田沼意次(たぬまおきつぐ)といえば皆さん何を思い浮かべますか。
昔はまあまるで「 悪徳政治の権化(ごんげ) 」のような散々なあつかいでした。
ですが、最近は「おとしめられた先見の政治家」としてその評価を次第に改めてきているようです。
さて、では田沼意次がどのような政治改革を行ったのかその内容について見てまいりましょう。
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田沼意次躍進の始まり。郡上一揆の裁定

まず、田沼でふれておかなければいけないのが”郡上一揆(ぐじょういっき)”です。
美濃国郡上藩(みのこくぐじょうはん。現在の岐阜県郡上市)で起こった大規模な一揆。
事態はどんどこややこしくなり、
当時の
老中(ろうじゅう。今でいう総理大臣のようなもの)、
若年寄(わかどしより。今でいう総理大臣に次ぐほどの政府のえらいさん)、
が失脚するほどまでになってしまいます。
そこで頑張ったのが、
キラリンッ!!
元祖イケメン政治家オキ様です。
オキ様とは田沼意次のことです。
もちろん、当時はそう呼んでません。
この頃までは政府の財政を立て直すには「 コメ=年貢 」に頼り切っていたわけです。
あの徳川吉宗様がそうなさっていましたから。
でも、オキ様は違います。
「 もうコメだのみの時代は終わりましたね(キラリンッ!!) 」
というわけです。
この一揆を上手に裁定して、上司の将軍徳川家重様もご満悦(まんえつ)です。
こうして、オキ様は幕府政治のスターダムへとのし上がってゆくのです!!
田沼意次、相良藩での名君ぶり!

オキ様はこの時代にしては珍しく「 お金の流れがわかってる 」政治家だったのです。
オキ様は出世して相良藩(さがらはん。現在の静岡県牧之原市相良)の大名になるのですが。
そこでも、製塩や養蚕を興(おこ)し、
「 年貢徴増は絶対にいけません! 」
と家訓にまで残しております。
おかげで領民大喜び!!
オキ様はまさに時代の閉塞状況に現れた新政治のプリンスだったのです。
田沼意次の幕府で行ったイリュージョン政治
オキ様は第10代将軍徳川家治にも気に入られまして、とうとう老中にまで上りつめます!
さあ、ここからは彼が幕府で行った”オキマジック”の数々をご紹介いたしましょう。
株仲間の奨励

株仲間というと要はカルテルです。
「 ここで商売やりてえんなら、俺たち(幕府)の許可がなきゃ 」
というわけです。
この株仲間のいわゆる会員になっちゃえば、その少ない会員だけで業界俺たちのもの!
ウハウハです!!
しかし、幕府はちゃっかりしています。
「 その替わりわかってるよね 」
お金です。
冥加金(みょうがきん)ちょうだいっ!
というわけです。
こうして、当時納税者と言えばいつもお百姓さんばかりだったのが、商人の方からも取れるようになった。
というわけです。
蝦夷地(えぞち)の開拓

蝦夷地とは今でいう北海道です。
オキ様はいまだ未開拓地の広がるそこにも目を付けたのですね。
ただ、そこにはすでに先住民のアイヌの人たちがいる、という点を忘れてほしくないですね。
ちなみに、オキ様の蝦夷地における開拓計画は志し半ばに頓挫してしまいました。
印旛沼(いんばぬま)などの干拓

印旛沼とは今の千葉県北部にあった広大な湿地帯です。
オキ様はその辺抜け目なく、
「 ここを人の耕せる地にしよう 」
としたわけです。
ただ、結局大洪水が起きたり、オキ様自身が失脚してしまい、
これも志し半ばで断念となってしまいました。
宝暦(ほうれき)・天明文化が盛んになる

オキ様改革の成果として間接的ですが、
私はこれを挙げずにいられません。
「 宝暦・天明文化?なんじゃそれ? 」
と思う方はたくさんいらっしゃるでしょう。
しかし、あの「 元禄 」「 化政 」にも劣らぬ、この多士済々ぶり。
見てください。
与謝蕪村(よさぶそん)。伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)。喜多川歌麿(きたがわうたまろ)。本居宣長(もとおりのりなが)。杉田玄白(すぎたげんぱく)。
まだまだほかにも載せられない方々がたっぷり!
景気が良くて人々の心にも余裕ができると、えてして文化というものは豊潤の時をむかえます。
きょうのまとめ
いかがだったでしょう。
オキ様のおかげで一時的に幕府の財政は大いに持ち直し、庶民の景気も良くなりました。
ただ、惜しむらく、
オキ様の重商政策に多くが
「 百姓なんてバカらしくてやってられるか 」
と、田畑を投げ出したりした矢先に、
浅間山が噴火したり、大洪水が襲ったり、……
とうとう、天明の大飢饉(だいききん)に。
① 田沼意次は郡上一揆の裁定で成果を残し、一躍老中への道を切り開いた
② 田沼意次は「コメ」一辺倒ではない「重商主義」的な考えで改革を行い、幕府財政にも景気にも成果を残した
③ 田沼意次は晩年天候不順などに悩まされ、改革半ばに失脚した
おかげで、オキ様詰め腹を切らされる形で老中をクビ。
後は権力の座から転がり落ちるように……。
あげくに死後とんでもない”悪名”ばかりなすりつけられてしまいました。
さあ、あなたは田沼意次に何を見ますか。
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