木曽義仲には、妻や側室が数人います。
ここでは義仲と関わった女性の中でも特に知られた3人についてご紹介します。
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藤原伊子(ふじわらのいし 1167年-1207年)
伊子の父親は関白・松殿基房(藤原基房)の三女です。
義仲と伊子の結婚とそれ以降
木曽義仲は、1183年の法住寺合戦の際、自分の背後で東国の源頼朝に近づいた後白河法皇を幽閉しました。
その後義仲が独裁権力を獲得すると、平清盛や法皇に干されていた基房が義仲に近づき、協力します。
そしてその年に義仲は基房の17歳の娘である伊子を正室としたのです。
この婚姻により、基房は政権の座に返り咲き、わずか12歳の息子師家を摂政に就けることにも成功しました。
義仲と伊子の結婚生活は非常に短いものでしたが、二人の間には鞠子という一女があったそうです。
夫義仲が討ち死にした後の伊子は、源通親の側室になりました。
そしてのちに生まれたのが、曹洞宗の開祖となる道元です。
夫通親の死後は、京の木幡山荘に母子で暮らし、伊子は道元が8歳のときに亡くなってしまいました。
義仲と伊子のエピソード
伊子は、摂政や関白を務めた藤原基房の娘として高い知識と教養を身に付けた、当代きっての美しいお姫様でした。
彼女は田舎から出てきたばかりの義仲にとって、憧れの京そのものの存在。
義仲は彼女に夢中でした。
1184年に義経軍に攻められている最中も都落ちする直前まで五条内裏で伊子との別れを惜しみ、二人の家臣が切腹してこれを諫めたという話しが
・『平家物語』
に残っています。
巴御前(ともえごぜん/生没年未詳)
義仲の育ての親である中原兼遠の娘であり、樋口兼光と今井兼平の妹でもあります。
女武者・巴御前の活躍
女武者の彼女は、義仲四天王とともに一軍の大将まで勤める女性でした。
巴御前は幼い頃から義仲と一緒に育ち、教育を受け、武術も学んだ幼なじみでした。
色が白く、髪が長い大変な美人だったということです。
実は彼女が義仲の長男・源義高の母親である可能性が指摘されています。
治承・寿永の乱、倶利伽羅峠の戦い、横田河原の戦いで戦功を挙げています。
宇治川の戦いでは、彼女のことを問う敵方の畠山重忠に対して家臣に、
「強弓の手練れ、荒馬乗りの上手。乳母子ながら妾(おもひもの)にして、内には童を仕ふ様にもてなし、軍には一方の大将軍して、更に不覚の名を取らず。今井・樋口と兄弟にて、怖ろしき者にて候」
と言わせるほどの実力でした。
義仲の死の直前、彼は嫌がる巴を説得して落ち延びさせます。
その時、巴は最後の戦いとして大力の敵将・御田(恩田)八郎師重の首を取り、鎧・甲を脱ぎ捨てて去りました。
これが巴と義仲の別れです。
それにしても、こともなげに敵将を討ち取ってしまうところはさすがの巴御前です。
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義仲の死後の巴
晩年は尼になったとも言われます。
義仲の墓がある滋賀県大津の義仲寺には、無名庵と呼ばれる庵があります。
これが義仲寺の前身です。
後に義仲が亡くなった場所に戻ってきた巴が彼の墓のそばにこの庵を結んだのだそうです。
死の直前の義仲に、自らの最後の有様を人々に語り伝えよと言われた巴は、その二人の約束を守ったのでしょう。
側室:山吹御前(やまぶきごぜん/生没年未詳)
山吹御前は、義仲の便女(戦場で戦い、武将の身の回りの世話をする女)でした。
『平家物語』 によれば、巴御前と共に信濃国から京へと付き添いましたが、病に陥り、義仲の最後の戦いに同行できなかったということです。
彼女の出自については、
・巴と同様の中原兼遠の一族説
・諏訪大社に関わる金刺一族説
・上野国(群馬県)の豪族多胡太郎家国の娘説
などがあります。
山吹御前の最期については、義仲の後を追って大津で敵に殺された説を含め、各地に伝承が残され、東獄門前の木にかけられた義仲の首を盗んだという話しも残っています。
きょうのまとめ
まだ他に葵とよばれる倶利伽羅峠の戦いの時に討ち死にした女武者もいたと言われています。
残念ながら、木曽義仲と彼を巡る女性については客観的な事実に基づく記録が多くはなく、すでに物語となって虚構を含む部分も多そうです。
簡単にまとめると
① 義仲の正室となる女性は藤原基房の娘・伊子は、義仲の京への憧れの象徴のような女性
② 巴御前こそ義仲と最後まで一緒に戦い、生きている義仲を見た最後の女性
③ 義仲には、巴御前と共に京に連れてきた女性山吹御前がいた
いずれにせよ、木曽義仲は美しい妻と献身的な側室たちに恵まれた武将だったことが窺われます。
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