『古今和歌集』の撰者といえば、紀貫之が有名ですね。
紀貫之らは他の人の歌だけでなく、自分たちの歌も多く選んでいました。
今回は『古今和歌集』に残された、紀貫之の代表的な歌を紹介します。
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紀貫之の和歌4選
紀貫之の歌で有名と思われるものを、4つほど選んでみました。
それでは見ていきましょう。
「桜花…」
まずは想像すると、何とも美しいこちらの歌です。
桜花 散りぬる風の なごりには 水なき空に 波ぞたちける
(引用:『紀貫之 コレクション日本歌人選 005』田中登/笠間書院)
【現代語訳】桜の花を吹き散らした風の名残には、水がないはずの空に波が立っているようだなぁ。
一瞬、ん?となりそうなこの歌。
まずは風に舞う、桜吹雪を想像してみてください。
その様子を空に波が立っている、と表現しているのです。
空を海に、桜吹雪を波にたとえているということですね。
非常に美しい映像が、頭に浮かびませんか?
このようにあるものを別のものに言い換えることを、「見立ての技法」といいます。
この技法は、古今和歌集の時代にさかんに行われました。
「袖ひちて…」
さて次は、四季の歌を紹介します。
袖ひちて むすびし水の 凍れるを 春立つ今日の 風や解くらむ
(引用:『紀貫之 コレクション日本歌人選 005』田中登/笠間書院)
【現代語訳】夏の日に袖を濡らしてすくった水が、冬は凍っていたのを、立春の今日の風が溶かしているのだろうか。
「ひちて」の「ひつ」は濡れる、「むすびし」の「むすぶ」はすくい上げるという意味です。
また「春立つ」とは、立春のことです。
いつか暑い夏にすくった水のことを回想し、冬を経て、春が来た今頃はきっと溶けているのだろう、
と想像して読んだ歌ということですね。
この歌のすごいところは、三十一文字という限られた字数の中に、3つも季節を入れていること。
直接的な表現は春しかありませんが、巧みに盛り込まれています。
「人はいさ…」
次は百人一首にも収められて収められている、有名な歌です。
人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける
(引用:『紀貫之 コレクション日本歌人選 005』田中登/笠間書院)
【現代語訳】人の心はさあ、どうだかわかりません。馴染みのこの地では、梅の花が昔と変わらず良い香りで咲き誇っています。
こちらは別建てで記事を書いていますので、ぜひお読みになってください。
関連記事 >>>> 「紀貫之の百人一首の歌には続きがあった?意味と背景を紹介」
「吉野河…」
最後は恋の歌を紹介します。
吉野河 岩波高く ゆく水の はやくぞ人を 思ひそめてし
(引用:『紀貫之 コレクション日本歌人選 005』田中登/笠間書院)
【現代語訳】岩を打つ波が高く流れていく吉野川の水のように、あの人に思いを寄せるようになってしまった。
奈良県を流れる吉野川は、流れが速い川として知られています。
流れる水が岩にぶつかり、高い波が上がるのを想像してみてください。
その激しさを、恋心にたとえているのです。
誰かを想う気持ちを景色にたとえることで、その激しさが伝わって来る歌です。
以上、紀貫之の歌について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
紀貫之の歌は、古今和歌集だけでも102首あります。
これを機に、お気に入りの歌を見つけてみてください。
きょうのまとめ
今回は、紀貫之の代表作を4つほど紹介しました。
② 「桜花…」の歌には見立ての技法が使われている
③ 「袖ひちて…」の歌には3つの季節が盛り込まれている
④ 「人はいさ…」は小倉百人一首にも収められている
⑤ 「吉野河…」は恋心を激しい吉野川の流れにたとえた
こちらのサイトでは他にも、紀貫之にまつわる記事をわかりやすく書いています。
より理解を深めたい方は、ぜひお読みになってください。
紀貫之に関する【完全版まとめ】記事はこちらをどうぞ。
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