タイトルの答えは「摂政」です。
藤原道長といえば摂政や関白になって天皇を操り、
自分たちに都合の良い政治をして富と権力を独占するウハウハの生活を送った男・・・と思われがち。
でも道長は関白になったことはありませんし、摂政になった期間は1年だけ。
その事実、知ってましたか?
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摂関政治とは
天皇が直接政治を行うことを天皇親政と言います。
摂関政治というのは、
「摂政や関白が天皇の後見人になって実際の政務の権力を持つ」
という天皇親政に代わる政治形態のことでした。
摂政・関白の違い
摂政とは、「天皇が幼かったり、女性だったりした場合に代って政治を行う人」のこと。
古くは推古天皇の摂政をした聖徳太子が知られています。
関白は、天皇の成人後も「代わりに政治を行う人」のことです。
藤原氏の摂関政治の始まり
誰もが摂政や関白になれる資格があったわけではありません。
これらの役職に就けるのは天皇家の血筋から選ばれた人だけ。
聖徳太子もそうでした。
しかし、858年文徳天皇の崩御に伴い清和天皇が誕生した時、藤原良房が人臣として初めての摂政となりました。
その後、その養子の基経も天皇家以外で初の関白となったのです。
それ以降は摂政と関白は藤原氏の世襲(地位や職業などを子孫が代々受け継ぐこと)ということになり、長く藤原氏による摂関政治が続きました。
道長が摂政や関白にならない理由
藤原道長が世襲で摂政や関白になることは難しくはなかったはずです。
ところが、彼はすぐに関白に就任しませんでした。
実は道長には考えがあったのです。
道長は左大臣でした。
左大臣には人事決定権があります。
その上に太政大臣という名誉職の位もありましたが、当時は適任者もおらず天皇以下では道長の左大臣が一番上の位(右大臣より左大臣が上位とされていました)。
しかも道長は「内覧」という、天皇に奉る文書や、天皇から発される文書にあらかじめ目を通して気に入らなければストップできる立場にもありました。
人事と文書を握るというかなりの権力をもっていたのです。
比べて摂政・関白は天皇には近くても具体的な権限がありません。
天皇との関係が良くなければ、言うことをきかない天皇を止めることはできないのです。
道長は、ならば肩書だけの「関白」よりも肩書は少し低くとも実質的な権利を手中に収められる「左大臣と内覧」のほうが有利に政治を進められると判断。
そして彼は天皇家と外戚関係を結んで孫が天皇になる日を待ちました。
なぜなら、孫である血の繋がった天皇ならばおじいちゃんの意のままに操ることができるため、たとえ摂政が強い権限を持たなくても好きに政治を行うことができるからです。
外戚関係
血の繋がらない天皇であればそれなりの信頼関係がなければ成り立たない摂関政治ですが、
藤原氏の血の入った者が天皇になれば、話しは別。
道長は孫を天皇にさせる計画を実行に移します。
一家立三后の達成
道長は自分の家系の繁栄のためには手段を選びません。
自分の3人の娘を次々と天皇の后にさせてしまいました。
999年、長女彰子を一条天皇のもとに女御として入内させ、翌年には既に定子という后がいるにも関わらずゴリ押しで彰子も后にするという、前例のない一帝二后を強行しました。
そして次の三条天皇には妍子を、そしてその次の後一条天皇の后として威子を嫁がせ、ついに一家で三人の娘を天皇の后とさせる「一家立三后」を達成。
威子が后となったその宴席で道長はその喜びのあまり、あの有名な
この世をば わが世とぞおもふ 望月の 欠けたることも なしと思へば
を詠んだのです。
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3人の歴代天皇と道長の関係
一条天皇の在位中、道長は内覧でした。
一条天皇は絶妙なバランス感覚の持ち主。
道長との距離を保ちながら関係を悪化させることなく無難に道長をやり過ごします。
三条天皇の時の道長もやはり内覧でした。
三条天皇は道長とはあまり良い関係ではなく、道長は再三譲位を迫りますが、それを断り続け最終的には健康上の理由でやむを得ず天皇を退きました。
そして後一条天皇。
道長はついに摂政となります。
なぜならこの後一条天皇こそ一条天皇と道長の娘彰子との間の子供、つまり待ちに待った道長の孫だったのです。
まだ11歳の孫の後一条天皇のため摂政に1年就いた道長。
残念ながらその後健康状態が思わしくなく、息子の頼通に摂政の座を譲ると彼が最高権力を継承しました。
おわりに
派手な戦も起きず、朝廷の中における心理戦やネゴ、養子や婚姻で戦うこの藤原平安時代は理解するには少しやっかいです。
誰も討ち死にしない一見甘い世界のような平安王朝ですが、水面下は結構思惑がうごめいていたんですね。
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