最澄の名言「一隅を照らす」の意味とは?『山家学生式』の概要とともに説明

 

日本天台宗の開祖・最澄さいちょうの有名な言葉に、こんなものがあります。

一隅いちぐうを照らす。これ則ち国宝なり。」

何だかいいことを言っている雰囲気はありますが……いまいち意味がわかりません。

今回はこの言葉の意味と、それが書かれた書物について簡単に紹介していきます。

 

「一隅を照らす」の意味

最澄さいちょう

最澄像(国宝)、平安時代(11世紀)、一乗寺蔵

「一隅を照らす」という言葉は、最澄が書いた山家学生式さんげがくしょうしきという仏教書に登場します。

それでは、少し中身を見てみましょう。

ちょっと難しい言葉も出てくるので、以下を参考にしてみてください。

  • 道心:仏を信じる心
  • 径寸:金銀財宝
  • 一隅:ほんの片隅

 

国の宝とは何物ぞ、宝とは道心どうしんなり。

道心ある人を名けて国宝と為す。

故に古人の曰く、径寸けいすん十枚、是れ国宝にあらず。

一隅を照らす、此れ則ち国宝なりと

(引用:『別冊太陽 天台宗開宗千二百年記念 比叡山ー日本仏教の母山ー』/平凡社/「最澄の生涯と教え 十二年籠山行」)

 

つまり、国の宝は仏を信じる心。

金銀財宝じゃないよ。

みんなが気が付かないような片隅で社会を照らしているような人が、国の宝なんだよ。

という意味になりますね。

 

たとえ注目されなくても、自分が置かれた場所でベストを尽くすことが大切。

そう思うと、なんだか頑張れそうな気がしてきました。

 

『山家学生式』とは?

それでは、その言葉が書かれた『山家学生式』とは何なのでしょう。

簡単に言うと、僧の修行規則が書かれたものです。

例えば、12年間比叡山に住山するという「十二年籠山行」などが定められています。

 

日本天台宗を開いた最澄は、比叡山に大乗仏教の戒壇を設立しようとしていました(※)。

しかし旧仏教勢力の反対を受け、なかなか裁可を得られませんでした。

そこで戒壇設立の目的僧の教育方針を明らかにするため、朝廷に提出したのが『山家学生式』です。

※東大寺の戒律は小乗戒(限られた者しか救われない)であるとして、大乗戒(すべての者を救うことができる)を授ける戒壇をつくろうとしていました。

 

全部で3回提出され、それらをまとめて『山家学生式』と呼んでいます。

  1. 『天台法華宗年分学生式』(六条式)
  2. 『勧奨天台宗年分学生式』(八条式)
  3. 『天台法華宗年分度者回小向大式』(四条式)

 

悲願の戒壇設立は、最澄の死から7日後に認められることになります。

そして『山家学生式』は今もなお、比叡山で修行するお坊さんたちに受け継がれているのです。

 

きょうのまとめ

今回は最澄が著した『山家学生式』について、簡単にご紹介しました。

① 「一隅を照らす……」は、片隅で社会を照らしている人が国の宝という意味である

② 『山家学生式』とは、大乗仏教の戒壇を設立するために書かれた僧の修行規則

③ 『山家学生式』の教えは今も受け継がれている

こちらのサイトでは他にも、最澄にまつわる記事をわかりやすく書いています。

より理解を深めたい方は、ぜひお読みになってくださいね。

 
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