麒麟がくる第八回「同盟のゆくえ」の感想|ほんとは優しい光秀の真意

 

『麒麟がくる』第八回「同盟のゆくえ」は、ドラマとして激しい展開はなかった。

とはいえ、言いたいことは色々ある。

気になった3つのポイントを中心に見たまま感じたままをお伝えしたい。

 

麒麟がくるのその他の回のあらすじ、感想はこちらをどうぞ。
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織田信長をどう判断すれば?

前回のエピソードでは、「満を持しての織田信長登場」であり、朝日を背負った信長はそれらしい登場だった。

でも、テレビ滞在時間が短すぎて実はちょっぴりがっかりした筆者である。

最後にチョロッとじゃん。

「今回は、信長ちゃんと喋るんだろうな!」

と切れ気味で待ちわびた第八回だ。

確かに前回に比べたら、信長の登場時間は長かったけど。

うーん。

この信長をどう評価すればいい? 

【浜辺で釣った魚を売る信長】

「信長ってサムライなのに、商才のある若者」だなあ、と考えるのがこれ正解? 

違うだろう。

「市に行けばもっと高く売れる」と釣った魚を買いに来た者たちに商売を教えている信長がエライ?

 いや、そうじゃないよね。

【漁師と仲のいい信長】

お金持ちの織田家の息子だというのに、刀を預けて漁に出るほど漁師と仲良しだという、庶民に慕われている感じを汲み取ればいいの?

【嫁になる帰蝶に顔も見せない信長】

早速、織田家臣・平手政秀を困らせて常識から外れた「うつけ者」感を演出?

いずれにしても、これだけの材料ではまだ信長像が見えてこない。

明智光秀(十兵衛)が信長を見て、帰蝶が嫁ぐに相応しい人物なのか考えあぐねたのと同じだ。

今までとイメージが違うとか、好きとか嫌いとか、何とも言えないのが残念。

この判断は次回に持ち越すことになってしまった。

 

チャレンジャー帰蝶の潔さ

帰蝶はチャレンジャーだ。

ついに彼女は織田家への輿入れを決心した。

光秀への気持ちを押し殺しての潔さだった。

これぞマムシ・斎藤道三(利政)の娘だと、筆者の彼女への好感度は高まった。

光秀の清々しさと優しさに敬意を表したい

明智光秀はわりと鈍い男だ。

帰蝶や駒の気持ちには全然うとい。

だから、帰蝶の輿入れを躊躇ちゅうちょしていたのは、彼女に恋心を持っているからなどではない。

あれは、「嫌がっている帰蝶を説得して自分の意見で彼女の運命を変えること」に躊躇していたせいだよ。

イトコとしての情はあるだろうが、恋とは違うんじゃない? 

信長本人を見た後も、心に迷いのあった光秀だったが、優しくも強い母・牧の方に諭され、共鳴し、ついに美濃国のために帰蝶に信長の嫁となってもらうことを決意した。

一度決めればそれを清々すがすがしく実行するのが光秀だ。

ためらえば却って帰蝶を迷わせる。

あえて強く「尾張にお行きなされませ」と言ったのは、帰蝶の気持ちを知った上での光秀のせめてもの優しさだ。

出ました!「是非もない」

一方、光秀に恋しているからこそ、彼の意見なら何でも受け入れる覚悟のある帰蝶も潔かった。

帰蝶の、

是非もなかろう(仕方ないでしょう)」

のセリフは、織田信長の本能寺での最期の時の言葉へのオマージュだ。

反応した織田信長ファン、多かったんじゃないの?

この言葉で帰蝶の運命は決まった。

まるで、本能寺の変で自分の運命を悟った時に「是非もなし」と言った信長のように。

あの時に、帰蝶は決意したはずだ。

信長がどんなうつけ者なのか、尾張に見にいこうとチャレンジすることを決めたのだ。

その証拠に、織田家にやってきた帰蝶に顔もみせない信長だったが、帰蝶は微笑んでいた。

「信長ってなかなかおもしろい男」

と思ったんじゃないだろうか。

それでこそ、我らが期待する通りの帰蝶だ。

 

駒ちゃんの失恋

駒ちゃんもついに光秀に失恋した。

でもね、視聴者としては、彼女の気持ちに決着がついてよかったんじゃないかと思ってるよ。

さすがにそれは違うよ、駒ちゃん

今エピソードの序盤では、帰蝶と駒による恋バナが全開したけど、あまり聞きたい話しではなかった。

ごめんなさい。

やっぱり戦国時代のドラマだと思って見ている筆者には、ちと予想外の内容だ。

帰蝶に対し少々強引に水を向けて光秀への気持ちを確かめようとした駒。

しかし、駒が光秀を巡る恋においてまるで帰蝶とはライバルのように考えていた所には違和感が大アリだった。

気づくのだ、駒ちゃん。光秀なりのせめてもの優しさに

京へ戻る駒は、どうも光秀の気持ちは自分にはないと悟った。

そしてストレートに光秀の気持ちは帰蝶に向いているのではないかと訊ね、光秀から返ってきた言葉は「そうやもしれぬ」である。

彼女は涙したけど、光秀の態度は正しい。

本当は、光秀って、帰蝶にも駒にも情はあっても、恋はなかった気がする。

光秀の気持ちは帰蝶にあるのではないかと問うた駒ちゃんに、彼はあえて同意しただけなのでは? 

それは、彼女の気持ちを宙ぶらりんのままにしないよう思いやる彼なりの優しさだったのだ。

ドラマの最後に、駒が使っていたお手玉一つを持って思いに耽っていた光秀の姿に、彼が感じる後味の悪さと優しさが現われていたことを我々は見ている。

駒はもちろんそんなこと知らないけど。

結局、このエピソードで光秀は帰蝶と駒と両方の女性との関係性を一度精算したんだな。

 

麒麟がくる第八回「同盟のゆくえ」

① 織田信長人物像って、まだ謎

② 肝の据わった帰蝶の今後に期待!

③ 駒ちゃんの失恋に感じる光秀の優しさ

こんなことを思った第八回エピソードだった。

ところで、予告編って何でこんなにいつも期待させられるんだろう。

ちょいと、菊丸。

あんたはやっぱただの農民じゃなかったね。

「命に替えてもお守りいたします」

って、誰に向かって話してんの?

 

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歴史ライター、商業コピーライター 愛媛生まれ大阪育ち。バンコク、ロンドンを経て現在マドリッド在住。日本史オタク。趣味は、日本史の中でまだよく知られていない素敵な人物を発掘すること。路上生活者や移民の観察、空想。よっぱらい師匠の言葉「漫画は文化」を深く信じている。 明石 白(@akashihaku)Twitter https://twitter.com/akashihaku