徳川家茂という人は
満20才とあまりに若く亡くなってしまったこともあって、なみいる徳川将軍たちの中ではわりと地味な印象です。
しかも、徳川家茂の生きたのはあの幕末。
同時代人にあまりにものすごい個性派のキャラクターが多すぎて……。
しかし、実際はあの勝海舟に絶賛されるほどの人物。
そんな優しくてマジメで才覚にもあふれていながら、
荒れ狂う時代にほんろうされてしまった青年像にせまってまいりましょう。
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徳川家茂はどんな人?
- 出身地:江戸(現在の東京)
- 生年月日:1846年7月17日
- 死亡年月日:1866年8月29日(享年20才)
- 徳川14代将軍。波乱の時代にあって将軍として幕府をなんとか盛り立てようとした。
徳川家茂の年表
1846年(0才)徳川家茂生まれる
1858年(12才)家茂、徳川第14代将軍となる
1862年(16才)家茂、皇女和宮と結婚する
1863年(17才)家茂、第1回上洛
1864年(18才)家茂、第2回上洛
1865年(19才)家茂、第3回上洛
1866年(20才)家茂、第2回長州征伐中大坂城で亡くなる
“その時”徳川家茂は生まれた
徳川家茂は第11代将軍徳川家斉の孫にあたります。
家斉の七男が斉順(清水徳川家→紀伊徳川家の当主)で、
斉順の次男(長男は死産)として
これから季節が本格的に”暑い盛り”になろうという
1846年7月17日江戸紀州藩邸に生まれます。
時は度重なる外圧。
そして、国内に高まりゆく尊王の声。
天災、兵乱、クーデター、……。
と幕府の権威は失墜を続け、日本国中をおおう不安はいよいよ深刻となりつつありました。
“その時”徳川家茂は将軍になった
1858年第13代将軍徳川家定が亡くなると
将軍継嗣(後継ぎのこと)で家茂を推す
井伊直弼などの”南紀派”と、
一橋慶喜を推す水戸斉昭などの”一橋派”が、
争い、
結果として家茂が第14代将軍に抜擢されます。
しかし、世は
安政の大獄
桜田門外の変
生麦事件など
いよいよ殺伐と混沌としてまいります。
“その時”徳川家茂は結婚した
いよいよ軋轢を深めてゆく幕府と朝廷。
そんなさなかにあって、おたがいの思惑が交差し、ある一つの提案が上がってまいります。
新将軍徳川家茂と皇女和宮の結婚です。
和宮はもともといいなづけがおり、京からはるかはなれた将軍家に嫁ぐことを拒んでおりました。
しかし、諭され、泣く泣く江戸城に降嫁してまいります。
そして、待ち受ける見知らぬ人たちとしきたり。
しかし、同い年の家茂とやがて心が通い合うようになり、
夫婦仲は円満となってゆきました。
徳川家茂の人がらと時代の葛藤(かっとう)
家茂は心優しげで賢くてマジメそうなエピソードが多いです。
ある時、
70才を過ぎた習字の先生の頭にいきなり墨をするための水をかけました。
周りの人々は、普段そんないたずらをする人じゃないのに。
なんでだろう。
と思っていると、実は習字の先生がおもらしをしてしまっていて、
それを隠すためにやったのだ、ということがわかりました。
家茂は将軍職を立派に勤め上げるために、ささやかな楽しみすら我慢して、文武に励みぬき、周りの人たちを感動させた、
とも言います。
そして、こんな苦難の時代の中、若い自分を差し置いて勝手に何事も決め進めてゆく家臣らを見て、くやし涙をこぼした
とも言います。
やがて、家茂は幕府と朝廷を取り持つため何度となく
”上洛”
することになります。
そこでも、自分の心とは裏腹にあまりに多くの人々がかかわって事態はどんどんとあらぬ方へと移り進んでゆき、
やがて、あまりに切ない”その時”をむかえてしまいます。
届けられなかった贈り物
徳川家茂は江戸で待つ和宮から
京の”西陣織”
をおねだりされたようです。
家茂はきっちりそれを買って、帰った時のために用意していたのですが、
“その時”
はやってきませんでした。
替わりに幕府の敵である長州征伐に幕府軍は惨敗を積み重ね、
家茂は病に倒れ、帰らぬ人となります。
満20才。
勝海舟が日記に記したように、
まさに”その時”が、幕府の崩壊を決定づける時となってしまいました。
きょうのまとめ
勝海舟は
「この人のためなら命をもささげられる」
と記したようです。
この人がもう少し長生きしていれば、歴史はどんな風に推移したのでしょうか。
① 徳川家茂は内憂外患の著しい世の中に没落の一途を続ける江戸幕府の将軍職に若くして就いた
② 徳川家茂は混迷を深める幕府と朝廷の間を取り持つように皇女和宮と結婚し、その夫婦仲はとても良かったと伝わる
③ 徳川家茂は第2次長州征伐という時代の差し迫った時に運悪く命を落としたが、勝海舟などは特に「あの方がもう少し長く生きていれば」と惜しんでいる
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