麒麟がくる第二十回「家康への文」の感想|何やっとんねーん

 

京で懐かしい人と親交を深め、決別をした後の越前での明智光秀(十兵衛)がちょいと心配ではあった。

越前では牢人という現実に向き合わなくちゃいけない彼は、大丈夫なのか。

やや子も生まれて家族も増える。

『麒麟がくる』第二十回ということで、大河ドラマも中盤に差し掛かってきた。

気を抜かずにドラマの進展について見たまま感じたままをお伝えしたい。

 

麒麟がくるのその他の回のあらすじ、感想はこちらをどうぞ。
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はっきり言います「何やっとんねーん、この人ら」

今回のエピソードには正直言って派手な見せ場はなかったけれど、良い場面はあったし筆者の不満はそれではない。

ただ、「何やっとんねーん」を幾人かの登場人物にぶつけたいのだ。

駒ちゃんと東庵先生

今回、駒ちゃんが松平元康とおしゃべりしながらカジュアルに歩いていて少々びっくりだ。

実在の人物ではないのはわかっちゃいるが、東庵先生と駒ちゃんがいともたやすくエライ人とからんでしまえることが、さすがに鼻についてきた。

彼らにまだ駿河を離れられない理由でもありましたっけ?

東庵先生、一体京で弟子に任せてきた診療所はどうなってますか?

経営大丈夫なの?

京の一般市民の患者よりも、今川義元周辺のお世話をするほうを選んだの? 

確かに、争いごとの多い場所には医者の需要もあるだろうが、東庵先生といい、駒ちゃんといい、歴史上の武将たちとあまりにも都合良く繋がりすぎてやしませんか。

これに伊呂波太夫が加われば、日本全国の大名全てとお友達になれるかも。

ただ、戦国の世に生きて行く上で、駒ちゃんも東庵先生も2人が手に職を持っているということはかなりの強みだとは思う。

引っ張りダコなのかなあ。

ドラマでは、駒ちゃんが光秀の家族に布や薬草を贈ったりできるほど潤っている様子ですしね。

光秀、あなたが理解できない

明智光秀は、東庵・駒ちゃんコンビに比べて経済的にも精神的にもいろいろキツそうだ。

なんせ光秀は一人で養うべき人々が沢山いる。

称念寺で読み書きを教えてはいるものの、ハッピーに見えない。

駒ちゃんから贈られた薬草を質にいれなくては米も買えない状態で、家計は火の車だ。

逆に、今までよく持ちこたえたな。

かといって、朝倉に仕官すると思いきや、平和そうに蹴鞠をする朝倉義景に怒っているし。

かなり逼迫ひっぱくした家計状況だが、どうするつもりだろうか。

し・か・も筆者がピンと来ないのは、

「そんな光秀がなんで織田信長のことや、駿河と尾張の関係について心配するのか」

ということだ。

牢人の光秀にとって、織田が勝とうが今川が勝とうが大きな影響はないでしょ。

信長に仕官するわけでもなく、どうして織田方の味方をしようとするのか。

斎藤道三に言われた「大きな国」のため? 

とにかく、主人公の光秀がイライラしているから、筆者も応援したいけれど、彼が何をしたいのかわからないから応援のしようがない。

斎藤義龍の名言を繰り返そう。

「お主何がしたいのだ!?」

光秀、応援したいのにあんたが理解できない。

帰蝶さんはもういいですから、信長を・・・

帰蝶がしっかり者だというのは、よーくわかってる。

筆者としては、帰蝶がただのきれいなお姫様に終わらなかったことを歓迎している。

しかし、事が起きるたびにことごとくリーダーシップを取られてしまうと、ちょっと・・・引いちゃう。

このままでは信長、全然見せ場がないじゃん。

なんか彼の本能的な勘とか、狂気に満ちた凄さとか見せてくださいよ。

まさか、帰蝶は桶狭間の戦いにも食いついてコントロールするつもりだろうか。

帰蝶さんよ、信長を自由にやらせてやってはくれまいか。

信長も、もちっとシャッキリして欲しい。

 

「ようやった!」この人たち

「何やっとんねん」と思う人たちもいたが、一方で「ようやった!」と伝えたい人たちもいる。

ありがとう!今川義元

いやあ、今回今川義元がちゃんと会話したねー。

かなり前から顔を出しながらも、ほとんど雰囲気だけを漂わせて、何も喋っていなかったよね、この人。

今シリーズの片岡愛之助演じる義元は、お歯黒をした公家っぽいタイプではなく、「海道一の弓取り」の名にふさわしい凄みを持つ男だ。

彼が喋ると、大河ドラマに重厚感がプラスされるので、見ていて嬉しい。

だけど、来週もう「桶狭間の戦い」か・・・。

演者としては、もっとセリフが欲しかったんじゃないだろうか。

さすがの源応尼

また源応尼げんおうにもやはり真野響子という熟練の女優が演じているからだろうか、見ていて安心感があった。

気負いを感じさせない自然な演技に、元康の育ての親としての愛情がうまく表現されていた。

石川さゆりのお牧の方と同様に、やっぱ大河ドラマはこういう人が出てこなくちゃ。

ようやった!元康、於大、菊丸の3人が作った感動シーン

派手な場面ではなかったが、今回の一番は元康が母からの手紙を受け取って読むシーンだ。

初登場の風間俊介は、素直な青年・松平元康を好演。

松本若菜による於大おだいの方は、抑えた演技と涙で母親の悲しみを上手く表現した。

・息子を思う正直な母親の心境を文に綴った於大の方

・文を読んで変わらぬ母親の愛情に心を揺さぶられる元康

・その文を届けることで、三河の人々の気持ちを代表する菊丸

3者の思いが折り重なるようにして感動シーンに仕上がった。

そう、今回筆者は菊丸も評価している。

彼のダメ押しのセリフである

「今川ある限り、三河は100年後も日が当たりませぬ。私はこの日のために殿にお仕えして参りました」

に、しっかり感動。

菊丸がいつもよりカッコ良いと思ってしまったよ。

 

麒麟がくる第二十回「家康への文」

第二十回の「家康の文」は、ドラマの内容にドストライクのタイトルだ。

あの小さかった竹千代もすっかり青年元康になっちゃったわけですし、彼が自由の身になる日も近いぞ!

今回の感想の簡単なまとめ

① 駒・東庵コンビの登場具合はあまりにもご都合主義的ではないか?

② 越前に住む牢人の明智光秀がなぜ織田家対今川家の戦いに必死になる?

③ 於大の方、松平元康、菊丸三者の静かな感動シーンに満足

 

麒麟がくるのその他の回のあらすじ、感想はこちらをどうぞ。
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歴史ライター、商業コピーライター 愛媛生まれ大阪育ち。バンコク、ロンドンを経て現在マドリッド在住。日本史オタク。趣味は、日本史の中でまだよく知られていない素敵な人物を発掘すること。路上生活者や移民の観察、空想。よっぱらい師匠の言葉「漫画は文化」を深く信じている。 明石 白(@akashihaku)Twitter https://twitter.com/akashihaku