麒麟がくる第十六回「大きな国」の感想|道三に心奪われる

 

血だらけの手を突き出して、怒りの咆哮を見せた前回の斎藤道三。

第十六回の「大きな国」は、今までの『麒麟がくる』の中で一番の感動回だった。

視聴を終えたその余韻を味わいながら、今回も見たまま感じたままをお伝えしたい。

 

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まず驚いた2つのこと

まずは、今回の大きな感動部分とは直接関わらない部分で2点言っておきたいことがある。

1つ目は、太原雪斎のナレ死。

前回までは雪斎を演じるたくましい身体つきの伊吹吾郎が、東庵先生に「わしをあと2年生かせて欲しい」なんて言ったのを聞きながら「まーたまたぁ!」なんて思っていたのに。

市川海老蔵のナレーションであっけなくその死が公表されたのには少々驚かされた。

2つ目は、あの竹千代が成長していた! 

元服を済ませたらしく、松平元信と名を変えた将来の徳川家康である。

今川家の菩提寺・臨済寺で東庵先生と駒と出会った池田優斗くん演じる元信は、竹千代時代よりもう少しフレンドリーになった様子。

やっぱりまだ狸親父の片鱗はない。

 

やり手帰蝶のあの手この手

数話前から帰蝶がすごいのは知ってたけれど。

・会見での信長を演出し、操って道三を唸らせる

・義理の叔父をリモコン操作して邪魔者を排除

・異母兄の義龍に譲られた家督を、実弟である孫四郎に奪わせるようとプッシュ

・孫四郎が義龍に殺されると、今度は道三を後押しして義龍との戦を目論む

これらを次々実行するかなりの黒幕具合だ。

さすがに光秀には「美濃国への外からの手出しはお控え願いたい」と言われるほどである。

しかし、それも半ば人質として織田信長の嫁になった彼女が生き残るために必死である裏返しなのだろう。

史実かどうかはともかくとして、帰蝶は彼女なりの戦国の世を戦っているんだなあと感じた次第である。

 

斎藤義龍はただの愚直なワルではないという気づき

登場するたびに、ドス黒い雰囲気を画面一杯に充満させる斎藤義龍。

この男を侮っちゃいけない。

美濃の国衆(つまり在地領主)の多くを敵対する父親の道三に奪われることなく配下に従えた自信にあふれ、また領地の洗い直しなどで美濃の国力を明確にしようとか、為政者としての器量もある様子。

以前は父親の道三に、武将としての器量を疑われるほどの頭の良くない頑固者のように見えていたのに。

いつの間にこんな実力を・・・?

 

「大きな国」は跡継ぎを失った道三の夢

今回一番の見どころは、道三と義龍との合戦を止めるために、光秀が道三のいる大桑城おおがじょうへやってきた時のシーンだ。

道三の挙兵の理由

「どうして義龍に家督をゆずったのか」

という光秀の質問に

「そんな大切なことはタダでは話せぬ」

と第15話で答えた道三。

その答えがこのシーンで回収された。

道三は、もう戦で命をかけて自分を守った家臣たちの名前すら思い出せなくなっていた。

そんな自分の老いと限界を悟って家督を譲ったのだ。

そして、義龍に家督を譲ったことは間違いであり、その間違いを正すために息子の義龍と戦うのだという。

でも、間違いったって、誰に譲るのが正解だった? 

例え道三が次男の孫四郎に家督を譲ったとしても争いは避けられなかったよね、きっと。

道三の魅力とは?

ドラマにおける道三の魅力は、何だろう? 

独断的で、ドケチで、荒削りだけれど、彼の言うことにはスジが通っている。

そして、他家の武将である織田信長に大器を感じ素直に認める勇気がある。

父親に「大きな国」を作れと言われ、豊かな国尾張と手を結んでそれを目指しもしたのだ。

道三には失敗を後悔せず、前を向き続ける強さがある。

最終的に光秀は、義龍と道三の間で迷った結果、道三に加勢することを決めた。

それには自分の叔父・光安が道三側についたこともあるが、高政の土岐源氏の血をひく高貴さの主張や、細かい国作り計画よりも、夢のある大きな目標を持つ道三の姿勢に共鳴したからではないか?

「大きな国の夢」を託す意味

おそらく道三は、一介の油売りから身を起こした父親の、卑しい血をエネルギーに変えていた。

誇りに思い、道三が斎藤家を継いだあとも、その父の夢である「大きな国」を作ることをいつも意識していたに違いない。

その彼にして「信長となら、(大きな国を作ることを)そなたやれるやもしれぬ」と光秀に告げることの意味は大きい。

「誰も手出しのできぬ大きな国」づくりは、光秀と光秀を通して信長に託された。

だって道三には、もう自分の夢を継ぐ息子がいないのだから。

壮大な音楽と、暗かった部屋に光が射し始め、「さらばじゃ」と最後は朝日に向かっていくように出陣していく道三の姿の演出が切なかった。

 

明智光安・光秀の決断は愚かだったか?

歴史上の重大事件において、どうしてそんなバカな決断を下したの? 

と後世になって言うことは容易い。

でも、そこには当事者にしかわからない事情や感情もあるのだ。

明智光安って、頼りなくて、ただ人の良いだけの道三の家臣だと思っていた。

しかし、考えてみれば、光安は父親を失った光秀を後見して明智城を守った光秀の心優しき叔父でもある。

領地を守るために、新たな主君・義龍のご機嫌を伺う努力の甲斐なく、隠退の上、領地替えによって守ってきた愛着ある明智荘を出て行くよう決められた。

そんなのつらいに決まってる。

可愛がっていた籠の鳥を自由にしてやる光安のうつろな表情。

武勇で活躍するタイプでは決してない武将の光安が怒り、負け戦を承知の上で「もうひと踊り」する無茶が悲しすぎるじゃん! 

いつも正解を言えず、決断力のない彼に「あらら」と思っていたけれど、道三の元へと馳せ参じる彼の決断を愚かだと言える? 

とても言えないよ。

光秀も迷いに迷った結果ではあるが、叔父の光安の決断と道三との出陣前の会話で、道三側につくことを決意した。

泣かせるのは、藤田伝吾を初めとする光秀の家臣も、誰を敵に回そうともただ主人の決めたままについてきてくれる。

ああ、この時代の武者たちって痛いぐらい潔い。

 

麒麟がくる第十六回「大きな国」

斎藤道三がついに息子の義龍に向けて兵を挙げ、明智光秀も道三に従うことを決めた感動エピソードの第十六回であった。

今回の感想の簡単なまとめ

① 太原雪斎のナレ死と竹千代の成長にびっくり

② 国衆を従えた自信を持ち、計画的な国作りを行う斎藤義龍は決して愚直な武将ではない事実

③ 「大きな国」作りを光秀と信長に託す道三が切なくもカッコイイ

④ 過程を知れば明智光安や光秀の負け戦への出陣の決断を愚かとは言えない

ついにやってくる次の第十七回「長良川の対決」は見たいようで見るのがつらく、やっぱり見たい。

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歴史ライター、商業コピーライター 愛媛生まれ大阪育ち。バンコク、ロンドンを経て現在マドリッド在住。日本史オタク。趣味は、日本史の中でまだよく知られていない素敵な人物を発掘すること。路上生活者や移民の観察、空想。よっぱらい師匠の言葉「漫画は文化」を深く信じている。 明石 白(@akashihaku)Twitter https://twitter.com/akashihaku