リチャード1世vsサラディン。
時は12世紀末におけるヨーロッパ、アラブ両世界を代表する大英雄同士の激突です。
かたや、戦場にほこりをかける勇敢な“騎士道の花”。
かたや、恐ろしさと寛大さをあわせもつ“アラブの奇跡”。
両軍、その死力をつくした戦いの果てに待ち受けているものとは。
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第3次十字軍の悲願
第3次十字軍、その目標は聖地エルサレムをイスラム教徒から奪い返すこと。
キリストが亡くなって1000年あまり、これは全ヨーロッパによってたくされた悲願です。
アッコンの暗雲
1191年6月、リチャード1世率いるイギリス軍がついにアラブ側との本格的な戦いを始めました。
彼らの目標はアッコン。
リチャード1世はここでほかの十字軍戦力と合流。
ほどなくアッコンは力つきました。
しかし、この時トラブルが起こります。
リチャード1世は十字軍のほかの代表たちと仲間割れをおこし、彼らは次々と本国へ帰ってしまいます。
そして残ったのはリチャード1世の軍だけ。
この先、待ち受けているのは“シリアの稲妻”と恐れられるアラブ1の英雄サラディンなのです。
砂漠にひそむオオカミ、サラディン
リチャード1世はアッコンで捕らえた人質解放のための身代金をサラディンに求めます。
しかし、サラディンからはいつまで経っても支払われません。
そこでリチャード1世はなんと人質をみんな殺してしまいます。
その数、2700人。
そして、リチャード1世の軍はそこから聖地エルサレムを目指さず、南に向かいます。
この少ない軍勢で聖地エルサレムを占領するのはかなり難しいです。
そのため、ほかの拠点をまずおさえておこう、というねらいです。
サラディンはこれを見すまし、追撃を始めました。
そして、リチャード1世の軍にピッタリ横付けすると、チャンスを見て軽騎兵隊(身軽な装備の騎兵隊)で敵の最後尾をおそいます。
で、敵が反撃してくれば素早く逃げる。
「これを繰り返し、相手が砂漠の行軍で疲れ果てたところを食いついてやろう」
まるでオオカミが獲物をねらう時の作戦です。
アルスフの戦い
リチャード1世はこれにつられることはありません。
しかし、最後尾の部隊がついにたえ切れなくなりました。
いけません。
敵の誘いです。
このままでは前を行くリチャード1世の本軍から切り離されてしまいます。
これに対し、リチャード1世はとっさの行動をとります。
敵のおとり部隊に対し、本軍騎馬突撃!
しかし、敵が逃げようとする森にまでは入りません。
そこには必ずやサラディン本軍がひそみ、わなにかかるのを待っているのです。
リチャード1世の軍は森の外にいるおとり部隊だけきっちりとたおしてゆきます。
敵のこの鮮やかな戦いぶりにサラディンはさとりました。
「これ以上戦っても自分たちの軍の被害が増えるだけ」
そう心に決めるとサラディンはおしげもなく引き上げてゆきました。
1191年9月7日アルスフの戦いです。
サラディンの奇策
リチャード`世のねらいは南にあるアラブ側都市アスカロンです。
しかし、サラディンはそれを読んでいました。
なんと、アスカロンを先に破壊し、打ち捨てさせます。
敵に補給地を造らせない。
焦土戦術です。
リチャード1世はこれを受け、もはや目標を変えます。
聖地エルサレムです。
聖地エルサレムの奇跡
聖地エルサレムをめぐる両軍のかけひきは表向き一進一退です。
しかし、本当に分が悪いのはリチャード1世側です。
リチャード1世の軍はかぎられた軍勢で聖地エルサレムの守りを突破しないといけません。
しかも、遠征軍には「いつになったら勝てるんだ」「ヨーロッパに帰れるんだ」と不満がうずまいております。
それどころか、イギリス本国にいる弟のジョンがフランス王フィリップ2世などとつるみ、王位を奪ってやろうと陰謀を働いていることが伝わってきます。
ここでリチャード1世の思わぬ味方になった人がいます。
なんと、宿敵のサラディンです。
サラディンは
●キリスト教の聖地をはずかしめないこと
を約束し、リチャード1世と和平を取り結びます。
サラディンのイスラム側はこれまで、それこそリチャード1世らの手にもより大変ひどい目にあわされ続けております。
あえて、それを許す、と。
リチャード1世はあらためて相手のふところの深さに感じ入りました。
またサラディンもそのほこり高い騎士としてのあり様を尊敬しました。
こうして1年あまりにわたって続いた両英雄の激突はついに終わる時をむかえました。
きょうのまとめ
① アルスフの戦いにおいてリチャード1世はサラディンの策を見破り、勝利した
② サラディンはリチャード1世の補給を断つために焦土作戦を使った
③ リチャード1世とサラディンは死闘の果てにたがいの実力を認め合った
その後、リチャード1世は本国へと帰り着き、弟ジョンの企みをねじ伏せます。
そして、となり合うライバル、フランスとの激闘に身をささげてゆきます。
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