『シャルルマーニュ伝説』
時は中世、西ヨーロッパにキリスト教の偉大な国王カール大帝が治めておりました。
カールの甥(おい。弟や妹の息子)にローランという一人の勇者がおりました。
彼は大いなる力に守られた聖剣デュランダルをたずさえ、持ち前の勇気と誇りでいくつもの戦場のピンチをかけぬけます。
そして、ローランの無二の親友で副官がオリヴィエ。
知恵と理性でローランを盛り立てます。
そして、彼らと一丸となった12人のパラディン(高い身分の騎士)たち。
彼らは続々とおそい来るおそるべき強敵たちや策謀をなぎはらい、やがてその運命は……。
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『シャルルマーニュ(カール大帝)伝説』で一番人気があるのは?
カール大帝の甥であり、家来一番の勇者ローランは中世ヨーロッパ世界の人気者です。
彼をあつかった物語がいくつもできあがり、今にいたるまでずっと長らく愛され続けております。
そんな中でも一番の代表作が『ローランの歌』です。
話が出来上がったのが12世紀初めごろ。
日本でなら“院政”がまっさかりのころです。
さてさて、どんなお話か、まずはそのあらすじを紹介しましょう。
『ローランの歌』あらすじ
ガヌロンの陰謀
とても強くて、みんなに信頼されるローラン。
彼はカール大帝のもとで当時イスラム教徒の治めていたスペインとの戦争に大活躍します。
カールらフランク王国軍はとうとう敵を追いつめ、和平を取り持とうとします。
その使者に立てられたのがガヌロン。
ガヌロンはもともとローランと仲が悪いです。
しかも、「こんな命の危険をともなう役割に、なぜ自分を推薦したことのか」と、内心腹が立っておさまりません。
こうして、ガヌロンはスペイン方と裏でひそかに通じてしまいます。
フランク側の殿軍(しんがり。退却する時の一番後ろの部隊)をローランとオリヴィエが任されるようまんまとしむけると、スペイン軍は突然和平の約束を無視して攻撃を開始!
たちまち、ローランたちは大ピンチです。
ローランの大奮戦
兵力差はローラン軍2万人vsスペイン軍40万人。
スペイン軍は容赦(ようしゃ)なく、次々と猛者(もさ)を送り込み、さらに大軍で波状攻撃です。
そんな圧倒的不利の中、ローランは聖剣デュランダルをひっさげ、名馬ヴェイヤンチーフにまたがり、オリヴィエおよび12パラディンたちとともに常人離れした戦いぶりを見せてゆきます。
が、あまりに多勢に無勢。
親友オリヴィエをはじめとする12のパラディンたちは次第に討たれてゆき、とうとうローランら満身創痍の3人にまでおいこまれてしまいました。
そんな時、ようやくかけつけたカール大帝の援軍。
スペインは泡を食って逃げてゆきます。
ローランは息も絶え絶え……。
なおも、彼は12のパラディンたちの遺体を一人、一人と集めてゆきます。
そんな時、かくれていた賊が思わず現れます。
ついに死を覚悟したローラン。
「ならば、こいつが敵の手にわたるよりは」
と愛剣デュランダルを大理石の岩に打ち付けます。
しかし、剣は刃こぼれ一つせず、岩を切り裂いてしまいました。
こうして、ローランは力つきます。
(ちなみに、謀略のバレたガヌロンはフランク帰国後、裁判で処刑となってしまいました。)
ローランは本当にいたの?
ローランは本当にいたのでしょうか。
フランク王国の歴史書『カール大帝伝』には、“ロンスヴォーの戦い”についてだけ彼の記録が残っております。
カール大帝はスペインに攻め込みました。
が、フランク王国の北部で内乱が起こり、退却しなければならなくなりました。
カールは自分が引き上げる間に、バスク人がイスラム勢力とつながるのを恐れます。
バスク人とはスペイン北東部からフランス北西部のあたりに住んでいる固有の民族です。
カールはバスク人たちが立ち上がれないように彼らの土地をメチャクチャに破壊し、厳しい統治でしめあげます。
バスク人は当然カールのことをうらむようになります。
こうしてバスク人は軍隊をひそかに組織。
さらに、フランク退却軍の先回り。
奇襲をかけてフランク軍をさんざんに苦しめました。
これに対し、フランク側で決死の奮戦をしたのがローランです。
ローランの部隊は本当に全滅するまで戦いぬきました。
こうして彼らが身代わりとなり、フランク本軍は大ピンチから救われたのです。
きょうのまとめ
力のかぎり戦いぬき、敗れ去っていった人たちというのは私たちの心に残りますね。
ただ一方で、そんな物語の裏にこめられた真実もみすごしてはなりません。
民族や宗教を越えて、すべての存在に物語があります。
① 『シャルルマーニュ物語』の中で一番人気は『ローランの歌』
② 『ローランの歌』はフランクの勇者ローランの悲劇物語
③ 『ローランの歌』はもとになった歴史的事実がある
『シャルルマーニュ伝説』はほかに、『恋するオルランド(※)』や『狂えるオルランド』など。
(※)オルランドとはローランのイタリア語読みです。
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