麒麟がくる第十五回「道三わが父に非(あら)ず」の感想|道三が道三になった!

 

コロナウィルスの影響で『麒麟がくる』も撮影延期を余儀なくされているらしい。

外出自粛生活以前から見続けている大河ドラマの視聴は、自宅籠城中も変わらず楽しめる数少ない娯楽の一つ。

ウイルスの感染拡大が早く収まり、どうかドラマも中断せず続いて欲しい。

アマビエ樣にお願いしながら、第十五回について見たまま感じたままをお伝えしたい。

 

麒麟がくるのその他の回のあらすじ、感想はこちらをどうぞ。
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これぞ我々が知る道三だ

斎藤利政というのが道三の出家前の名前であるが、現代の我々には「道三」のほうの通りがいい。

ついに「利政→道三」となったのが、第十五回だった。

迫真の演技と美しい衣裳で、「イケテル坊主・道三」爆誕

出家して頭を丸め、名を道三と改めた今回からの彼は、現存している斎藤道三の肖像画にぐっと近づく。

「これが思ってた道三だよ!」と言いたいが、いやいや、思った以上にカッコイイ。

こんな出家アリ? 

袈裟姿も赤と黒という「斎藤家」カラーを渋く主張し、ツルツルの頭でも滑稽さはまるでゼロ。

お似合いです。

ドラマの中で全く誰も「素敵」と褒めないのが不自然なほどだ。

本木モックンの渾身の演技も素晴らしかった。

話しの終盤に血に染まった手を掲げて吠える道三。

家督を譲ったにもかかわらず、異母弟の孫四郎と喜平次2人を殺した側室の子・高政へ怒りをぶつける様子は、今エピソード一番の演技だ。

道三を演じるのがモックンで良かった。

道三&雪斎。枯れない出家者たち

道三の怒りまくりの様子を見れば、家督を譲った、出家した、とはいえ本人のパワーは衰えていないことは一目瞭然だ。

前回、側室の深芳野が亡くなった時は、かなり弱った風で心配したが、もう立ち直っている様子。

道三演じる本木雅弘が述べている「ギラギラした道三パワーを見せつけていきたい」の言葉通りだ。

出家つながりで言えば、今川義元側の軍師・太原雪斎たいげんせっさいも、坊主だというのにバリバリでございます。

雪斎役の伊吹吾郎の年齢を感じさせない逞しさ、重みある演技には不動の安定感がある。

それにしても、お坊さんっていうのは殺生をしないはずなのに、雪斎なんて軍師である。

戦国時代に生きる彼らに「出家したらもう枯れちゃう」という決まりはないらしい。

 

暗殺はリモートコントロールで Let’s enjoy!

見ぃつけた! 自分の手を汚さずに人を殺めるワルが今エピソードに2人もいた。

コントロールがお上手な帰蝶

まず1人目は帰蝶である。

前回の「聖徳寺の会見」などで、信長をうまく演出する彼女の手腕を見せつけられていたが、あれはまぐれではない。

今回の彼女がコントロールするのは、義理の叔父・織田信光。

信長に敵対する清須城の織田彦五郎から囲碁の誘いを受けたと打ち明ける信光に、

「打ち(討ち)に行けばよろしいのではないかと。碁(彦五郎)を」

とみたらし団子を御馳走しながら含みを持たせてするりと誘った。

信光の持つ団子から垂れるタレに注意を促す彼女は、まるで

「このチャンスを逃してはダメよ」

と言いたげだったし。

結局、信光は囲碁の最中に彦五郎の殺害に成功し、信長はこれで尾張をほぼ手中におさめることになった。

帰蝶は自分の指一本も動かすことなく夫・信長の援護に成功したのだ。

きれいな顔をしていても、マムシの娘はマムシだ。

つくづく、信長と帰蝶って、最強コンビ。

義龍を露骨にあおる稲葉一鉄

悪役顔、と言っては稲葉一鉄(良通)を演じている村田雄浩に申し訳ない。

でもやっぱドラマでは不思議なくらいイヤな顔してるわ。

この人、まるで洗脳でもするかのように義龍をたきつけているし。

稲葉一鉄は、どこからそんな話を聞いてきたのか、

「(道三が信長の尾張での勢力拡大を知り)我が子のように喜んでいた」

「気の利かぬ高政(義龍)に代わって(道三が)祝いの名馬を2匹帰蝶に贈った」

「わし(稲葉)は殿(義龍)の味方だが、国衆の中には高政は側室の子だという者も・・・」

と、義龍に告げる。

さらにはダメ押しで

「(義龍の異母弟)孫四郎が信長の後押しで、稲葉山城の城主・義龍に取って代わるかも」

なんてことまで。

義龍の動揺と怒りの炎に燃料を次から次へと投下したのだ。

こいつもかなりのワルですね。

仕組んだワナで、義龍が横になってる間に弟殺しを実行させる

稲葉一鉄の言葉に背中を押された義龍だって、妹の帰蝶に負けぬほど相手に一指も触れずに殺す芸を持っていた。

というわけで彼が2人目の暗殺首謀者だ。

考えたら恐ろしい兄妹である。

彼の場合は、仮病を使って寝込んだふりをして弟らを呼び寄せ、家臣によってだまし討ちした。

自分を土岐頼芸ときよりのりの息子だと信じる義龍にとって、母も父も違う弟たちなどただの他人、ということか。

板戸一枚を境に、殺される弟たちの音を耳にしながら寝具の上で微笑む義龍。

戦国時代って怖い。

予想外のなごみをありがとう

今回、だまし討ちばかりのドロドロしたストーリーの中、唯一なごんだのが、藤吉郎こと秀吉の登場シーンである。

雨の中、漢字の先生である駒を待ち続け、無邪気について回り、「一軍の大将になるのだぁー」なんて、と目をキラキラさせながら大きな声で夢を宣言する秀吉。

何かほっとする。

もしかして、可愛い・・・? 

まさか秀吉でこんな気持ちにさせられるとは筆者も不覚だった。

表裏あるのが判明している菊丸よりもずっと素直じゃん。

さすが人たらしと呼ばれた秀吉である。

さらに純朴ながらも、今勢いがあるのは今川よりも織田である、と時代を読むほどの頭のキレもある。

明智光秀はうかうかしてはいられない。

もう、道三にも義龍にもいい顔するだけじゃなく、自分の立場を表明する時が来ている。

秀吉だって、あと3、4日で本の漢字も読めるようになりそうだし、追いつかれちゃうよ!!

麒麟がくる第十五回「道三わが父に非ず」

織田氏が織田氏を、斎藤氏が斎藤氏を討つドロドロの争いが展開された第十五回エピソード。

斎藤道三の息子・義龍への怒りの爆発は次なる大爆発へと繋がっていきそうだ。

今回の感想の簡単なまとめ

① 出家した道三は、格好良さにますます磨きがかかり、義龍の暴挙への怒りで凄みを増した

② 稲葉一鉄に後押しされた斎藤義龍と帰蝶の兄妹は、それぞれ目的の人物を自分たちの手を汚さない形で消し去った。これもマムシの子だからか。

③ 秀吉の登場で和み、彼を可愛いとさえ思う予想外の展開だった

ところで光秀は、今回道三に「どうして高政(義龍)に家督をゆずったのか」を尋ねた。

道三の答えは、
「そんな大切なことはタダでは話せぬ」。

えええ-、それ絶対知りたいわ。

めっちゃわだかまってます。

 

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歴史ライター、商業コピーライター 愛媛生まれ大阪育ち。バンコク、ロンドンを経て現在マドリッド在住。日本史オタク。趣味は、日本史の中でまだよく知られていない素敵な人物を発掘すること。路上生活者や移民の観察、空想。よっぱらい師匠の言葉「漫画は文化」を深く信じている。 明石 白(@akashihaku)Twitter https://twitter.com/akashihaku