小野小町の和歌は夢をうたったものが多い?6首を現代語訳と一緒に紹介

小野小町

 

小野小町おののこまち「夢の歌人」とも言われています。

例えば『古今集』には、小野小町の歌は18首おさめられていますが、そのうちの6首は夢をうたったものです。

今回は、小野小町の夢の和歌を現代語訳とともに紹介していきます。

 

小野小町の夢の和歌6首

思ひつつ・・・

まずは代表作と言われるこちら。

小野小町
思ひつつ ぬればや人の 見えつらむ 夢としりせば さまざらましを

【現代語訳】あの方を思いながら寝たから、夢に現れたのでしょうか。もし夢とわかっていたら、醒めなかったのに。

(引用:『小野小町 コレクション日本歌人選003』大塚英子/笠間書院)

今でも共感する人が続出する歌ではないでしょうか。

そういう夢って、いいところで醒めてしまいますよね。

うたた寝に・・・

小野小町
うたた寝に 恋しき人を 見てしより 夢てふものは 頼みそめてき

【現代語訳】うたた寝の夢の中で愛しい人を見てから、夢というあてにならないものを信じ始めてしまいました。

(引用:『小野小町 コレクション日本歌人選003』大塚英子/笠間書院)

古代の人は、夢は運命を予言するものと信じていました。

ですがこの歌の中で小野小町は、「夢というもの」とちょっと醒めた見方をしています。

それと同時に、そんな夢を信じ始めてしまうという、恋する乙女心も表現されているんですね。

いとせめて・・・

小野小町
いとせめて 恋しき時は むばたまの 夜の衣を かへしてぞ着る

【現代語訳】恋しくてたまらない夜は、夜の衣を裏返して着るのです。

(引用:『小野小町 コレクション日本歌人選003』大塚英子/笠間書院)

この訳だけだと、何を言っているのかわかりませんよね。

「夢」という言葉が出てきませんが、どうして夢の歌だとわかるのでしょう。

一般的には、このように説明されます。

古代の人たちは寝巻を裏返して着ると、愛しい人の夢を見ることができると信じていました。

これを反衣はんいの俗信と言います。

この和歌には直接的な表現がなくても、夢の歌とわかるのはこのためです。

 

さて、今紹介した3首の歌は、「夢の歌三首連作」なんて呼ばれたりします。

ここからは、少しだけ恋が進展していきます。

うつつには・・・

小野小町
うつつには さもこそあらめ 夢にさへ 人目をよくと 見るがわびしさ

【現代語訳】現実では人目を気にするのは仕方ありませんが、夢でさえ人目を避けて逢えないのはなんてさびしいことでしょう。

(引用:『小野小町 コレクション日本歌人選003』大塚英子/笠間書院)

現実には無理でも、夢の中くらい自由に会えると思いきや、会えないというもどかしさが伝わります。

この恋は諦めるしかないのでしょうか……次の歌に期待しましょう。

かぎりなき・・・

小野小町
かぎりなき思ひのまゝに夜も来む夢路をさへに人はとがめじ

【現代語訳】限りない思いのままに、夜も来ましょう。夢の中なら人はとがめないでしょうから。

(引用:『小野小町 コレクション日本歌人選003』大塚英子/笠間書院)

諦めません!だって夢なんだから誰にも邪魔されないはずですから。

なお、「夢路」という言葉を作ったのは、小野小町ではないかと言われています。

夢路には・・・

小野小町
夢路には 足もやすめず 通へども うつゝにひとめ 見しごとはあらず

(引用:『小野小町 コレクション日本歌人選003』大塚英子/笠間書院)

【現代語訳】夢の中では足も休めずに通っていますが、現実に一度逢った夜ほど素晴らしくはありません。

平安時代は通い婚、すなわち男性が女性のもとに通うのが普通でした。

小野小町は女性ですから、自分から、しかも歩いて通うということは考えにくいですね。

もしかしたら、男性目線で詠まれた歌なのかもしれません。

 

きょうのまとめ

今回は、小野小町の夢の和歌6首を紹介しました。

① 『古今集』に収められている小野小町の和歌18首のうち6首は夢の歌である

② 「思ひつつ…」「うたた寝に…」「いとせめて…」は夢の歌三首連作と呼ばれている

③ 夢路という言葉は小野小町が作ったと言われることがある

こちらのサイトでは他にも、小野小町についてわかりやすい記事を書いています。

より理解を深めたい方は、ぜひお読みになってください。

 
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