麒麟がくる第二十五回「羽運ぶ蟻」の感想|ねぇ、誰が神輿を担ぐの?

 
先週の将軍足利義輝が亡くなったロスを引きずりたいところだが、どうやら戦国時代はいつまでも感傷に浸らせてはくれそうもない。

『麒麟がくる』第二十五回では、将軍の後継者の選定が進みつつある。

さっそくドラマの展開について見たまま感じたままをお伝えしよう!

 

麒麟がくるのその他の回のあらすじ、感想はこちらをどうぞ。
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信長と光秀の奇妙な関係

美濃国が織田信長のものとなり、かつて斎藤道三が光秀と何度も対面したことのある稲葉山城の広間が、織田家バージョンにデコレーションされて信長と共によみがえった。

なんだかちょっと懐かしい気分にさえなる。

そして筆者は、前回に流れた予告編での信長のひと言を待っていた・・・。

せっかくの仕官が・・・

ヒゲを蓄えるようになった信長は、少し態度にも貫禄がついてきた様子。

以前のように、浦島太郎のような釣り師ファッションをすることもなく、今やすっかり大名然としている。

そして訪ねて来た光秀に対し、待望のひと言

「わしに仕える気はないか」

のジョブオファーをしたのである。

でも光秀はそれを断ってしまう。

あーあ。

せっかくの仕官のチャンスだったのにー。

なんせ光秀の存在はまだこの時期も半分フィクションだ。

この時期から2人の間に主従関係の密約があってもよかったけれどなー。

カリスマじゃない信長

どうやら2人の立場は全く違うようで似ていた。

将軍・足利義輝あしかがよしてるを失った光秀は「この先自分でもどうしてよいのかわからない」。

一方、信長も美濃国を取ったものの「その次に何をすればいいのかが分からない」。

そんな2人が、光秀の提案でお互いの共通項である斎藤道三が残した言葉「大きな国づくり」を目指し、わははと笑って意気投合。

でもなー、なんかなー。

信長ってこんな人物だっけ? 

そんな従順な信長を我々は見たかったのだろうか。

「どうしたらわからないから光秀の言うこと聞く」とか。

彼が戦う動機だってそうだ。

「(戦で勝って)皆が褒めてくれた、喜んでくれた。皆を喜ばすための戦ならばいとわぬ」

信長のこだわりはそこ? 

承認欲求を満たすため?

一瞬、

「戦が嫌いではない」

という信長の言葉に、斬新な発想と行動で周囲を出し抜く信長のカリスマ性を筆者は期待したが、それは空振りだったようだ。

足利義昭と朝倉義景と光秀

この3人、実によくわからない。

行動がナゾだらけなのだ。

端的に言えば、光秀に頼らず足利義昭あしかがよしあき朝倉義景あさくらよしかげ2人が直接会えばいーんじゃないの、という話。

足利義昭は、なぜ光秀に会いに来る?

今回、光秀が美濃から越前に戻ると、なんと足利義昭が光秀宅を訪問していた。

これには光秀も驚いただろうが、筆者も驚いた。

一介の牢人に次期将軍候補がボロボロの家に会いに来るものだろうか。

彼には、羽を運ぶありを自分に見立て、助けが必要だと冷静に考える頭脳があるのだ。

頭は悪くないと思うが、すがる相手がいないため、必死だったのか?

だが、今エピソードの中で、実は第14代将軍・足利義栄よしひでがあっさり決まってしまってお気の毒。

これからは義昭の挽回に注目だ。

朝倉義景は足利義昭にどうして直接会わない?

筆者が朝倉義景の家臣なら、こう進言したい。

「足利義昭に直接会って自分の目で彼の将軍としての器量について確かめてみては?」と。

義景は、家臣でもない牢人の明智光秀に将軍候補の実力の判断を任せるなど、なぜ重要な作業を自分でしないのかが不思議。

光秀が心変わりして「強い大名が助ければ、義昭も将軍になれるかも」と言えば、勢いよく話に乗った義景は、ついに神輿みこし(義昭)をかつぐ決心をしたように見えた。

さらに「美しい神輿をかつぐなら、軽い方がよい」などと思わせぶりな発言もしたくせに、そんな重大な話も、途中のネズミ脱走騒ぎでうやむやに終わる。

結局何も決まらないこのぐだぐだ感。

さっさと義景が義昭に会ってれば、結論も早くでるというものを。

 

駒ちゃんの薬

さて、否定的な意見が続いてしまったので、ここで新たな視点でドラマを観てみたい。

まず、新キャラクターが登場した。

堺の豪商で、茶人の今井宗久いまいそうきゅうである。

NHKの公式サイトによれば、彼は今後駒ちゃんがつくる魔法の薬「芳仁丸ほうじんがん」のスポンサーになる人物だという。

駒ちゃんの慈善で始めた薬作りが大きなビジネスへと発展するぞー。

彼女は、今エピソードの中で厳しい戦国時代の別の現実を見せてくれた。

慈善のための薬を「転売してでも生活していかなければならない貧困層の存在」である。

おまけに現代の転売ビジネスを揶揄やゆしてる!?

光秀のボロ家が御殿に見えるほど貧しい人々の暮らしぶりを見せるには、キャラクターとして駒の存在は重要である。

ま、好き嫌いはあるでしょうがね。

 

一番信用できる人・伝吾の登場

今回一番嬉しかったのは、何と言っても藤田伝吾の再登場。

待ってました。

信長が故・斎藤義龍よしたつの息子である龍興たつおきを追放し、美濃を押さえたことによって、光秀の母親・牧が美濃の明智荘へと戻ることができた。

相変わらず温かく牧や光秀を迎えてくれたのが、強くて優しい「でんごー」なのである。

光秀や牧と伝吾たちとの別れの回想シーンは、あの名場面を見た時のウルウルをもう一度甦らせてくれた。

今回再会してもウルウルだもの。

思うに、藤田伝吾は、このドラマの中で一番まっすぐな人物として明智左馬助と双璧ではないだろうか。

ありがとう、伝吾。

あなただけが変わらず信用できる。

それにしても、光秀の母・牧は年を取らないのがうらやましい。

 

麒麟がくる第二十五回「羽運ぶ蟻」

今回のエピソード『麒麟がくる』第二十五回「羽運ぶ蟻」では、批判的内容も多かったと思うが、これもドラマ愛が高じた結果である。

どうかご理解いただきたい。

感想の簡単なまとめ

①織田信長は承認欲求を満たそうとするよい子ではなく、もっとカリスマに振り切って欲しかった

②朝倉義景はさっさと足利義昭に直接会えばよいと思う

③駒ちゃん、戦国貧困層、無料の品の転売についての問題提起はお疲れさま

④ありがとう、藤田伝吾。復活にまた涙したよ

さて、ようやく足利義昭もやる気を出し始めたが、皆がごにょごにょやってる間に第14代将軍・足利義栄が決まってしまったよ。

細川藤孝は怒り狂っているのではないだろうか。

 

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歴史ライター、商業コピーライター 愛媛生まれ大阪育ち。バンコク、ロンドンを経て現在マドリッド在住。日本史オタク。趣味は、日本史の中でまだよく知られていない素敵な人物を発掘すること。路上生活者や移民の観察、空想。よっぱらい師匠の言葉「漫画は文化」を深く信じている。 明石 白(@akashihaku)Twitter https://twitter.com/akashihaku