8人の主君に仕えたことで、裏切り者、薄情者などと呼ばれることもある
藤堂高虎。
しかし、戦国の世において主君を変えて働くことは一つの処世術であり、優秀な人間でなければ転職がそう簡単に決まるわけがありません。
変わる主君に次々と召し抱えられる高虎は、それだけ出来る武将だったのです。
そんな彼が残した名言の3つをピックアップしながら、足軽から徳川家康のお気に入り大名となるまで出世した、藤堂高虎のフィロソフィーについてご紹介します。
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3つの名言からわかる藤堂高虎のポリシー
勇将、城作りの名人、多趣味の文化人・・・。
藤堂高虎にはいろんな一面がありましたが、彼が遺した言葉には、どんな時にもぶれない精神的な強さが感じられます。
藤堂高虎の名言1. 主君に指図はしない
「案が一つしか無ければ、秀忠様がそれに賛成した場合私に従ったことになる。しかし二つ出しておけば、どちらかへの決定は秀忠様が行ったことになる」
(1つだけの案に秀忠が賛成した場合、自分が決めたものに賛同してもらった、またはさせた形になってしまう。しかし案を2つ用意しておけば、秀忠が自分の意志で選び、決定したことになる)
1619年、徳川秀忠が二条城を改修することになりました。
娘の和子を後水野尾天皇へ入内させることを控え、その基本設計を築城の名人・藤堂高虎に任せたのです。
その時、高虎が秀忠に提出した基本設計案は2つありました。
なぜ案が2つもあるのかと問われた際に述べたのが上記の言葉です。
たとえ自分の考えが正しいと思っていたとしても、それを押しつけるのではなく、あくまで決定権は主君にあるべきだという高虎の考えです。
仕える主人を7人も変えながらうまくやっていた高虎なりの気配りなのでしょう。
そして、彼のそういう所に主人たちも気持ち良くさせられていたのかもしれません。
藤堂高虎の名言2. 死ぬ気で生きろ
「寝屋を出るよりその日を死番と心得るべし。かように覚悟極まるゆえに物に動ずることなし。これ本意となすべし。」
(一歩寝所を出れば、その日が自分の死ぬ日かもしれない。その覚悟があれば動じることはない。そう思って生きろ)
身長6尺2寸(約190cm)もある大男だったと言われる藤堂高虎が座右の銘としていた言葉だそうです。
のちに、幕末に活躍した新選組は、治安の悪い京の市中見回りをする際には、隊士が順番で「死番」を担当しました。
「死番」は戦いになった時に隊の中で真っ先に飛び込む担当です。
それが最初から決められていたために、当番の者は既に覚悟ができており、新選組の行動には躊躇がなかったと言われています。
似た考えを、すでに高虎はいつも持っていたわけです。
「武士たる者、いつ死んでもいい覚悟がなくてどうする」ということでしょう。
この座右の銘は、高虎が築城した伊勢の津城跡にある彼の銅像に記されています。
藤堂高虎の名言3. 武士は実力で生きるもの
武士たるもの七度主君を変えねば武士とは言えぬ
(武士なら七度くらい主人をかえなければ武士とは言えない)
この言葉から、藤堂高虎は後世に「薄情者」や「裏切り者」などと呼ばれることなど考えてもみないほど、自分の行動に迷いはなかったと考えられます。
実力のある武士ならば、次の主君にも必ず雇われるはずだという自負も見え隠れする言葉ですね。
高虎は主君を7度変えた経験はありますが、それは裏切りや寝返りなどではありませんでした。
まだまだ言い足りない高虎の204番目の家訓
歴戦の勇士でもあった藤堂高虎は、なかなか自分に厳しい人でした。
いろいろなルールを自身に課し、家の者たちにも守らせようとしていたようです。
というのも、晩年の高虎の口伝を家臣が記録したという200箇条の家訓(と呼ばれていますが実際は204箇条)があるからです。
上記にご紹介した「その日を死番と心得るべし」の名言は、その家訓の第1条です。
この家訓は、江戸時代に藤堂藩で編纂された『宗国史』あるいは『高山公実録』と呼ばれる史書の中の『遺書録』に書かれています。
そして最後の204条目は、とても印象的です。
(物事を聞くときには、根本のことを聞いてはいけない)
この言葉を最後に持ってきたところに、高虎らしさが出ています。
本音と建て前を分かっている高虎の、人の上をいく感覚のなんと鋭いことか。
あなたは言葉をどう解釈するでしょう?
きょうのまとめ
今回は、何度も主君を替えたことで知られる藤堂高虎の名言を3つご紹介しました。
簡単にまとめると
① 藤堂高虎の名言は彼の生き方のポリシーであり、自信、気配り、心得などが表わされている
② 高虎は、204箇条にのぼる家訓も残すほどルール好きの面もあった
名言や家訓など残された言葉から、武将本人の性格を推し量るのもおもしろいものですね。
藤堂高虎の年表を含む【完全版まとめ】記事はこちらをどうぞ。
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