木曽義仲は源氏である頼朝を敵にし、そして義経軍と戦って敗れました。
源氏の従兄弟同士の激しい対立には、彼らの育った環境にも伏線があったようです。
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全国で土着した源氏
源氏は中央政界の権力争いの中で藤原氏に負け、
1159年、平治の乱で平家に負けたために、一族が全国に散らばって土着しました。
そのため、平清盛一家のように中央に強力なファミリーはできませんでしたが、土着したそれぞれの源氏が独自の基盤を作っていたのです。
木曽義仲と頼朝・義経の関係
同じ源氏だった義仲、頼朝・義経は、従兄弟同士でした。
木曽義仲は河内源氏の一族、源義賢の次男です。
義仲の父・義賢は、源義朝と対立し、1155年に義朝の長男(義仲にとって従兄)・源義平に討たれました。
つまり、義仲の父親は頼朝や義経の兄に殺されたのです。
当時はまだ2歳だった駒王丸(のちの義仲)も、義平に命を狙われましたが、信濃国へ逃れ、そこで中原兼遠を養父として育ちました。
一方1156年、源義朝は保元の乱で平清盛と共に武士の政界進出に大きなきっかけを作ります。
しかし、1159年の平治の乱で平清盛との勢力争いに敗れ死亡。
頼朝の兄・義平も捕らえられて殺され、頼朝は伊豆での流人生活を送ります。
弟の義経も母親の手を離れ、鞍馬山へ預けられることになってしまいました。
義仲、頼朝、義経の境遇と生き方への影響
3人はそれぞれの地で成長します。環境のせいか、三人全く違う性格に育ちました。
田舎でのびのび育った義仲
信濃国木曽谷(現在の長野県木曽郡木曽町)に逃れたと言われる義仲(諸説あり)。
養父である中原兼遠には彼自身の子供たちと同様に育てられ、学問や作法、そして武道についても乳兄弟と共に学びました。
都の雅びな生活とは縁がありませんでしたが、義仲は木曽の山の中で健康的で伸び伸びとした幼少期を送りました。
人々に温かく愛情をもって養育されたと考えられています。
警戒心を忘れられない頼朝
義仲よりも7年年上の頼朝は、14歳で流人となって伊豆で暮らしを始めるまでは都育ちです。
母親が正室であり、彼が義朝の跡継ぎとして期待され、蔵人として朝廷に仕えていました。
しかしながら、父が平治の乱で平家に討たれると都を離れ、伊豆で流人となって平家の目を気にして暮らすことになりました。
昔のような華やかな生活や自由もなく、いつも誰かに監視されているような流人生活は、彼を猜疑心でいっぱいの青年にしたのでした。
愛情に飢えた義経
義経と頼朝は異母兄弟でした。
父・義朝が平氏との戦いで敗死すると、義経の母・常盤御前は数え年2歳の牛若(後の義経)と、2人の同母兄・今若と乙若を連れて大和国(奈良県)へ逃亡。
のち、彼女は自分の子供や母の助命と引き替えに清盛の妾となり、子供たちと離れて暮らします。
今若と乙若は出家して僧となり、牛若は鞍馬寺で暮らしました。
しかし、自分が源氏の嫡流だと知った牛若は剣術の修行に励み、鞍馬寺を出奔。自らが元服を行って義経と名乗り、平泉の藤原秀衡を頼って奥州へと向かったのです。
彼は、家族や母親の愛情に飢えたままで青年に成長します。
一番の敗者・木曽義仲
3人は、以仁王の平家追討の令旨をきっかけに、打倒平家を目標に動き始めます。
義仲は北陸から京に攻め入り、ついに平家を都から追放。
頼朝は、関東を制圧します。
義経は、頼朝の平氏打倒の戦いのために兄・頼朝の手足となって活躍しました。
組めば最強の3人でしたが、頼朝は義仲を警戒し、彼の京での不人気をうまく利用して自らの立場を強くし、後白河法皇と手を組みます。
義経は宇治川の戦いで義仲の軍勢を破って入京し、敗走した義仲は粟津の戦いで討ち死にします。
一ノ谷、屋島、壇ノ浦の合戦を経て平氏を滅ぼし、最大の功労者となった義経。
しかし、その後の行動で頼朝の怒りを買い、朝敵とされて逃亡先の奥州平泉で自刃し、世は頼朝のものになったのです。
父親を殺されながらも同じ源氏を敵だと見なさなかった木曽義仲と、兄・頼朝の命令のまま働き、平家滅亡の功労者となった義経。
しかし、一番の敗者は義仲、続いて義経。
残った勝者は平家とその二人を抑えた源頼朝でした。
きょうのまとめ
今回は、木曽義仲と対立した源頼朝と源義経の育った経緯と性格の違いについてご紹介いたしました。
簡単にまとめると
① 頼朝、義経の兄は義仲の父親の仇だった。
② 義仲、頼朝、義経は同じ源氏でも全く違った環境で育った。
③ 同じ源氏一門を信用しなかった源頼朝が最後まで生き残った。
親の違い、生まれ育った環境の違い、それによる性格の違いがそれぞれの生き方に現れていた3人でした。
クールに徹した頼朝が残りましたが、早くに滅びた義仲や義経たちの情を誰が愚かだと言えるでしょうか。
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