、集団に襲われた光秀は足に怪我し、将軍のいる部屋に逃げ込んで命拾いした。

最終的には、三淵藤英みぶちふじひでと細川藤孝ふじたかの手配で摂津晴門を捕縛し、失職させることに成功したのだ。

あーあ、いやらしい手段と工作で将軍周辺を掻き回していた彼がいなくなった。

ここ最近、わかりやすい悪役として爪痕つめあとを残した摂津晴門。

でも考えてみたら、彼が嫌われたのは役柄のいやらしさ以上に、晴門を演じた片岡鶴太郎の過剰演技が原因だった気もする。

とにかくこれで将軍周辺に筆者を笑わせてくれる人材がなくなったのがちょっと寂しい。

お疲れ、晴門。
 

戦国社会のトップ2 帝と将軍

正親町天皇と足利義昭将軍、みんなどっち好き?

と意味のない質問をしてみるのだが。

キモい将軍は演技の上手さの証明か


ゲスの勘ぐりと言われようが、一体駒ちゃんと将軍はどういう関係なのかめっちゃ気になる。

あの悲田院は完成したのか、もう話にも出ない。

今や駒ちゃんは写経する将軍の墨をするめかけっぷり。

そんな2人がキモい

将軍は、怒ったり泣いたりとストレスもマックス気味だ。

さすがに本気じゃないんだろうが、自殺をほのめかすほど。

ツライ立場は分かるけど、彼は元高僧だったんだから、それなりに昔の悟りの心を思い出して落ち着いて欲しい。

しかも言うに事欠いて

「信長とは性が合わん。会うた時からそう思うてきた」

だって!?

一体どの口がそんなことを言うのだ。

かつてはめっちゃ信長に尻尾を振ってたじゃん!

涙を流し、声を裏返しながら叫ぶキモい将軍。

光秀もよくまあこの将軍を前にして忠誠を誓えるものである。

だって、全然頼りにならないぞ。

もしや、光秀は将軍に尽くすことを説得するために信長の家臣となり、聞く耳を持たない信長に業を煮やして本能寺の変を起こしたとか・・・!? 

新しく筆者が考えてみた本能寺の変の動機である。

ところで、将軍はキモイが、キモイ将軍を演じる滝藤賢一は素晴らしい。

目まで血走ってた感じがしたけど、あれも演技かな?

さすがは大物・正親町天皇


ストレス疲れの将軍と比べ、正親町おおぎまち天皇は悠然としたものである。

彼は、自分のひと言の影響力を理解している賢い帝だ。

弟の覚恕かくじょは帝に嫉妬し、あの織田信長も帝に褒められて彼に心酔している有様だ。

帝は人をコントロールするのが上手いのだ。

そんな彼が、今回は随分光秀を持ち上げる発言もしたが、次は光秀を転がそうとしているのだろうか、少し心配ではある。

それにしても、伊呂波太夫が

「帝のことをよく知る人物がいます」

と言った時、

「出た-、東庵先生のことや!」

と思った筆者のような人、絶対いるはずだ。

実際は公卿で古典文学者の三条西実澄さんじょうにしさねずみのことだったが、東庵先生よりも彼こそ帝の囲碁の相手に相応しいと思うが。 

 

麒麟がくる第三十五回「義昭、まよいの中で」

将軍・足利義昭の思うように幕府を動かすことの出来ない苛立ちと、織田信長への不信に苦しむ様子が描かれた第三十五回。

光秀にとっても将軍にとっても邪魔だった摂津晴門はついに消えた。

今回の感想の簡単なまとめ

① 明智光秀はもっと城持ち大名らしく振る舞うべきでは?

② 摂津晴門がついに政所職を追われた。将軍周辺から笑える要素が消えるのが寂しい.

③ 元高僧とは思えないほど将軍義昭の情緒不安定ぶりが激しい

楽しみにしていた武田信玄は今回は出番ナシだった。

来週こそ、信長の天敵・武田信玄の活躍を見てみたい。

 

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歴史ライター、商業コピーライター 愛媛生まれ大阪育ち。バンコク、ロンドンを経て現在マドリッド在住。日本史オタク。趣味は、日本史の中でまだよく知られていない素敵な人物を発掘すること。路上生活者や移民の観察、空想。よっぱらい師匠の言葉「漫画は文化」を深く信じている。 明石 白(@akashihaku)Twitter https://twitter.com/akashihaku