麒麟がくる第四十回「松永久秀の平蜘蛛」|動機探しだ!

 

前回のエピソードでは明智光秀(十兵衛)妻・煕子ひろこが亡くなって終了した。

戦国ドラマというのは最終回に近づくにつれ、重要人物の死に遭遇することが多くなるものなのだろうか。

『麒麟がくる』第四十話では、タイトルそのままに松永久秀の最期に多くの戦国ファンが注目する回となったはずだ。

見たまま、感じたままを率直にコメントさせていただく。

 

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推理ゲームはもう始まっている

戦国時代のドラマ視聴の醍醐味の一つは、合戦場面だ。

が、これから『麒麟がくる』で多くの戦が描かれる可能性は少ない。

「じゃ、何を楽しみにドラマを観りゃいいんだよ」という方は、これからは「本能寺の変の動機探し」に燃えよう。

光秀が信長を討つ決心をした直接のきっかけは何だったのか。

黒幕はいるのか。

フラグは立ってないか? 

チェックするべき人物は誰だ? 

正親町おおぎまち天皇か、足利義昭か、徳川家康か? 

今エピソードの松永久秀の茶釜・平蜘蛛ひらぐもだって無関係じゃないかも。

無意識にあなたも探してない?

そう、動機探しの推理ゲームはもう始まっているのだ。

 

ナレ死は免れた松永久秀

ついに、ドラマ初期からの長い付き合いだった武将・松永久秀が死んだ。

このところ重要武将があっさり死ぬケースが頻発している『麒麟がくる』。

筆者は松永久秀の死がどう扱われるのか心配で、心配で・・・。

最近は市川海老蔵のナレーションが聞こえてくると、次は誰のナレ死なのかとイヤな予感しかしなかった。

今回、死ぬには死んだが、松永がナレ死じゃなかったのは不幸中の幸いなんである。

爆死はないが、彼らしい死に様だった松永

松永久秀は信貴山城しぎさんじょうで挙兵したが、織田信長の嫡男・信忠を大将とする軍に負けて自害した。

所蔵する大切な名物茶器たちに次々と火を放ち、死を選んだ松永。

伝説にあるような自爆ではなかったが、炎をバックに家臣たちの前で腹を掻き切った彼らしい最期だった。

また、朝倉義景、浅井長政、武田信玄たちのようにあっさりと突然の死に見舞われることもなく、死ぬ前には光秀との密会があり、彼の心情を語る機会があったことにも救われた。

ただ、挙兵後に多少の戦闘場面はあったものの、久秀自身が奮闘するシーンがなく、自害までの時間が短かったことは少し残念だったが。

光秀の泣き顔?顔芸?

ちょっとここで文句も言いたい。

密会して光秀と一緒に涙を流すシーン、筆者はそれほど感情移入できなかった

だって、2人とも「らしくない」じゃん。

松永久秀は涙など見せず、強がって言いたい放題喋っているほうが、切なさが出たんじゃないだろうか。

光秀役の長谷川博己は、カッコイイけど泣くシーンはあまり上手ではないといつも思う。

同様に、久秀の死後に届けられた平蜘蛛を受け取るときの「顔芸」も違和感しかなかった。

あれにビックリした人、いると思う。

どうしちゃったのよ、光秀!?

ただ、松永の「罠」が、光秀を本能寺の変へと導くのに関わった可能性について考えるきっかけにはなったが。

久秀以上に重要?名物茶器・平蜘蛛の扱い

第四十話のタイトルにある「平蜘蛛」とは、蜘蛛のように見える平べったい茶釜のことだ。

ドラマの中では、この平蜘蛛が光秀に譲られたことになった。

そして、光秀は松永との絆を大切にするあまり、この茶器の行方を尋ねる主君信長に対して「知らない」と嘘をついた。

その嘘は光秀と信長の間の溝をまた少し深くしていく。

ストーリーの中では、松永久秀以上に茶釜が重要な役割を果たしているようにも見えた。

少なくとも信長は松永より茶釜が大切だったか?

 

信長の孤独

正直者で、実直で、どんなに恐れ多い相手でも思ったことを進言してきた男、光秀の嘘は信長にとってショックだったのだろう。

光秀の嘘に更なる孤独を感じる信長

ここ数回のエピソードで泣き、唸り、怒る信長の狂気は進行中。

誰にも理解されない信長がどんどん孤独になっていく。

今回も彼が蔵のような場所で一人泣き叫ぶシーンがあった。

あれは何に対しての思いだったのか。

松永の死か? 

名物を入手できなかった口惜しさか? 

去って行く帰蝶への怒り・・・?

どんなときも信長を支え彼の精神的な支柱であり、唯一甘えられる存在の帰蝶ですら、信長の気持ちを理解できなくなってしまったのだ。

あの、かつてフィクサー然としていた帰蝶が「疲れた」と言って美濃の館に戻ると決心した。

帰蝶も光秀も去った後、ぜいを尽くした自慢の城・安土城の広い広い広間でぽつりと坐る城主。

そこにいたのは、誰にも理解されない孤独な武将・織田信長だった。

光秀と秀吉の性格の違い

だが光秀の娘・たまと細川忠興との結婚を取り持とうとする信長は、まだ完全に光秀に裏切られたとは思っていないだろう。

裏切りというよりも、思いもかけない光秀の嘘を知った驚きが強かったのではないだろうか。

一方、光秀の嘘を探り出した羽柴秀吉は彼独特の鋭さで、まだ光秀さえ気づいていない主君への裏切りの芽に気づいたのかも。

信長暗殺よりはるか前からその可能性に気づいていたからこそ、秀吉は本能寺の変のあと、中国大返しという早業で出張先の備中高松から信長の弔い合戦に戻ってくることができたのでは? 

光秀は松永久秀との絆と信長への忠義を比べ、松永を取った。

一方、秀吉は光秀との繋がりと信長への忠義を天秤にかけて、信長つまり自分の出世を取ったわけだ。

2人のスタンスの違いを見た思いである。

いろんなところに本能寺の変への伏線らしきものが張り巡らされているではないか。

 

麒麟がくる第四十回「松永久秀の平蜘蛛」

梟雄と言われながらもどこか憎めない人気武将・松永久秀。

今エピソードは、その彼がついに最期を迎えた忘れられない第四十回となった。

今回の感想の簡単なまとめ

① ドラマはもう明智光秀による「本能寺の変」の動機探しの場となっている

② 爆死ではないが、松永久秀は彼らしい最期を迎えた

③ 光秀の平蜘蛛に関する嘘に、松永との絆を感じた

④ 誰にも理解されない織田信長の孤独が象徴的だった

松永久秀が自害した「信貴山城の戦い」は1577年の出来事である。

そしてドラマは本能寺の変まであと5年、最終回まであと4回となった・・・。
 
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歴史ライター、商業コピーライター 愛媛生まれ大阪育ち。バンコク、ロンドンを経て現在マドリッド在住。日本史オタク。趣味は、日本史の中でまだよく知られていない素敵な人物を発掘すること。路上生活者や移民の観察、空想。よっぱらい師匠の言葉「漫画は文化」を深く信じている。 明石 白(@akashihaku)Twitter https://twitter.com/akashihaku