あからさまに傾きつつある幕府統治。
そんなとても苦しい国政運営を実質トップとして任されたのが
阿部正弘。
そんな
“瓢箪鯰(ヒョウタンナマズ。鯰を瓢箪でおさえこむようにとらえどころがないたとえ)”
と呼ばれた調整型リーダーの真骨頂が試される時がついにやって来ました!
太平の眠りを覚ます
黒船来航から日米和親条約の締結まで。
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黒船来航をあらかじめ察知
阿部正弘は黒船がやって来るよりも一年も前からそれが来ることを察知していたようです。
1844年オランダ国王による日本への開国要求
1846年アメリカビッドル艦隊浦賀に来航
年々深刻を増す外圧。
正弘はオランダを通じてその情報収集にいそしんでおりました。
艦隊の規模や性能もおおよそ把握していたようです。
そして、1853年下田沖に現れた蒸気船は4隻。
アメリカのねらい
アメリカのねらいは主に2つです。
1つが捕鯨寄港地の確保です。
当時欧米において、捕鯨は一大産業です。
特に鯨油。
そして、ねらいのもう1つが、アヘン戦争で負け、各列強に蚕食されつつある大国中国です。
アメリカはその中継および燃料食料などの補給地として日本にロックオンしてしまったのです。
アメリカ的黒船外交
ただでさえ目立つアメリカの黒船艦隊。
しかも、唯一の開港地である長崎どころか徳川首府へのこんな江戸湾表に。
正弘はすでにとてもまともに抗戦のできるような相手ではないことを知りぬいておりました。
そこにいっぱい搭載された大砲でドンドンやられると江戸は火の海です。
しかも何を勝手に!
浦賀から数隻の測量船がフリゲート艦ミシシッピに護衛され、江戸へと北上しているではないですか!
ちなみにこの時、黒船のペリー提督はアメリカ大統領から自衛以外の戦闘行為を禁止されておりました。
このギリギリ交渉術は今のどこかの国の大統領とどちらが上手でしょうか?
結局、久里浜で国書の受け渡しだけを済ませ、
と、念を押してアメリカ艦隊は海の彼方へと帰っていきました。
かぎられた時間の中で
さあ、エライことになりました。
ここで阿部正弘
まず早速、オランダから蒸気船を買い入れることを決定いたします。
高くつきますが、もはや背に腹は代えられないといったところでしょうか。
そしてさらに思い切った策に打って出ます。
なんと親藩・外様大名や朝廷から広く意見を求めたんです。
それまで、幕政は譜代大名などのごく限られた人たちで合議決定されておりました。
もうこれは徳川幕府を開いた家康様の言いつけにもそむくことです。
あの”島津”斉彬をも重用するのですぞ!
それでいてちょうど将軍が亡くなった後で、
「代替わりで今大変だから」
とオランダを介して、アメリカ側にさりげない時間稼ぎも忘れませんでした。
まあでも、またやってきたのはあれからたった半年なのですが(一応、大晦日をまたいではおりますが)。
調印”日米和親条約”
結局、あれやこれや意見を募ったのですがまとまらず、
条約に調印することとなってしまったのですが、
後に結ばれた”日米修好通商条約”に比べると不平等条項はまだだいぶ手ぬるいです。
もちろん開国しなければならないのは断腸だったでしょうが。
気になるのは「片務的最恵国待遇」ぐらい?
この最恵国待遇とはたとえばA国がB国とその条約を結んでいたとします。
すると、A国はB国に対するリンゴの関税は10%。
でも、A国のたくさんある公益相手国の中で関税が一番安いのがC国の3%。
すると、B国は
「うちは10%なのに、じゃあ3%に負けなくちゃね。絶対」
ということです。
また、“片務的”ということはアメリカだけOKで、日本はダメ、ということです。
ちなみに今回の条約締結において幕府の悲願だった“通商拒否”はきっちりとつらぬきとおすことができました。
きょうのまとめ
この危機をきっかけに、阿部正弘はいよいよ国内の改革へと邁進してゆきます。
身分を問わない積極的な人材登用洋式軍隊の整備など。
しかし一方で、国家の屈辱、幕府の弱腰とみなした論調が一部で高まり、
さらには外様大名から長州、薩摩といった後に幕府をおびやかす勢力の台頭を許すことにもつながってしまいます。
① 幕府は黒船来航の一年前にはその兆候を察知していた
② 阿部正弘は黒船来航の国難にあってそれまで禁止されていた親藩・外様大名や朝廷からも広く意見を募った
③ 幕府は結局”日米和親条約”を飲むことになるが、ある程度穏便なもので済んだ
あらら、正弘さん。
これは体調やらいろいろと心配ですね……。
さらに、阿部正弘の年表を含む【完全版まとめ】記事はこちら。
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