かつての宇宙観 ~クラウディオス・プトレマイオスの「天動説」~

 

時は2世紀のエジプト、アレキサンドリア。

そこに、古代ギリシア時代から存在していた「天動説」と言う、ひとつの宇宙観を決定づけた学者がいました。

彼の名前はクラウディオス・プトレマイオス

今回は、彼がまとめたこの天動説について、その内容やこの説を巡る事柄を一緒に見ていきましょう。

 

宇宙観を巡る2つの説

クラウディオス・プトレマイオス

1584年にパリで出版されたVrais portraits et vies des hommes illustrésに描かれたプトレマイオスの想像画。アンドレ・テヴェ(フランス語版)作。
出典:Wikipedia

ここからは早速、クラウディオス・プトレマイオスの天動説や、それを含めた現代まで続く人々の宇宙観について簡単にご紹介していきます。

現在の定説


21世紀を生きる私たちにとって、地球が太陽の周りをまわっているということは、当然のように学校の授業で習うもののひとつです。

これは「地動説」として、16世紀以降の学者たちにより現代まで続く常識として決定づけられました。

太陽を中心にして、その周りにある天体のひとつに地球がある、というわけです。

しかしそれ以前の時代では、約1500年に渡って地球こそが宇宙の中心にあると考えられてきました。

地球の周りを、太陽や月などを含めた他の天体が回っている。

これこそがクラウディオス・プトレマイオスのまとめた「天動説」であり、不動の常識として広くヨーロッパやイスラム世界に信じられてきたのです。

『アルマゲスト』

プトレマイオスの名を天動説と共に世に広めたのは、『アルマゲスト』と言う彼の著書でした。

全13巻からなる本書は、天文学にまつわる専門書であり、その中に登場するのが天動説です。

プトレマイオスはまず、第1巻に自身の考える宇宙観について述べています。

それによれば、「地球は宇宙の中心にあり、球状で不動のもの」なのです。

そして13巻に渡り、太陽や月など他の天体たちの動きについて、幾何学などの計算によって導き出した様子を書き記しています。

惑星の順行や逆行など、見え方に関してもこの書では詳しく説明がなされているのです。

またさらにプトレマイオスはその中で、「中心にあり不動の地球」を取り巻く他の天体の位置関係も示しています。

彼はそれを地球から近い順に並べていて、それを以下で見てみると

・月
・水星
・金星
・太陽
・火星
・木星
・土星
・恒星

となります。

この順番もその後多少の変更などがあったものの、天文学の分野で長く定説として使用されていました。

古代からの膨大な資料を基にまとめられた本書は、それまでの天文学を集大成した天文学大全として敬意を払われ、その後のイスラム世界の天文学にも継承されていくことになります。

「天動説」vs「地動説」


クラウディオス・プトレマイオスによって「天動説」が広く宇宙を巡る常識となった一方、忘れ去られてしまったのが「地動説」でした。

実はこの2つの説はプトレマイオスが活躍する以前、古代ギリシアの時代には既に両者とも存在しているものでした。

しかし、プトレマイオスがかつての資料や自身の研究に基づいてまとめた天動説が強く説得力を持ったことで、地動説は長らく端に追いやられてしまうことになったのです。

さらにこの天動説は、彼の意図しないところでキリスト教やイスラム教などの、神を中心とした世界観の宗教的な教えに結び付けられて広まったことも、この説が世界の広い地域で常識となることに大きく関係していました。

それに対し、声を大にして疑問を唱える人物が現れたのは、16世紀のルネサンス時代末期以降。

この時代になると、徐々に神中心の宗教社会が揺らぎを見せ、人間を中心にした考えが主流になっていきます。

さらに科学の分野が発展を見せ始め、観察や研究に基づく科学的な視点から真実を追求するという時代へと突入していました。

その時代において、天動説に異議を申し立てた代表的な人物2人が

・コペルニクス
・ガリレオ

です。

さらに、彼らに続いて

・ケプラー
・ニュートン

たち近代の科学者によって、1500年続いた天動説は完全に否定され、現代まで続く地動説が証明されたのです。

 

きょうのまとめ

今回は、クラウディオス・プトレマイオスの「天動説」について、それにまつわる事柄を一緒に見てきました。

いかがでしたでしょうか。

何か新たな学びは得られましたか。

最後に、今回ご紹介した内容を簡単にまとめると

① クラウディオス・プトレマイオスの「天動説」は、著書『アルマゲスト』によって1500年近く不動の常識となった。

② 彼はあくまで「天動説」をまとめた人物であり、この説自体は古代ギリシア時代に既に存在していた。

③ 「天動説」はルネサンス時代に否定され、近代以降は「地動説」が新たな常識となり現代まで続いている。

私たちが普段、当たり前だと思っている事柄すべてに実はそれを決定づけた根拠と唱えた人物がいる。

何事にも始まりがあるということを、今回見てきたプトレマイオスの天動説からは感じることができるのではないでしょうか。

そしてまた、その当たり前が実際には違う可能性があるということも、私たちに気づかせてくれているように思われます。

 
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