藤原純友の乱についての報告書として現在にも伝わるものに『純友追討記』があります。
しかし、関東で同様の乱を起こした平将門に匹敵するほどの記録は残っていません。
謎の多い藤原純友の生涯ですが、なぜ彼が海賊になったのかという理由を追ってみましょう。
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藤原純友はどんな人?
- 出身地:不明
- 生年月日:893年頃
- 死亡年月日:941年7月21日(享年49歳)
- 受領の専横と地方民から搾取する中央に抗議し、瀬戸内の海賊を率いて朝廷に対抗するも、討伐される
藤原純友 年表
西暦(年齢)
893年(1歳)藤原北家、大宰少弐・藤原良範の三男として誕生
931年(39歳)伊予掾となって赴任する
936年(44歳)このころまでに瀬戸内海の海賊の頭領となり、伊予(愛媛県)の日振島を根城とする
939年(47歳)備前介藤原子高を捕らえて殺害する(藤原純友の乱が始まる)
940年(48歳)朝廷より藤原純友追補の令が出る
941年(49歳)大宰府にて朝廷の小野好古・源経基による追討軍に大敗、のち伊予で警固使・橘遠保に討伐される(もしくは捕らえられたのち獄死)
なぜ藤原純友は海賊になったのか
藤原北家という名家の血筋の出であったのにも関わらず、藤原純友は父親が早世したために出世が望めませんでした。
そんな中、彼はそのころ荒れていた瀬戸内の海賊を鎮圧するために地方官人として伊予にやって来ました。
その純友が、一体どうして反対の立場である海賊になってしまったのでしょうか。
瀬戸内海賊発生の状況
瀬戸内にいた海賊たちは、なりたくて海賊になったわけではありませんでした。
もともと朝廷の舎人という朝廷の雑用をする官人だったのです。
瀬戸内で働く舎人たちは、中国や朝鮮など海外の客人のための対外的な儀式などで活躍していました。
ところが、894年の遣唐使廃止以降、貿易も儀式も途絶え、舎人はヒマになったのです。
彼らには免税の特権があったので、何もしない多くの舎人がはびこりました。
税の徴収が仕事である受領は、それを苦々しく思い朝廷に訴えます。
もちろん朝廷は、税の取り立て役人である受領の機嫌を損ねたくはありません。
そこで受領に舎人をクビにする権利、逮捕する権利を与えて舎人を排除させました。
クビにされた舎人たちは、生きて行くために瀬戸内で生産される米を強奪する海賊になるしかなかったのです。
そして、その海賊を鎮圧する命を受けて地方官人として派遣されたのが藤原純友でした。
勲功を認めろ!不満が募る純友
藤原純友は父親の従兄弟である藤原元名の下で海賊討伐を行います。
932年ごろから4年ほど働き、その強さで海賊を圧倒しました。
元名が伊予国の任期を満了した後こそ一度失業しましたが、海賊を扱うセンスのある純友は、すぐに「伊予国警固使」の役職を与えられて海賊鎮圧を続けます。
しかし、新しい受領・紀淑人は純友の手柄を横取りし、勲功を黙殺。
そして純友は受領や朝廷にかなりの不満を持つようになったのです。
純友を中心に不満分子が結束
彼は任期を完了した後も平安京には戻らず、自主的な治安維持活動を続けました。
純友と同じように中央で出世が望めない没落貴族たちも共に活動を始めます。
努力が報われず朝廷に強い不満を持つ者たちは結束し、彼らが瀬戸内海をコントロールし始めたのです。
さらには、以前に純友に鎮圧されていた元舎人の海賊たちさえも強い純友を慕って仲間に加わりました。
こうして藤原純友の元に、瀬戸内海を中心とする強大な船団が出来上がったわけです。
これは地方に放置され、追い詰められた負け組たちが力を振り絞って作りだした怒りの海賊船団だったのです。
そして彼らは受領たちの手には負えないほどの軍事力を持ち、不満を爆発させる形で純友が反乱を起こしたのでした。
きょうのまとめ
藤原純友の乱を起こした海賊たちはどのような人々だったのか、なぜ討伐側だった純友自身が海賊になったのかについて経緯を見てみました。
藤原純友とは
① もともとは朝廷から派遣された海賊を鎮圧するための警固使
② 海賊になったきっかけが海賊鎮圧の勲功を無視されたという不満分子
③ 同じ不満を持つ地元の海賊たちに信頼され、共通の思いを強大な軍事力へと結集させた期待の人
でした。
落ちこぼれた貴族の純友が起こした天慶の乱は、日本史上によくある権力争いの乱ではありません。
地方の人々の生活を顧みずに踏み台にした、華々しい京の貴族政治に対する怒りの反乱だったのです。
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