蓮如の布教にとても大事な役割をはたした「御文章」とは?

 

今、浄土真宗本願寺派と真宗大谷派、その信者を合わせると全国に1000万人以上いるといわれます。

その中興の祖とされるのが蓮如れんにょ(1415~1599年)です。

蓮如が宗主そうしゅ(本家のリーダー)の地位に就く前ころにはかなりさびれはてていました。

しかし、蓮如はものすごい勢いで信者を増やし、宗派が栄える足がかりとなります。

その際に力強いツールとなったのが御文章ごぶんしょうです。

今回はこの「御文章」とはどのようなものかについてみてゆきましょう。

 

御文章とは

蓮如影像(室町時代作)

御文章とは阿弥陀様から蓮如の筆を通し、人々に向けた手紙の形をとっております。

御文おふみともよばれます。

ひらがなをできるだけ多くして、ふだんなにげなく使う語り口で。

より多くの人々に

だれにでもわかるように

という蓮如の気づかいを感じます。

全部で五じょう(折り本などの単位。今風にいうと冊)八十通。

手軽なサイズで携帯に適しております。

蓮如から全国各地に送られた御文章はいろんな人々によって書き写され、そして、また新たな人々の手へと送り届けられてゆきました。

その中でも一番有名で信徒たちにとても大事にされているのが白骨の御文章です。

現代風の言葉にまとめてみました。

 

「白骨の御文章」訳

それ、人間の一生などというものをつらつらと見ていれば、およそはかないまぼろしのようです。

今までに一万年を生きた人なんて聞いたことがありますか。

百才だってどうやって生きればいいのか。

私が先、ほかの人が先、今日とも知らず、明日とも知らず。葉の根本のしずくがしたり落ちるよりも、葉先の露が消えゆくよりも、私たちの命のなりはてというものは当たり前におとずれるのです。

朝には元気はつらつとした紅い顔をしていても、夕べには白骨となりうる身です。

無常の風がやってくれば、たちまちにして二つの瞳は閉じ、ひとつの息は永遠にとだえてしまいます。

桃やすももの実ですらみずみずしい姿をうしなえば、親戚家族みんな集まってなげき悲しんでももうどうすることもできません。

そのままにしておくことなどできず、外に火をくべ、夜の煙となれば、もはやそこに残るは白骨のみ。

あわれであろうとも。

この世のはかないことに老いや若いにどれほどの差がありますか。

だれもが死んだ後をこそ一番の大事だと心にとめて、阿弥陀仏様を深くたのみ、念仏もうしあげましょう。

あな、かしこ。あな、かしこ。

 

「御文章」ができあがるきっかけ

そもそもこの御文章ができあがるにはどういういきさつがあったのでしょうか。

滋賀県守山市の金森かながもり道西という蓮如の弟子がおりました。

道西が親鸞しんらん(浄土真宗の教祖)の教えをどうやって

「多くの人々に」

「わかりやすく」

広めようかこまっておりました。

それを知った蓮如は筆をとってみます。

こうしてできあがった「御文章」第一号。

今の仏法でどんな罪を背負っているといわれる人でもまず阿弥陀様を拝みなさい。

阿弥陀様は信じる人ならだれでも受け止めてくださいますから

という内容が記されております。

当時の仏法では「よくないこと」「地獄行きとされたこと」をしている人。

たとえば、

「魚などを獲って(※)暮らしを立てている人などにも等しく救いや真実の光が与えられるべき」

という親鸞の、そして、蓮如の教えの意義がうかがえます。

(※)生き物の命を奪っているとして今でも厳しいタブーとされているところがあります。

 

きょうのまとめ

今の滋賀県大津市堅田かたたは蓮如とはとてもゆかり深い土地がらです。

琵琶湖がキュッと狭まっているところの西岸に位置し(東岸は守山です)、古来より水運や漁業で栄えてきました。

彼らは蓮如のことをとても大事にし、当時仏教界でものすごい勢力だった比叡山延暦寺からの武力すら用いた弾圧にあっても自分の命すらかえりみず、蓮如をかくまい、戦い続けました。

堅田の信者たちは堅田衆と呼ばれ、その後の宗派の信仰の広がりに大きな役割をはたしました。

そして、彼らの手に篤く握られていたのは御文章です。

① 御文章は教えを広めるために蓮如が用い始めたとても力強いツールだった

② 御文章の中で特に有名で、信徒たちにとても大事にされているのが「白骨の御文章」

③ 弟子の道西が「よりわかりやすく、より多くの人に教えるのにどうすればいいのか」と悩んでいるのを知って、蓮如は「御文章」を思い付いた

 
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