虚弱体質ながら戦場で勇敢に戦った人物像から、
古代エジプトのファラオでも特に人気の高いツタンカーメン。
彼の身体が弱かった理由は、王家を巡る特殊な家系図にあります。
その全貌を見ていくことで、古代エジプトの王たちが自身をどのような存在だと捉えていたのか、またその習わしによって王家が辿った末路が見えてきました。
以下より詳しく辿っていきましょう。
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遺伝的疾患を持って生まれたツタンカーメン
ツタンカーメンが生まれながらにして重度の身体疾患を持っていた話は有名です。
彼は足に障害を抱えており、さらに徐々に骨が損傷していく「無血管性骨壊死」という病気も併発していました。
その死に際して130本もの杖が副葬品として埋葬されたように、彼は補助なしでは歩くことも困難だったのでしょう。
度重なる近親交配
ツタンカーメンを蝕んだこのような疾患は、王家にて度重なる近親交配が行われていたことに由来します。
かくいう彼が結婚したアンケセナーメンも、彼の異母兄妹です。
ツタンカーメンの父は第18王朝にて、大規模な宗教革命を起こしたアメンホテプ4世。
母は他国から送られてきたキヤという女性です。
そしてアンケセナーメンの父もアメンホテプ4世で、母はその正妻のネフェルティティ。
つまり正妻の娘と、側室の息子が結婚したということです。
さらにアンケセナーメンは、ツタンカーメンと結婚する以前は、父のアメンホテプ4世の妻になっていたこともありました。
この親子間だけでも、かなりめちゃくちゃな近親交配が行われていたことがわかります。
このような交配が何代にも渡って繰り返されていれば、当然ツタンカーメンのような身体疾患を持った王も生まれるというわけですね。
二人の娘たちも虚弱体質で死亡…その血筋が途絶えてしまう
ツタンカーメンはアンケセナーメンとの間に二人の娘を儲けています。
しかしその二人の娘たちも幼くして死亡。
ツタンカーメンの墓に一緒に埋葬されたその遺骨からも、遺伝的疾患があったことが確認されています。
ツタンカーメンが亡くなったのは19歳のころの話です。
彼自身の若さを考えると、一緒に埋葬された娘たちも生後間もなく亡くなってしまったことが伺えますね。
近親交配が繰り返された結果、このように確実に血筋は弱っていき、ツタンカーメンの代でその家系は途絶えてしまいました。
自然の摂理に背く行為をすれば決して良い方向には運ばないということを、この近親交配の例から学ぶことができますね。
第18王朝の王族が独特な姿で描かれているのは遺伝病の影響
古代エジプトの遺跡には多くの壁画が残されています。
その中にも、この時代特に遺伝病が蔓延していたことが垣間見えます。
第18王朝の王族たちは、他の時代と比べて明らかに特徴的な外見で描かれているのです。
頭が極端に長かったり、男なのにまるで女性のような身体つきをしていたり。
ファラオを描くなら、権力や力強さを象徴して表現するもののように感じます。
それに対して第18王朝の時代のこの描写には、違和感を覚えざるを得ません。
壁画に表れたこの特徴は、やはりなんらかの身体疾患を表しているのでしょう。
王家は一般庶民と血を交えたくなかった
王家がどうして近親交配を繰り返していたのかというと、「王家の人間が一般庶民と血を交えることなどあり得ない」とされていたからです。
アメンホテプ4世が国民に対して、自身を神として信仰させたように、代々ファラオは神の末裔だと信じられてきました。
現代となっては近親交配こそ道理に背く行為だといえますが、この時代の通説で考えれば、王族が庶民と交配することのほうがよほど愚かしい行為だったのです。
王族と庶民は神と人間の関係。
その考えが染み付いていれば、むしろ近親交配以外のほうが、問題のある子供が生まれてくるように思えるでしょう。
しかしツタンカーメンが亡くなってからは、王位は血筋に関係なく、大臣や将軍などに受け継がれていくことになります。
この流れは単に純粋な王家の人間が、いなくなってしまったということだけではないでしょう。
王家に携わる人たちは、ツタンカーメンの家系の末路を目の当たりにして、近親交配こそ無理のある考え方だったということを、身を持って痛感したのではないでしょうか。
きょうのまとめ
父母兄妹の関係を見るだけでも、古代エジプトの複雑な家系事情が垣間見えるツタンカーメンの家系図。
そして度重なる近親交配の末に待っていたのは、家系の末路でした。
兄妹婚とはいっても、ツタンカーメンとアンケセナーメンの夫婦仲はとても良かったといいます。
それを踏まえると、なんだか心苦しい気持ちにもなりますね。
今回の内容を簡単にまとめると…
① ツタンカーメンは度重なる近親交配によって、身体疾患を持って生まれた
② 身体疾患が蔓延した結果、ツタンカーメンの代でその血筋は途絶えてしまう
③ 古代エジプト王家の近親交配は、ファラオを神の末裔とする習わしからだった
ツタンカーメンの血筋が途絶えてしまったのは、歴代のファラオたちの神への信仰心が原因だとも捉えられます。
その実害を考えると、古代において宗教が人に及ぼした影響力を思い知らされますね。
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