マルコ・ポーロの『東方見聞録』~中世世界の大アドベンチャー紀行~

 

まだ飛行機も車も電車もなかった時代。

ある一人のヨーロッパの商人がRPGさながらにいまだ知られない世界中を旅してまわりました。

彼の生まれ故郷イタリアのヴェニスから始まって、トルコ・イラン・中央アジア・中国。

船に乗って東南アジア・インド、そしてまたヴェニスに帰ってきます。

見たこともない国。

見たこともない文化。

そして、ちょっと信じられないような不思議な話も盛りだくさんです。

そんなリアル『冒険の書』ともいうべき『東方見聞録』について紹介しましょう。

 

牢屋の中にいた不思議なおじさん

1298年、イタリアの都市国家ジェノバとヴェニスが戦争になりました。

ジェノバ側の牢屋に放り込まれていたルスティケッロは物語作家。

ふと、同じ牢屋にちょっとかわったおじさんに出会います。

そのおじさんは

「世界を旅した」

と言ってまったく信じられないようなことばかり語ります。

しかし、ルスティケッロはこのおじさんの話があんまりおもしろいので全部書き留めておくことにしました。

 

そのおじさんの名は

そのおじさんは自分の名前をマルコ・ポーロと語りました。

マルコは17才の時、貿易商人の父ニコロ、叔父マッフェロに付いて故郷ヴェニスから旅に出ます。

アナトリア(今のトルコ)を越え、ペルシャ(今のイラン)を越え、なんとタルタル人(モンゴル人のこと)のものすんごく大きな帝国の皇帝“フビライハン”にみこまれ、

17年間もお仕えして、

今度は船に乗っていくつも海を越え、またヴェニスに帰ってきました。

そのたびにかかった日程はなんと24年間

 

それホント!ほらふきマルコポーロ?

『東方見聞録』というのは当時の世界中の町の様子がわりと正確に、とてもこと細かに書いております。

ここの住人は〇〇教を信じて、特産物は△と◇で、人の性格は☆※$などと。

ただ、たまに「?」と思う箇所があるのですね。

このあたりはまだまだ中世です。

不思議な話盛りだくさん。

そのあたりをちょっと紹介しましょう。

山の老人

不思議な老人がおります。

この老人は若い男に薬を飲ませ、眠ったすきに山奥にある自分の宮殿に連れ帰ります。

そこで女性いっぱいをはべらせ、ぜいたくざんまいで若い男をたらしこみます。

そして、ころあいをみはからって若い男にまた薬を飲ませ、もとの下界におろします。

すると、若い男は目を覚ますと「今まで見たのは夢だったのか」ととてもおちこみます。

そこへ老人がシレッと現れ、

「言うことをきくならもとの夢の暮らしにもどしてやる」

と言って、老人の名指した人間を殺すようにそそのかします。

こうして、彼らはよくそれにこたえたので、どこの国の大臣や王様ですら老人のことをとても恐れ、いっぱいみつぎものをします。

ところが、ある王様がさすがにこの老人をやっつけようと兵を出します。

老人の山奥にある難攻不落の宮殿を囲み、3年間兵糧攻めにしてやっとおちたということです。

もし、兵糧がもっとあれば、この宮殿はいくらでももちこたえただろう、と書かれております。

百の目を持つ男

マンジ国(南宋)の皇帝はある時、占い師にこういわれました。

「百の目を持つ男があらわれないかぎり、この国を安泰です」

これを聞き、皇帝は

「そんなやついるはずがない」

としてすっかり安心して暮らすようになりました。

しかし、タルタル人(元)の軍勢に攻め立てられ、その将軍の名前を聞いてびっくりです。

“バヤン”

中国語で“百眼”は“バイヤン”といいます。

結局、マンジ国はバヤン将軍の快進撃によって間もなく滅ぼされることとなってしまいました。

黄金の国ジパング

ジパングとは私たち日本のことです。

そこには「?」と思うこともいっぱい書かれております。

なにせ“黄金”がいっぱい採れた、ということになっております。

その国の王の宮殿が「黄金三昧」(平泉の金色堂とまちがえたのでしょうか)。

屋根も床も黄金、しかも結構な分厚さって、いくらなんでもそこまではないよ。

 

マルコ・ポーロ、『中国まで行っていない説』と『そもそもいない説』

ちなみにマルコポーロ。

中国まで入ってないんじゃないか、ともいわれております。

というのもマルコが17年間もタルタル人(元)のフビライハンにお仕えしたのに、あちらにはそんな記録が一切ないんです。

つまり、『東方見聞録』のかなりの部分が人聞き?

当時のシルクロードの貿易商人のネットワークをもってすれば不可能ではなかったでしょう。

中にはマルコ・ポーロ自体ルスティケッロの創作キャラというという説もあります。

 

きょうのまとめ

① マルコ・ポーロの『東方見聞録』は彼が戦争で捕虜になった時に語ったことをルスティケッロが書き留めてできあがったものといわれる

② 『東方見聞録』には不思議な話がいっぱい!ここで紹介できたものはほんのごく一部

③ マルコ・ポーロは中国まで行っていないのではないか、さらには創作キャラなのではないか、という説がある

 
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