レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』にまつわる歴史ドラマ

 

今の世では散々に「天才」「天才」ともてはやされ、さも人生楽勝、順風満帆みたいに思われていますが。

レオナルド・ダ・ヴィンチはなかなか世に認められない“おそ咲き”の人でした。

スランプ?世渡り下手?

43才でやっとめぐってきた大チャンス。

逃す手はないですぞ!

レオナルド・ダ・ヴィンチが超絶マジをかけた大作『最後の晩餐ばんさん(夕食)』の完成です!

 

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ヴェロッキオ工房弟子入りの時はあんまりうまい絵を描き、師匠をへこまし、絵描きをやめさせてしまうほど。

鳴り物入りだったのに、10代20代とあまりパッとした作品がありません。

このころの代表作『受胎告知』も、あのころのすごみには遠くおよびません。

やっと大きな仕事をもらったと思ったら途中でほっぽらかしてしまいますし。

そして待ちに待ってやっと来た次の新たな大仕事。

作業にかかりだした年齢はなんと43才

平均寿命30代後半という時代の、です。

レオナルド・ダ・ヴィンチは修道院の食堂を飾るこの大壁画へとありあまる情熱をかたむけるのです。

 

レオナルド・ダ・ヴィンチの画法

レオナルド・ダ・ヴィンチが壁画に使う画法はちょっと変わっています。

テンペラ画法と言います。

ふつうはフレスコ画法です。

ミケランジェロの代表作『天地創造』はまさにそのとおりです。

フレスコ画法は下地が生乾きの間に一気に仕上げなければなりません。

しかし、レオナルド・ダ・ヴィンチはそれができません。

絵を描くのがものすごく遅いんです。

だから、レオナルド・ダ・ヴィンチは王道ではないけれどじっくり描けるテンペラ画法でいくことにしました。

 

『最後の晩餐』ドラマ

最後の晩餐

『最後の晩餐』 出典:Wikipedia

さて、この4年をかけた完成作、そこに描き出されたドラマはいっぱいです。

まず彼から行きましょう。

トマの1本指

この作品はイエス・キリストがユダに裏切られる直前、12人の弟子たちと最後ともにした晩餐のシーンを描いております。

真ん中にいるのがキリスト

そして、そのすぐ右どなりです。

なんだか天に向かって一本指を突っ立てている男がおります。

顔つきといい、キリストにつっかっていっているようにも見受けられます。

彼は弟子のトマといいます。

キリストの復活を聞いても疑っていたほどの人物。

この時はキリストに

「この中に裏切るものが1人います」

と言われ、

「え、1人!?」

という感じで1を天に突っ立てました。

1人女性が?

キリストの左どなりにいる人。

なんだか女性っぽいです。

「マグダラのマリアかな?」という説があります。

マグダラのマリアは元娼婦で、キリストの弟子となり、彼の復活を最初に知った人物です。

ただ、彼女は12大弟子ではなく、ここにいるのは不自然です。

この人物は12大弟子最年少のヨハネでほぼ間違いないでしょう。

ヨハネはこの世の破滅と再生を記した『ヨハネの黙示録』でも知られる人物です。

ナイフ

そして、ヨハネにおっかない顔を近づけている男がおります。

よくその背中を見るとニュッと後ろ手にナイフが。

この人物はペテロ

イエス・キリストの弟子のトップといわれます。

ちょっと短気なので、

「なに、裏切者がいるだぁ!?」

と頭に来ています。

そして、その手前でさりげなくふりかえっている人物、彼がそうです。

ユダ

イスカリオテのユダです。

イエス・キリストを裏切る張本人です。

手には「キリスト密告の褒美としてもらった」銀貨袋をにぎっています。

「こんなところでそんなもんにぎってるわけねーだろ」

とツッコミは入れておきましょう。

 

『最後の晩餐』の歴史

実は、ここからがこの絵に関する最大のドラマかもしれません。

キリストの足もと、なんか変わった装飾がされていて、足が見えないんですけれど、これなぜでしょう。

実はレオナルド・ダ・ヴィンチがねらったものでも何でもありません。

この修道院はナポレオンに攻められた時に馬小屋に使われていたんです。

そして、通路としてこの箇所をぶちぬいてしまったんです。

あれあれです……。

そして、この絵はあと一回戦争の被害を受けております。

第2次世界大戦です。

その時は空爆にさらされました。

が、偶然土嚢どのうなどが積んであり、クッションとなって奇跡的に無事でした。

芸術作品はただ見えるだけじゃないいろんな人間のありさまを描き出しています。

 

きょうのまとめ

この絵はレオナルド・ダ・ヴィンチの生きているころから早くも劣化に苦しんでおりました。

テンペラ画法のまずい面が出てきてしまっているのです。

ただ、レオナルド・ダ・ヴィンチの「不滅伝説」はここから本格的になってゆくのですが。

① 『最後の晩餐』はレオナルド・ダ・ヴィンチが不遇の果てにやっとつかんだ大チャンス

② レオナルド・ダ・ヴィンチは『最後の晩餐』を王道のフレスコ画法ではなく、遅くても描けるテンペラ画法で製作した

③ レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』は歴史ドラマがいっぱい

 
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