カエサルが側近のブルータスに暗殺されたのはなぜ?二人を取り巻く因縁とは

カエサル

 

紀元前1世紀、史上初の終身独裁官として古代ローマをまとめ上げていた

ガイウス・ユリウス・カエサル

カエサルの言葉でも特に有名なのが、彼が死に際にいった「ブルータス、お前もか」というセリフです。

共和制を支持していた元老院げんろういん議員たちは、カエサル一人が権力を持つことを良しとせず、暗殺を企てました。

その中の一人に、カエサルが側近として信用していたマルクス・ユニウス・ブルータスも入っていたのです。

カエサルはブルータスが幼いころから父親のように接し、ブルータスが一度反乱を起こした際もそれを許して側近にしています。

この背景を考えると「ブルータス、お前もか」が失意に満ちた言葉だということがわかりますね。

ではなぜ、ブルータスはそこまでの厚意を受けながらも、カエサルの暗殺に加担したのでしょうか?

カエサルとブルータスの間に一体何があったのか、詳しく見ていきましょう。

 

ブルータスとカエサルの関係は?

カエサルはブルータスの父親代わりだった

カエサルがブルータスを可愛がる理由は、ブルータスの母、セルウィリアと愛人関係にあったからです。

ブルータスは幼くして父親を亡くしており、未亡人の母、セルウィリアと愛人関係になったカエサルを父親代わりのようにして育ちました。

ちなみにこのときブルータスの父親を殺したのは、後にカエサルと共に三頭政治を行うグナエウス・ポンペイウスです。

カエサルはブルータスが自分と対立しても許した

政治の道に足を踏み入れたブルータスは、個人を都市の長とする独裁政治を良しとせず、市民が政治の決定権を持つ共和制を支持していました。

それに対して当時のローマは

・カエサル、マルクス

・リキニウス・クラッスス、

・ポンペイウス(ブルータスの父を殺した)

の三人を長とする三頭政治が行われていたのです。

共和制を支持する元老院議員(市民の中から貴族を中心に集められた議員)たちは三頭政治に反対しており、ブルータスもこれを得て元老院議員へと加わります。

あるとき三人の長のうち、クラッススが遠征に失敗して死亡し、カエサルがガリアへの遠征でローマを留守にしていたタイミングがありました。

このときに三頭政治の崩壊を目論んだ元老院議員たちは、残っていたポンペイウスを自分たちの味方へと引き込み、反乱を起こすのです。

これが紀元前49年に起こったローマ内戦。

このときもカエサルは、元老院議員側についたブルータスに対して危害を加えないよう、部下に指示していました。

結果内戦はカエサルの勝利に終わるのですが、反乱を起こしたブルータスのことは許し、このときに自分の側近の地位まで与えているのです。

 

ブルータスが共和主義にこだわった理由は?

カエサルから多大な恩義を受けていたブルータス。

どうして彼はその恩義を差し置いても、共和主義にこだわっていたのでしょうか。

叔父小カトーの影響

一つは叔父の小カトーの影響です。

ブルータスの政治のキャリアは、キプロス島の知事をしていた小カトーの補佐官から始まっています。

つまり小カトーはブルータスに政治のイロハを教え込んだ人物なのです。

小カトーは共和制を強く支持しており、このころにブルータスもその思想を植え付けられます。

ローマ内戦後、小カトーは自害。

彼は独裁政治に屈するぐらいなら死を選ぶぐらい、共和制に対する支持が強かったのです。

そしてローマ内戦の後、ブルータスは小カトーの娘であるポルキアと結婚しています。

ポルキアはカエサルに対して、小カトーが死んだことの恨みもあり、また父譲りで共和主義の思想も強く持っていました。

政治の師匠である小カトー、そして妻ポルキアの影響が、ブルータスの反カエサルの想いを強めていたのです。

祖先がローマに共和制をもたらした人物だった

ブルータスが共和制にこだわった理由はもう一つあります。

それは自身の祖先がローマに初めて共和制をもたらした功績を持つ、ルキウス・ユニウス・ブルータスだったということ。

これを得てガイウス・カッシウス・ロンギヌスによって、ブルータスはカエサルの側近であるにも関わらず、暗殺のリーダーに仕立て上げられます。

ロンギヌスは、ブルータスがその血筋を持っていることが、リーダーとしてふさわしいと睨んだわけですね。

また、祖先がローマに共和制をもたらした人物だということが、ブルータスに誇りを抱かせ、共和主義の思想をさらに強めていたのです。

そして紀元前44年3月15日、元老院議場にて、ブルータス率いる元老院議員たちによってカエサルは暗殺されてしまいます。

 

暗殺に成功したブルータスはどうなったのか

以上のようにブルータスをリーダーとして、元老院議員たちはカエサルの暗殺に成功するわけですが、そのあと彼らはどうなったのでしょうか。

市民から反感を買って逃亡

カエサルはローマ内戦のあと、終身独裁官の地位を手に入れてローマの長として君臨していました。

しかし独裁とはいっても、彼は自分一人が私腹を肥やすようなことはしなかったのです。

カエサルは利益を得れば市民にも平等に分け与える気構えを持っていました。

さらにガリア征服の功績などもあり、市民からの支持は厚かったのです。

それに対し、ブルータス率いる元老院議員たちは、カエサルをだまし討ちにしました。

カエサルは自分に反感を持つ元老院議員さえも信用し、周囲が引き留める中、暗殺が行われた議場に護衛もつけずに現れたのです。

カエサルの潔さを前にして、元老院議員たちは卑劣極まりないとして、市民から反感を買うことになります。

これを経て、ブルータスを含む暗殺の首謀者たちはローマから東方へ逃げることを余儀なくされました。

カエサルの後継者たちが揉めている隙をつこうとするも失敗

ブルータスも諦めが悪いといいますか…

市民の反感を買って逃亡したあとも、独裁政治の体制を崩すチャンスをずっと伺っていたのです。

そしてそのチャンスは訪れました。

カエサルの遺言で後継者となったオクタウィアヌスと、カエサルの元腹心であったアントニウスが、権力を巡って仲間割れを始めたのです。

「待ってました!」といわんばかりに、ブルータスはその混乱に乗じてローマに攻め入ろうとします。

しかしブルータスが攻めてくることがわかると、オクタウィアヌスとアントニウスは一時休戦。

ひとまず手を結ぶことにします。

結果ブルータスはまたしても敗北。

結局最後は捕虜にされることを嫌って、自害することになるのでした。

 

きょうのまとめ

カエサルから多大な厚意を受けながらも、それを裏切ったブルータス。

二人を取り巻くしがらみを簡単にまとめると、以下のような感じでしょうか。

① 親子のような関係で、個人的な恨みはない

② 生まれた血筋や取り巻く環境もあり、ブルータスに共和主義の思想が染み付いていた

③ カエサルは市民から支持されていたので、暗殺したブルータスは結局追い出されることになった

二人が行き違ったのは思想の違いからでした。

その行き違いからカエサルだけではなく、ブルータスまでもが悲しい結末を辿ってしまうのです。

この事実は知ると「ブルータス、お前もか」という格言がより一層悲しく聞こえて来ますね…。

 
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