兵庫県神戸市須磨区にある古刹・須磨寺。
この寺は、平敦盛の菩提を弔う寺です。
ここには、寺宝とされる「青葉の笛(小枝の笛とも呼ばれる)」が守られ続けています。
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平敦盛でいっぱいの寺
須磨寺は、源平合戦で平家と源氏が戦った「一ノ谷の戦い」があった地に建つ寺院です。
須磨寺自体は、一ノ谷の戦いよりもさらに約200年ほど遡った886年に建立されました。
この寺の背後にそびえるのが鉄拐山。
義経が少数精鋭の部隊をひきいて、平家軍を奇襲した「ひよどり越え」の逆落としを敢行し、一ノ谷の戦いに勝利した場所と言われています。
その合戦でわずか16歳だった平敦盛は、源氏方の武将・熊谷直実によって討取られてしまうのです。
その悲劇の場所にあった寺院として、須磨寺は平敦盛にまつわる品々を寺宝として守り続けてきました。
<須磨寺>
敦盛の青葉の笛(小枝の笛)
須磨寺に残された敦盛の遺品とされる物の中で、最も知られるのが「青葉の笛」です。
須磨寺の寺宝「青葉の笛」
青葉の笛とは、一ノ谷の戦いで敦盛が熊谷直実に討たれたときに彼が身に付けていたと伝えられる、敦盛愛用の笛です。
敦盛の死後、800年以上にわたり須磨寺によって守られ続けてきました。
この笛は、敦盛の祖父・平忠盛が鳥羽院から拝領し、父経盛がそれを受け継いで笛の名手であった息子・敦盛に渡った由緒ある笛。
『平家物語』では小枝の笛と呼ばれています。
実は須磨寺には青葉の笛に加え、細身の高麗笛がもう一本伝わっており、青葉の笛と共に2本が敦盛遺愛の笛なのだそうです。
すでに朽ちてしまったこの笛は美しい音色を発することはないでしょう。
壊れてしまった笛を鑑賞するとき、敦盛の儚い生涯を思いやらずにはいられません。
小枝の笛? それとも青葉の笛?
須磨寺では「青葉の笛」と紹介されているこの笛は、鳥羽院から授かった時点では「小枝の笛」と呼ばれていました。
しかし、その後の敦盛を題材とした謡曲では、青葉の笛と呼ばれています。
その理由については諸説あるそうですが、能の舞台での効果を狙って敦盛の若くして散った命をしのび、作者の世阿弥が青葉と名付けたとする解釈があります。
須磨寺においては、空海が唐へ留学していた時に作った笛をのちに嵯峨天皇に献上し、天皇が青葉の笛と名付けて平家に渡ったとも伝わっています。
笛の真偽についても議論の余地があるようですが、笛を観る者の側としては、この青葉の笛が小枝の笛と同一のものであり、物語や舞台で演じられる哀しくも美しい物語の証しなのだと思いたいものです。
青葉の笛以外にも
「源平ゆかりの古刹」として知られる須磨寺には、敦盛の菩提を弔うために建立された墓所(首塚)があり、青葉の笛以外にも敦盛や源平の戦いに関連する品々が保存されています。
須磨寺はまさに平敦盛を偲ぶ寺です。
平敦盛のもうひとつの宝・敦盛着用の兜と鎧
須磨寺の宝物館には、敦盛着用と伝えられる兜と鎧があります。
年月を経た古めかしい鎧兜ですが、その大きさを見れば、成人男子用の鎧兜と比べて一回り小さいことに気づくかも知れません。
平敦盛が一ノ谷の戦いで当時にまだ16歳だったことを考えると、その鎧兜こそ彼の物だったのだろうと思わせられ、それらを身に付けた敦盛の姿を想像せずにはいられません。
実際には、鎧の形式から敦盛の時代よりも後のものではないかという説もあるようですが。
敦盛公首洗いの池
蓮の浮かぶこの寺の池は、平敦盛が討取られた後、首実検のために彼の首が洗い清められたとされる池です。
義経腰掛けの松
敦盛の首実検の際、源義経が腰掛けて首と笛を実検したと呼ばれる松の木が、枯れてしまってはいますが、一部残っています。
弁慶の鐘
一ノ谷の戦いの折、弁慶が山田庄安養寺からこの鐘を長刀の先に掛けて担いで持ってきたという鐘があります。
運んできた鐘は、合戦の時の陣の鐘の代用にしたのだそうです。
現在、旧鐘は宝物館に収められていますが、複製が境内にあり、除夜の鐘として使われています。
平敦盛像
宝物館にあるこの像は、平敦盛の霊を慰めるために、彼を討取った熊谷直実自身が彫ったと伝えられています。
若々しく凜々しい表情の武者が腰を掛けている像は、やはり平敦盛が若くして命を失ったことを再確認させられます。
一ノ谷合戦屏風絵
寺にある合戦屏風絵には、源義経が一ノ谷の戦いで行った奇襲攻撃であるひよどり越えも描かれています。
それと共にあの『平家物語』で有名な、源氏の武将熊谷直実が海の中を船に向かっていた平敦盛を波打ち際から呼び止めるシーンを描かれたものもあります。
敦盛肖像画など
その他にも有名画家たちによって描かれた若武者姿の敦盛の肖像画や錦絵などが残されています。
きょうのまとめ
今回は、神戸市にある須磨寺が守る平敦盛の笛、そしてゆかりの品々についてご紹介いたしました。
簡単にまとめると
① 神戸市には平敦盛を弔う首塚を持ち、源平合戦に関連する宝物を多く持つ須磨寺がある
② 『平家物語』や謡曲などで知られる平敦盛愛用の青葉の笛、もしくは小枝の笛だと考えられる笛は須磨寺に現存
平敦盛に思いを馳せるのに、この須磨寺ほど最適の場所はありませんね。
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