小林一茶は江戸時代の著名な俳人のひとりですが、なかでもかなり異質と呼べる存在です。
たとえば三大俳人のひとり、与謝蕪村なら「美しい景色が浮かんでくる」というのがよくいわれる評価ですが、一茶はそういった俳人とは一線を画し、「とにかくユニーク」という言葉が似合います。
要はほかの俳人とは目の付け所が違うのです。
そしてそれは決して恵まれていたとはいえない、一茶の暮らしぶりからくるものでしょう。
今回はそんな小林一茶の名言から、その人物像に迫っていきましょう。
辿れば辿るほど、なんだかおもしろくて憎めない…そんな一茶の人柄が浮かび上がってきますよ!
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小林一茶の名言
金がないから何もできないという人間は
金がないから何もできないという人間は、金があっても何もできない人間である。
継母との確執から15歳で実家を追いやられ、江戸へと奉公へ出た一茶の生活は不安定でした。
当初はいくつも職を転々としながら、いわゆる日雇い労働者のような暮らし方をしていたとのこと。
そんななかで自身の俳人の才能を見つけ出し、その道で生計を立てられるようになった一茶らしい名言ですね。
梅が香や
一茶の俳句には、以下のようにその貧乏っぷりを詠んだ句もちらほらあります。
「梅の香りが漂う季節がやってきて、お客さんでも呼びたい気分だけど、うちじゃ欠けた茶碗しか出せないしなあ…」といった具合でしょうか。
ちょっぴりクスっと笑ってしまうような自虐が、一茶独特の親近感を醸し出していますね。
やせ蛙負けるな一茶これにあり
お金をもたずに長年の修行の旅をやってのけた一茶。
一茶の行動力を物語る逸話といえば、27歳のころの東北地方の旅や、30歳から約6年にわたっての関西・四国・九州を巡る修行の旅です。
当時の俳人の修行というのはお金をもたず、俳句の腕を披露してその日の宿を得るというもの。
普通はお金もなしに6年間も旅暮らしなんてできませんよね…。
しかしこれこそ一茶のいう「金がなくてもやるヤツはやる」ということなのでしょう。
そんな「どんなに貧乏だってやればできる」という気持ちが表れたこんな句もあります。
やせた蛙に向かって「大丈夫、俺がついてるぞ」と励ます一茶。
そんな貧相な蛙と、俳句以外は何もなかった自分とをどこか重ね合わせていたのかもしれません。
他の富めるをうらやまず
他の富めるをうらやまず、身の貧しきを嘆かず、ただ慎むは貪欲、恐るべきは奢り。
一茶は晩年こそ地元の柏原にて安定した暮らしを手に入れましたが、それも50歳を過ぎてからのこと。
人生のほとんどは貧しく、その日暮らしで過ごしていたと考えられます。
しかし一茶はそんな貧しさのなかに楽しみを見出そうとしていたのでしょう。
どんな環境でも気の持ちようだということを物語る名言です。
づぶ濡れの大名を見る炬燵かな
一茶がどんな風に貧乏暮らしを楽しんでいたかというと、こんな句が残されています。
「大名やその周りの武士のような偉い立場になれば、雨のなかでも列をなして歩かなければいけないときがある。その点偉くない自分はコタツのなかでぬくぬくしていられるから、気楽なものだ…」とでも言っているような句です。
会社で変に偉くなるより、給料はそのままでも平社員でいるほうが気楽だ、という感覚にどこか似ていますね。
もっとも一茶を現代にたとえると平社員というより、好きなことができれば別に貧乏でもいいという夢追い人。
売れないミュージシャンのような感じでしょうか。
やれ打つな蝿が手をすり足をする
弱い立場を経験したからこそ、弱者の気持ちがわかる。
一茶の俳句には、お金持ちならとても目をつけないだろうな…と思わされるこんな句もあります。
蝿が手足をスリスリするあの動きは、本当は壁などに止まるときに手足が滑らないようにするためなのですが、これを一茶は「命乞い」をしているとたとえました。
「殺さないで~」と手を合わせてお願いしているのだから、打ってはいけないと言っているのです。
これぞ一茶調といいますか、格式の高い当時の俳人にはなかなか見られないウィットに富んだ表現ですね。
このほかにも一茶の句には小さな虫や動物をいつくしむような、穏やかなものがたくさんあります。
一茶自身が決して立場の強い人物ではなかったことが、か弱い小動物たちに意識を向けさせたのかもしれません。
弱者の苦しみを知っているから、弱者に優しくなれる…といったところでしょうか。
きょうのまとめ
小林一茶は長く貧乏に苦しんだ俳人。
その暮らしぶりが、名言や俳句のなかにもありありと描かれていました。
そんななかでも素晴らしい作品を残し続けた彼を見ていると、「お金と幸せはイコールではない」ということを感じさせられます。
お金はそりゃあ、あるにこしたものではありませんが、一茶のように与えられた環境を活かす生き方ができたら、暮らしは十分豊かにしていけそうです。
最後に今回のまとめをしておきましょう。
① 小林一茶は貧乏を言い訳にせず、俳人の道を切り拓き、お金ももたずに何年も旅をした
② 一茶は多くを求めようとせず、貧乏のなかにも楽しみを見つけようとしていた
③ 長く弱い立場を経験したからこそ、弱者の気持ちがわかる。その気持ちから小さな虫や動物たちの句をたくさん残した
歴史上の俳人には珍しく、どこまでも庶民的で親しみやすい一茶。
私たちが暮らしていくうえでも、参考にできる部分はたくさんあるはずです。
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