あらかじめお断りしておきますが、
今回の記事にはいささかグロテスクな部分があります。
ただ、こういった残酷さもまた歴史のナマの姿のひとつであることにちがいありません。
なので、ここではあくまで史実に忠実なままに伝えさせていただきます。
さて、あまりにもの多くの庶民が食うものもあえぬ非常なる困窮のただ中において、
なおもってどこまでも腐乱しきった大坂奉行所や地元の豪商らに正義の鉄槌を下すべく立ち上がった
大塩平八郎。
乱は失敗に終わるのですが、その後の物語です。
さて、あの人もこの人もみんなどうなっていったのでしょうか。
そして、時代は。
そもそも塩漬けってなに?
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大塩父子、壮烈な最期
味方からあらかじめ密告されて、
大坂東町奉行、跡部良弼の暗殺計画は白紙に。
なおも「救民」の旗を掲げて立ち上がるも、多勢に無勢で半日で鎮圧。
豪商らの米蔵から奪って庶民たちに分け与えることもできず、
かえって火が燃え広がり、市民にいたずらに多大な犠牲をはらってしまいました。
最後の頼みの綱、江戸幕府への建議書(水野忠邦ら多くの幕閣らの不正を暴き立てた意見書)は、そこまで届くこともなく不逞な飛脚によって中身をあらためられ、捨てさられます。
さて、大塩平八郎は乱に失敗すると、市民に化けて遁走し、養子格之助ともどもある商家にかくまわれます。
この時、市民らはあの乱の火災で多くが家を失ったり、焼け死んだにもかかわらず、
「いくら懸賞金がかかっても、大塩を差し出したりするものか!」
と異様な空気だったようです。
しかし、潜伏後1か月ほどして、その商家の女中が気付きます。
「この余分に多いお食事はだれのためのものだろう?」
女中は通報し、奉行所が押しかけてくると、
大塩父子は自分たちの隠れ家に火を放ち、火薬を打って爆死をとげました。
大塩はまだ生きている!?乱後の騒動
しかし、ことがそれで収まるわけではありません。
大塩らの死体は黒焦げでもはやだれなのか見分けもつきません。
ですので。
いつだれが言い出したのか。
「大塩は生きている」
「船に乗って清に逃げた」
「シベリアに逃げた」
この年、アメリカの商船モリソン号が日本の近海深くまでやってくるのですが、
という噂までがまことしやかに流れる始末。
各地では、祭で大塩らのかっこうをマネする者が現れたり、
大塩が乱の決起にまいた”檄文”を手習いにする寺小屋が現れたり、
「大塩」や「大塩の郎党」を名乗って、全国で一揆や乱が多発します。
そこで幕府は仕方なく、塩漬けにしていた大塩らの遺骸を公然で磔にしてしまいました。
しかし、その大半がもうだれの遺骸なのかわかりません。
こうして、火消しの効果もほぼなく、やがて、幕末へと時代は下ってゆくのです。
妖怪と魔王
この乱を足がかりにして出世した人物がおります。
幕府の役人鳥居耀蔵です。
鳥居は大塩のスキャンダルを次々にでっち上げては世にまき散らします。
これが幕府の目に留まり、後には蛮社の獄(1839年)で開明派に先を越される歯がゆさのあまり、またしてもわけのわからない罪をでっちあげてはなすりつけ
国にとっての貴重な逸材をいっぱい失うのですが、
かわりに水野忠邦という幕閣と馬が合い(水野は開明派に多くふくまれる低い身分の者が成りあがるのを嫌ったとよくいわれます)、引き立てられます。
そうです。
この水野こそあの跡部の実のお兄さん。
そして、水野のその後の”大活躍ぶり”についてはまた別の記事でたっぷりと……。
跡部良弼その後
さて、気になるのはあの跡部がどうなったかですよね。
傲岸不遜で、ビックリするぐらい、困窮する民情を無視します。
何かとあればお上ご一門そして、ご本人の出世もあったでしょうか。
このお方は幸いといいますか、「妖怪」鳥居耀蔵とあまり馬が合わなかったらしく、水野や鳥居の失脚に連座せずにすみます。
その後も栄進を続け、江戸の南北両奉行や講武所(幕末に幕府が特別設置した洋式軍隊。この人がこの役職に就いちゃうんですから)総裁などを歴任。
すでに大政奉還を終え、鳥羽伏見でも負けた直後、若年寄にまで上りますが、なぜかたった7日で免職されました。
ちょうど江戸無血開城寸前のことです。
この年新たな明治の代の到来を見届け、満69才で亡くなりました。
きょうのまとめ
① 大塩平八郎父子は乱失敗後、潜伏先に奉行所が押し入ってくるところで爆死をとげた
② 大塩平八郎らの死後も、その生存説が全国でささやかれ、いろんな騒動が起こった
③ 乱にかかわった鳥居耀蔵も水野忠邦も跡部良弼も、その後彼らなりの人生を送った
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