麒麟がくる第十七回「長良川の対決」の感想|泣いていいすか?

 

ついにこの日がやって来た。斎藤道三対斎藤義龍(高政)の親子対決。

第十七回「長良川の対決」の感動シーンを振り返りながら、見たまま感じたままをお伝えしたい。

 

麒麟がくるのその他の回のあらすじ、感想はこちらをどうぞ。
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『麒麟がくる・美濃篇』の最終回として

今回の見どころは、もちろん斎藤道三と息子の斎藤義龍(高政)との間で繰り広げられた長良川ながらがわの戦いだ。

親子としての歯車はもはや噛み合わず、家族の中で憎み合い、殺し合う最悪カード。

圧倒的劣勢の道三が挑んだこの戦いと彼の死をどう見るか。

そしてもう1つの(正確には2つ)の注目シーンは、明智光秀の生涯でおそらく最初となる負け戦に伴う親しい者たちとの別れである。

明智光秀は、織田信長や今川義元などと違って、主君を変え、居場所を変え多くの人々との出会いと別れを繰り返しながら成長していった武将だ。

今回彼にどんな別れが待っていたのか。

 

荒唐無稽?でも感動する父子対決

今回の斎藤道三と義龍の対決シーンの是非については色々意見があるだろう。

しかし、これまでの道三を想っていた視聴者にとっては、これくらいやってもらわなくちゃ、道三が浮かばれん! 

ドラマですから。

設定がおかしい?知ってます

史実にもしくは戦いの常識に忠実な歴史ファンからすれば、今回の長良川での対決はツッコミどころ万載だと想像する。

・道三が難なく川を渡って対岸の敵軍へとたった一人でやって来たこと

(道三の家臣たちはどうした? 義龍軍は黙って道三を見ていただけ?)

・数で圧倒的に優勢な軍を持つ義龍が、道三の一騎打ちに応じたこと

(なんで? 義龍が危険な賭をするのが意味不明)

こんなのあり得ないよね? 

でも、ドラマ制作者たちは、そういった常識的なポイントで勝負してないのだ。

道三には、最高のセッティングをしてやらなくてはならなかった。

じゃなきゃ、道三を応援する視聴者の気持ちが浮かばれない。

今まで気持ちがすれ違ってばかりだった父子にせめてガチンコ勝負で向き合う時間を持たせたことは、よかったんじゃないだろうか。

画面の中の美しい道三

初回からそうなのだが、『麒麟がくる』の中での斎藤道三は、演出の仕方も、演技もセリフも衣裳まで全てが非常に劇画チック。

テレビ画面の中の所作がいちいち決まるのだ。

今回、最後の雄姿となる僧形・鎧姿の道三は、長い槍を抱えながら衣を翻し馬を駆って川を渡る姿、槍を振り、構える姿が美しく最高! 

その後の悲劇の予感を一瞬忘れて義龍の前に現われる道三の姿に血が騒いだのである。

道三のセリフの意味

さらに、本木雅弘バージョンの斎藤道三ときたら、最後まで完璧な演技。

視線や時折聞かせる悪魔的な笑い声・・・あれは道三が降臨していたね。

息子の義龍と一騎打ちとなった道三は、自分が義龍の父だとアピールする。

義龍を「父親殺し」に仕立ててダメージを与える戦法だ。

あわよくば一騎打ちで義龍を討取る可能性も考えていたのでは? 

道三はかなりの槍の遣い手だったそうだし。

「皆を欺き、美濃をかすめ取るのか」

「我が子高政(義龍)、愚か者。勝ったのは道三じゃ」

これを聞けば道三の意図がわかる。

道三が一人で敵軍に乗り込んでいった時点で、彼は死に場所を求めながら、バカな息子に最大限のダメージ「父親殺し」の汚名を着せようとし、彼はそれに成功したのだ。

道三が槍に突かれ、最後に崩れるように義龍の胸へと落ちていった時に、父子はお互いの温もりと、この争いの愚かさを少しでも感じたのではないだろうか。

義龍の目の涙がそう感じさせた。

どこから歯車が狂ったか、つくづく悲しい父子だなぁ。

そして我々は、これで図太くて美しかった斎藤道三にサヨナラだ。

 

優しすぎて別れが辛い

今回ほど明智光秀が主人公だと実感した回はなかった。

斎藤道三は勇ましく散っていったけれど、主人公の光秀は敗戦を乗り越えてこれから生きて行かなくてはならない。

「わしはそなたにはくみせぬ」

光秀がそう義龍に宣言したのは、いかにも彼らしく格好いいけれど、その後の叔父や家来たちとの別れがあまりに悲しいものだった。

叔父・明智光安の優しさに泣く

正直に言って、西村まさ彦演じる明智光安に対する筆者のイメージは、長い間「滑舌が悪い、お人好しなだけの武将」であった。

だが、前回あたりから筆者の意見も方向転換した。

明智家の血筋を絶やしてはいけないと心に決めていた光安。

そのために光秀や息子の秀満(左馬助)に明智家の未来を託そうとする心優しくも必死な叔父の姿に感動しなかった人いるだろうか。

「逃げて、逃げて、生き延びよ」

「明智家の主として再び城を持つ身になってもらいたい」

その言葉を光秀に託しながら、光安はおそらく明智城と共に亡くなる。

号泣する光秀。

ドラマ開始以来、初めて筆者は光秀のこれほど激しい感情を見たことはなかった。

鳥と戯れることの多かった優しく平穏な日々を過ごしてきた明智光安を長く見てきただけに、彼が決断したこの別れに光秀と同様に心を揺さぶられた筆者である。

もう一人の心優しき人物・藤田伝吾

筆者が最初から注目していた藤田伝吾。

ああ、もういいよねー、この人。

好きです。

史実としては、彼は光秀の重臣となり、本能寺の変まで一緒に突き進むメンバーなのだ。

だから筆者はまさか今回別れの時がくるとは思っておらず、全くのノーマークだった。

これにはやられたー。

明智荘から去ることを拒む光秀の母・牧を優しく、満面の笑顔で説得する伝吾。

頑なだった牧に対し、明智の村は彼ら百姓が長く守り続けるので

「今日は旅に出てくださりませ」

のセリフで落とす。

なんて上手いんだ。

筆者的には、彼の牧を見つめる視線がそのまま素通りして、こちらを見つめているような錯覚まで・・・。

思えば、伝吾は最初からとても強くて、頼りがいのある家来で、子煩悩で実に素敵な人物だった。

いずれドラマのどこかの時点で光秀と合流するはずだ。

伝吾、あなたと再会する日を光秀と一緒に待ってます。

 

麒麟がくる第十七回「長良川の対決」

今回は美濃篇最終回ということで、涙無しには終われないエピソードとなった。

今回の感想の簡単なまとめ

①長良川での雄壮な戦いぶりの道三と義龍の父子対決は、義龍に「父親殺し」の汚名を着せた死んだ道三の勝ち、そしてサヨナラ

②心優しき光秀の叔父・明智光安の別れの決断と光秀に託す未来に泣けた

③光秀の母の頑なな心も溶かす強く優しい藤田伝吾の説得とキラー笑顔が最高

なんだか帰蝶も父親・道三の死にめげず、遠隔操作ながらまだまだガッツリ戦国の男たちの戦いに入り込んでいる様子。

来週からの越前編では、新たに登場する人物と光秀を中心とする旧来のメンバーとのからみ具合に注視してみたい。

 

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歴史ライター、商業コピーライター 愛媛生まれ大阪育ち。バンコク、ロンドンを経て現在マドリッド在住。日本史オタク。趣味は、日本史の中でまだよく知られていない素敵な人物を発掘すること。路上生活者や移民の観察、空想。よっぱらい師匠の言葉「漫画は文化」を深く信じている。 明石 白(@akashihaku)Twitter https://twitter.com/akashihaku