7~9世紀頃の日本の国家体制を「律令国家」と呼ぶことがあります。
律令国家とは律令・格式という決まりによって、運営される国家のこと。
ということで、律令は国家のかたちをつくるものです。
古代日本に存在した律令の中でも、特に有名なのは藤原不比等が制定した「大宝律令」と呼ばれるもの。
そこで今回は大宝律令とはどういったもので、どのようにつくられたのか、
簡単に紹介していきます。
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大宝律令とは?
大宝律令とは701年に成立した律令です。
律令は古代の中国に倣って定められたもので、律と令に区分することができます。
律とは今でいうところの刑法、令は行政法・民法にあたります。
日本における律令の歴史
大宝律令は突然できたものではありません。
そこで簡単に、日本における律令の歴史を見てみましょう。
- 668年 近江令(中臣鎌足らが編纂したとされる令。完成・施行が疑問視されることもある。)完成
- 689年 飛鳥浄御原令(天武天皇の命でつくられ、持統天皇の治世に施行。飛鳥浄御原令で規定されて以来、大王を「天皇」と呼ぶようになったとみられています。)施行
- 701年 大宝律令成立
- 718年 養老律令(元正天皇のときに成立。およそ40年後、藤原仲麻呂によって施行された。)成立(757年施行)
- 769年 刪定律令(吉備真備らが制定。812年に廃止。養老律令の不備を改めたもの。)制定(791年施行)
上記を見ていただくとわかるとおり、大宝律令以前に存在したのは律のみです。
よって大宝律令は律と令がそろった、日本初の体系的法典といえます。
大宝律令は養老律令が施行されるまで、律令国家の基本法制として機能していました。
大宝律令の内容
さて、それでは大宝律令には何が書かれていたのでしょうか。
大宝律令は律6巻・令11巻の法典と伝わっていますが、
残念ながら本文は残っていません。
現存していない大宝律令の原文
ですがその後制定された養老律令の内容は、実は大宝律令と大差はなく、
さらにその注釈書『令集解』にも大宝律令は引用されていました。
現存はしていませんが、大宝律令のおおよその内容は今にも伝わっているのです。
有名な規定を紹介
それでは具体的な内容を見ていきましょう。
とはいえ、すべて紹介することは不可能なので、有名な規定を選んでみました。
- 五刑:罪の重さによる刑罰を定めたもの(「笞・杖・徒・流・死」の5つ)
- 八虐:特に重罪とされる犯罪を規定し、特別な取り扱いをした(謀反・謀大逆・謀叛・悪逆・不道・大不敬・不孝・不義の8つ)
- 二官八省制:官僚機構を定めたもの(二官=神祇官・太政官 八省=太政官の下に置かれた8つの機構。中務省・式部省・治部省・民部省・兵部省・刑部省・大蔵省・宮内省)
- 官位相当の制:位階(序列)に見合う官職に任命される制度
- 蔭位の制:高位者の子・孫は一定の位につける制度
などが規定されています。
藤原不比等たちはどのように編纂したのか?
それでは、大宝律令はどのようにしてつくられたのでしょうか。
大宝律令は文武天皇の命によって、編纂が開始されました。
編纂事業の総裁を務めたのは刑部親王(天武天皇の子)でしたが、実質的なトップは藤原不比等でした。
他にも薩弘恪(唐出身の官僚)や田辺史(渡来系氏族出身の人物)らもメンバーに加わり、19名による編纂作業が行われています。
さて、もとは中国の制度を真似たものなんだから、
編纂なんて簡単でしょ?
というのは大きな誤解です。
確かに刑法にあたる律は、唐の律をほぼ受け継いだものでした。
他方で行政法・民法にあたる令は、日本の国情を踏まえて改変されています。
一方、編纂者に都合の良いように変えたのでは? と思う点もあります。
上記で紹介した蔭位の制などは大織冠(冠位の最上位。中臣鎌足が史上唯一与えられた。)を与えられた中臣鎌足の孫、
すなわち藤原不比等の子どもたちが、出世のスタート時点では無敵状態になるということになりますよね。
このように、5年ほどの時間をかけて編纂されたという大宝律令。
令は701年、律は702年に施行されました。
きょうのまとめ
今回は藤原不比等らが制定した大宝律令について、簡単に紹介しました。
① 古代中国に倣って、古代の日本でも律令が制定された
② 大宝律令は律と令がそろった日本初の体系的法典
③ 大宝律令は藤原不比等を中心として編纂された
④ 大宝律令には藤原氏有利と考えられる規定もあった
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より理解を深めたい方は、ぜひお読みになってくださいね。
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