漢詩の詩人というとむずかしい印象でとらえられるかもしれません。
でも、よく知るとそれぞれになかなかキャラが立っております。
「おいおい!」
というツッコミどころ満載。
また味わいも深いです。
漢詩のトップ2は自由奔放な“詩仙”李白。
そして、こちらで紹介するまじめな“詩聖”杜甫です。
まじめだけれど世間ではまったくやっていけません。
なぜ?
その辺もふまえて杜甫独特の魅力に触れてみましょう。
きまじめ男が中国を代表するいじられキャラになるまで。
タップでお好きな項目へ:目次
杜甫はどんな人
- 出身地:河南省鄭州市鞏義県
- 生年月日:712年
- 死亡年月日:770年(享年58才)
- 唐時代を代表する詩人。“詩聖”と呼ばれる。
杜甫の年表
712年(0才)杜甫生まれる
735年(23才)科挙の進士を受験し不合格
744年(32才)李白と出会う
747年(35才)科挙また不合格
755年(43才)官職に就く
756年(44才)安史の乱起こる。杜甫、賊軍に捕まり幽閉される。
757年(45才)脱出
758年(46才)粛宗の怒りを買い、左遷される
759年(47才)官職を辞める
770年(58才)杜甫亡くなる
2012年~中国のネット上で画像をいじくられ話題となる
若い杜甫の放浪時代
杜甫は幼いころから詩人としての才能が芽生え始めます。
すでに13、4才のころには文人たちと交流を始めておりました。
「世の中を清く正しく変えてやるんだ!」
自身に満ちあふれ、意気揚々の杜甫少年。
そして、20代では中国の各地を転々。
ニート兼放浪者です。
満23才で公務員試験“科挙”を受験しますが落第。
年ごろ的に大卒で就活に失敗しちゃった、という感じです。
杜甫はなおも放浪します。
29才ごろに結婚。
ところが、まだ放浪を続ける杜甫。
とうとう放浪先で強力な放浪仲間まで捕まえてしまいました。
放浪のレジェンド李白です。
李白との出会い
李白は杜甫より11才も年上です。
こちらも筋金入りです。
2020才ごろには山にこもっていました。
任侠(硬派ヤンキー)の経験もあります。
たいがい就職はせず、できず、各地をプラプラしております。
杜甫は李白先輩にゾッコンです。
でも、李白は杜甫に対してそこそこのあしらいです。
「まだまだ若い小物だな」
というところでしょうか。
43才の初就職
杜甫は奥さんも子供もでき、やっとこさっとこ就職活動に一生懸命になります。
でも、忘れてはなりません。
杜甫はかなりの「意識高い系」です。
「世の中を清く正しくするんだ!」という使命感がとても、なのでふつうの仕事では満足できません。
すると、「皇帝陛下のおそば近くに仕えて」ということになります。
しかし、当時中国の公務員試験はものすごくむずかしいです。
また、落ち、その後もがんばりまくって満43才でなんとか就職できました。
キャリア4年で終了
ところがそんな早々に、歴史の激動が杜甫を容赦なく飲み込みます。
安史の乱です。
杜甫はあえなく反乱軍に捕まり、軟禁されてしまいました。
そんな苦しい中で詠んだのが代表作『春望』です。
が、杜甫何とか脱出!
そして、唐陣営に入れてもらうと、なんと信じられません。
悲願の皇帝陛下そば仕え。
やった!
ところが、杜甫はハンパな“意識高い系”ではありません。
もともと公務員になってからも苦しい人々に同情的な、政権批判的な、漢詩を詠んでいたような男です。
場の空気に無理にあわせようとはしません。
あるミスを犯した人がおりました。
皇帝陛下もふくめた多くの人々に責任を問われております。
杜甫は彼を守ろうとします。
杜甫はまもなく左遷され、すぐに公務員を辞めました。
杜甫の晩年
さて、杜甫が本当に杜甫になるのはここからです。
もう公務員でも何でもありません。
無職自称詩人47才妻子持ちが伝手から伝手をたよって各地を転々とします。
飢饉にあってはドングリや山イモで飢えをしのいだことがありました。
大風で貧しい自宅の屋根が吹き飛ばされたこともありました。
気付けば、周りの人たちはみんなちゃんと家族を養ったり、えらくなったりしています。
それに比べて……。
さらに自分がだんだんと老いさらばえてきていることもいやが上にも自覚せねばなりません。
今も心にしっかりと根付く“意識高い系”、なのに……。
杜甫はそんな思いをみんなひっくるめてありのままに詠いあげます。
そこに現れた格調と味わいが世に評価されるのは彼が亡くなってからです。
きょうのまとめ
① 杜甫は若いころからかなりの“意識高い系”だった
② 杜甫は就職活動にはかなり苦しみ、やっとできたと思ったら、人間関係のもつれですぐ辞めた
③ 杜甫は晩年になってからその漢詩にますますすごみが出てきた
あれだけたくさんの落書きからそこはかとなく感じられる中国の人々による親しみ。
日本だとああいったタイプの国民的ヒーローはだれなんでしょう。
その他の世界の偉人ははこちらから
関連記事 >>>> 「世界の偉人一覧」
コメントを残す