田沼意次といえば”わいろ”。
“わいろ”といえば田沼意次。
もう、これだけ聞くとどんだけひどい政治家なんだよ。
と思いますが、本当にそんなにひどかったのでしょうか。
今回は田沼意次と”わいろ”の関連についてせまってまいりましょう。
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景気のよかった田沼意次時代
もとの濁りの 田沼恋しき
あの、松平定信の行った寛政の改革の時に読まれた歌です。
白河とは松平定信のこと。
潔癖な改革政治家として知られておりました。
田沼とはそのまま意次のことです。
庶民には定信の「規制規制」の「倹約倹約」のやり方はきつかったようです。
それに対して、田沼時代はおおらかでした。
実際景気は良かったです。
「宝暦・天明文化」と呼ばれるものがありまして、
・伊藤若冲
・喜多川歌麿
・杉田玄白
・本居宣長
彼らはみんな田沼時代に花開いた学者、芸術家の人たちです。
景気が良くないと庶民にこんな華やかな文化なんて生まれません。
田沼意次は
これだけ商品経済が盛んになってきてるんだから、
「もう、コメだけの時代は終わったでしょ」
と、商業重視のやり方にきっぱり切り替えていきました。
株仲間の奨励
田沼、発想が斬新です。
株仲間を奨励して、商人からも税金を取ってっちゃいます。
何せ、当時税金の取り立て先と言えばお百姓。
だから、徳川吉宗なんかは
新田開発をせっせと行ったり、年貢率を上げたり、
していたのです。
ちなみに株仲間はいわゆるカルテルです。
そのお仲間さんになろうとするなら、幕府に認めてもらわないといけません。
ただ、そこで幕府は「冥加金」というのを請求するのです。
これが税金になるのですね。
お仲間さんになりさえすれば、少ないお仲間で業界は俺たちのもの、
ということになるのです。
要は織田信長の行った”楽市楽座”の逆ですね。
新規参入はむずかしいです。
価格競争はおこりにくいです。
その分、商品はそこそこの値段で売れます。
田沼意次の改革は時代の変化を読んでいた?
まあ、こうして一部商人を手厚くする政策である分、その「一部」になりたいと、
当然幕府にすりよろうという人々が出てきます。
「どうぞよしなに」
ということで、お手付け(お金)をしかるべく人に献上して、
という人が出てきますわね。
おかげで”わいろ”が世に横行します。
この辺り、新井白石や徳川吉宗、松平定信といった人たちのやり方と好対になるんですね。
白石らのやり方は
「おいおい、そのやり方じゃ。関係のない庶民の景気まで不必要に悪くなっちゃうじゃないか」
と疑問がかかる反面、
田沼のやり方は
「社会がこれで本当に良いのだろうか」
と思わせる部分があるような。
好き嫌いは結構別れると思います。
ただ、これは彼の成しとげた立派な業績です。
幕府の財政をきっちり立て直しています。
徳川綱吉晩年のようなやたらめったらのバラマキ景気じゃないんですね。
モノカルチャー(単一産品依存)から距離を置こうというのもまたポイント高くないですか。
もう、江戸に入ってだいぶ経ち、庶民の経済構造もだいぶ変わってきておりましたし、
他人が作ったコメにいつまでもすがりついている武士というものがじりじりと地盤沈下していたんですね。
ただ、田沼その転び方が田沼らしすぎました。
田沼意次失脚
田沼のやり方は商売人、商品、お金を大事にします。
その効能を存分にして宝暦・天明景気がやってまいりました。
が、
1783年。浅間山大噴火。
続く天候不順、
そんな時に、お百姓の多くが
「こんなカネカネの世の中でお百姓なんてやってられるか」
てんで田畑を捨てて都市に出ていました。
おかげで農地は荒れ、
とうとう「天明の大飢饉」です。
食糧難に疫病。
当然、各地で一揆・打ちこわし。
田沼はとうとう改革の行き詰まりから老中をクビにされ、後は転げ落ちるように。
ちなみに、あれだけ「怪しい」とされている田沼自身のわいろについては、
まだはっきりとした証拠資料はないようです。
きょうのまとめ
これが政治家の務めとはいえ実に重たく、むずかしいものです。
田沼の息子が江戸城内で佐野政言という男に斬りつけられ殺されても、市井では佐野のことを、
「世直し大明神」
ですよ。
① 田沼意次は株仲間を奨励するなど、一部の商人に特権を与える者だった
② その特権にあずかろうと、幕府役人などへのわいろが横行した
③ 田沼意次は失脚したが、彼自身多額のわいろを受け取ったという証拠資料はまだ見つかっていない
まだ、そこに田沼自身の改革の弱さというものが露呈されているような気がします。
過去になされた事がらから検証し、よい部分を継承し、悪い部分を改める、のは極めて重要なことです。
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