紀貫之の代表作を現代語訳とともに紹介

 

『古今和歌集』の撰者といえば、紀貫之きのつらゆきが有名ですね。

紀貫之らは他の人の歌だけでなく、自分たちの歌も多く選んでいました。

今回は『古今和歌集』に残された、紀貫之の代表的な歌を紹介します。

 

紀貫之の和歌4選

紀貫之、きのつらゆき

紀貫之
出典:Wikipedia

紀貫之の歌で有名と思われるものを、4つほど選んでみました。

それでは見ていきましょう。

「桜花…」

まずは想像すると、何とも美しいこちらの歌です。

桜花 散りぬる風の なごりには 水なき空に 波ぞたちける

(引用:『紀貫之 コレクション日本歌人選 005』田中登/笠間書院)

【現代語訳】桜の花を吹き散らした風の名残には、水がないはずの空に波が立っているようだなぁ。

 

一瞬、ん?となりそうなこの歌。

まずは風に舞う、桜吹雪を想像してみてください。

その様子を空に波が立っている、と表現しているのです。

空を海に、桜吹雪を波にたとえているということですね。

 

非常に美しい映像が、頭に浮かびませんか?

このようにあるものを別のものに言い換えることを、「見立ての技法」といいます。

この技法は、古今和歌集の時代にさかんに行われました。

「袖ひちて…」

さて次は、四季の歌を紹介します。

袖ひちて むすびし水の 凍れるを 春立つ今日の 風や解くらむ

(引用:『紀貫之 コレクション日本歌人選 005』田中登/笠間書院)

【現代語訳】夏の日に袖を濡らしてすくった水が、冬は凍っていたのを、立春の今日の風が溶かしているのだろうか。

 

「ひちて」の「ひつ」は濡れる、「むすびし」の「むすぶ」はすくい上げるという意味です。

また「春立つ」とは、立春のことです。

いつか暑い夏にすくった水のことを回想し、冬を経て、春が来た今頃はきっと溶けているのだろう、

と想像して読んだ歌ということですね。

 

この歌のすごいところは、三十一文字みそひともじという限られた字数の中に、3つも季節を入れていること。

直接的な表現は春しかありませんが、巧みに盛り込まれています。

「人はいさ…」

次は百人一首にも収められて収められている、有名な歌です。

人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける

(引用:『紀貫之 コレクション日本歌人選 005』田中登/笠間書院)

【現代語訳】人の心はさあ、どうだかわかりません。馴染みのこの地では、梅の花が昔と変わらず良い香りで咲き誇っています。

こちらは別建てで記事を書いていますので、ぜひお読みになってください。

関連記事 >>>> 「紀貫之の百人一首の歌には続きがあった?意味と背景を紹介」

 

「吉野河…」

最後は恋の歌を紹介します。

吉野河 岩波高く ゆく水の はやくぞ人を 思ひそめてし

(引用:『紀貫之 コレクション日本歌人選 005』田中登/笠間書院)

【現代語訳】岩を打つ波が高く流れていく吉野川の水のように、あの人に思いを寄せるようになってしまった。

 

奈良県を流れる吉野川は、流れが速い川として知られています。

流れる水が岩にぶつかり、高い波が上がるのを想像してみてください。

その激しさを、恋心にたとえているのです。

誰かを想う気持ちを景色にたとえることで、その激しさが伝わって来る歌です。

 

以上、紀貫之の歌について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。

紀貫之の歌は、古今和歌集だけでも102首あります。

これを機に、お気に入りの歌を見つけてみてください。

 

きょうのまとめ

今回は、紀貫之の代表作を4つほど紹介しました。

① 『古今和歌集』に収められた紀貫之の歌は102首もある

② 「桜花…」の歌には見立ての技法が使われている

③ 「袖ひちて…」の歌には3つの季節が盛り込まれている

④ 「人はいさ…」は小倉百人一首にも収められている

⑤ 「吉野河…」は恋心を激しい吉野川の流れにたとえた

こちらのサイトでは他にも、紀貫之にまつわる記事をわかりやすく書いています。

より理解を深めたい方は、ぜひお読みになってください。

紀貫之に関する【完全版まとめ】記事はこちらをどうぞ。
関連記事 >>>> 「紀貫之とはどんな人物?簡単に説明【完全版まとめ】」

 

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