富と権力でどんなことも可能だった
平清盛。
実はそんな彼が行ったことの中には現代生活にも通じる偉大な業績もありました。
それが日宋貿易。
ここでは清盛が行った日宋貿易とそれに伴った港や航路の開発について見てみましょう。
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日宋貿易とは
清盛が行った中国との貿易を「日宋貿易」と呼びます。
彼の時代の中国は「宋」という王朝が支配していました。
遣唐使の廃止で中国との国レベルの貿易はなくなりましたが、九州沿岸の商人たちによる私貿易は続いていました。
そんなときに平清盛の政権が確立したのです。
平氏の基盤は西国です。
瀬戸内海周辺のエリアは思うがまま。
太宰府長官でもある清盛は、九州で発着している貿易の経済的メリットもよく知っていました。
そこで太宰府に干渉される九州経由ではなく自分のお膝元である摂津国福原(神戸市兵庫区)を拠点に自由に貿易を行おうとしたのです。
どのように貿易したの?
大々的な貿易を開始するには、よい港と航路が必要でした。
港づくり
清盛は1168年に出家して福原に隠居し、1173年から私財を投じて昔から良港で知られている大輪田泊の大改修に着手。
宋の貿易船が直接港に入れるようにするのが目的でした。
しかし、潮の流れや風や波のために工事は難航します。
清盛は人柱(工事の無事の完成のために生き埋めにされる人)を求める意見には反対し、
お経を書いた石を船に積み、船ごと沈める方法で海を鎮め、港は1175年に完成。
1180年には朝廷の援助も受け、港の整備は一層充実したものになりました。
今の神戸港の西部分に当たるところです。
瀬戸内航路の整備
瀬戸内航路の整備も同時に進められます。
中でも苦労したのが「音戸の瀬戸」。
広島県の呉と倉橋島を隔てる海峡を船が通れるようにするもので、竣工まで10ヶ月を要した難工事でした。
工事が大詰めを迎えた日、清盛は沈みゆく夕日を扇で呼び返し、その日のうちに完成にこぎつけたと言う伝説まで残っています。
また、世界遺産で日本三景の一つ、広島県廿日市市の厳島神社は、平家の氏神として清盛が社殿に海を引き入れる美しい形を作り、航海の安全を祈りました。
何を輸入?何を輸出?
宋銭、羊、じゃこうじか、陶磁器(白磁など)、香料、薬品、織物、絵画、書籍
輸出品目:
金、銀、水銀、真珠、硫黄、杉や松などの木材、漆器、刀剣
金は奥州(現在の福島県、宮城県、岩手県、青森県。大国。)の砂金が平泉から京都に運ばれ、宋に送られました。
のちに輸出された日本の金の話しがマルコ・ポーロに伝えられ、『東方見聞録』の記事となったのです。
宋銭について
輸入品目の中で「宋銭」は日本人の生活に最も大きな影響を与えました。
それまで物々交換だった日本の国内交易が、貨幣を使った経済活動に変わるきっかけになりました。
外国の貨幣を日本国内で使うのは奇妙に思うかも知れません。
でも、現代でも経済が不安定な国では自国通貨よりもドルのほうの信用度が高く、そちらを喜ばれることがありますよね。
もともと日本では末法思想が流行しており、仏具の材料として銅の需要が高まって、宋銭をその材料として輸入していました。
平清盛はこれに目を付け、大量の宋銭を輸入して国内で流通させ、財政的な基盤を作ろうとしたのです。
貿易の効果
瀬戸内航路の整備と兵庫における日宋貿易の展開は、多くのメリットをもたらしました。
公的な効果
清盛は航路の整備を行いながら、瀬戸内海沿岸地域で獲得した荘園には積極的に
・輸送中継地
を設置します。
それらは地域の物資流通の拠点にもなり、地域の経済活動が活性化されました。
そして宋銭の日本国内流通は
・港や航路開発に伴う公共事業の推進
という日本にとって優れた効果をもたらすものでした。
また、書物や工芸品などから高度な学問や知識も入ってきたのです。
平家のメリット
清盛は貿易を通じて、土地や海の整備とともに人を組織しました。
そして、瀬戸内航路の整備に関わる西国の在地領主を組織していくことで、必然的に支配力が強まったのです。
それに宋銭による貨幣経済の始まり、大掛かりな港や海路の開発事業、そして輸入品から平家が莫大な利益を得たことは間違いありません。
この国際貿易は一石二鳥も三鳥もそれ以上さえ狙える事業だったわけです。
おわりに
私たちは貨幣経済が当然の社会に生きています。
大輪田泊は神戸港として、音戸ノ瀬戸は今も呉へとむかう船の航路として役立ち、厳島神社へも美しい海路の氏神をひと目見ようと今でも多くの人が訪れています。
そんな現代につながる事業を1000年もの昔に実行した平清盛。おそるべし、ですね。
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