孫文のかかげた三民主義 その内容や歴史を解説

 

19世紀に誕生した中国の革命家、孫文

清王朝打倒を目標に革命活動を行うなかで、彼は「三民主義」を提唱し、

1911年に起きた辛亥革命以後は、それが中華民国の政治理念となりました。

今回はそんな三民主義について解説していきます。

 

三民主義とは?

孫文

出典:Wikipedia

三民主義とは何か、先に言ってしまうと

「民族の独立・民権の伸張・民生の安定」の三原則からなる

孫文が唱えた政治理論です。

それぞれについて、以下で詳しく見ていきましょう。

民族の独立

「民族の独立」「民主主義」のことを意味しています。

孫文は当時、中国で別々の民族として存在していた

漢民族、満州人、モンゴル人などをひとつに統一し、その上での独立を目指していました。

そして1912年1月に行われた中華民国臨時大統領就任宣言の場では、

「漢・満・蒙・回・蔵の諸民族を合わせて一人にする。これを民族の統一とする。」

と述べており、「五族共和」の理念を表明しました。

それまでの中華帝国内にあったそれぞれの民族を、「中華民族」というひとつの民族として

統一させることが、孫文の目指す民主主義のかたちでした。

民権の伸張

「民権の伸張」「民権主義」のことを意味しています。

民権主義とは、個人の基本的人権のことではなく、ひとつの国家を創り上げるために必要な

国民の権利としての民権、という風に捉えることができます。

孫文は、当時の中国人たちの状態をすぐにバラバラになってしまう砂のような民だ、

とたとえていて、その理由として個人に自由が多すぎるからだと考えていました。

そして中国人には自由が多すぎるからこそ、革命で皆がひとつになることを意識し、

中華民族としての自覚を芽生えさせる必要があると考えていました。

この考えについて、孫文が残している言葉があります。

「個人があまり自由を得すぎてはいけないが、国家は完全な自由を得なくてはならない。

国家が自由に行動できるようになれば、中国は強国になれるのだ。

このようになるためには、みんなが自由を犠牲にする必要がある。」

関連記事 >>>> 「中国革命の父孫文 | 冷静と情熱を内包した名言たち」

民生の安定

「民生の安定」「民生主義」のことを意味しています。

民生主義は「地権の平等」のことを表していて、土地の所有において

貧富の差の解消を目指し、「個人のもの」ではなく「みんなのもの」

という意識を強調して、国民の生活の全体が安定することを目標にしていました。

ひとつ前にご紹介した民権主義と同じく、「個」という自由を制限するものです。

これら三つの理念をかかげ、孫文は中国を中央集権的で近代的な

立憲国家にしようと考えていたのです。

 

三民主義の背景

三民主義の誕生

孫文によって唱えられた三民主義は、1905年7月に東京で結成された中国同盟会の

運動方針としてかかげられ、その後の中国革命の重要な指導理念となりました。

この孫文の三民主義はもともと、西洋の政治的な思想を中国に適合するかたちでつくられました。

「民族主義」は欧米の政治的進化、

「民権主義」はフランスの人民主権論、

「民生主義」はアメリカの社会学説である「地主による土地独占の是正」を参考にしています。

これらの西洋的な民主主義を基に、清王朝に続いていた封建社会と、帝国主義の列強たちによる

半植民地支配を打倒し、新たな中国の社会を創り上げるための独自のスローガンとなりました。

三民主義の発展

辛亥革命が失敗に終わると、孫文は中国同盟会を中華革命党として組織を発展させます。

さらに中国国民党へと発展させると、三民主義は従来のかたちから「連ソ・容共・工農扶助」

へと変わり、新三民主義としてそれが党の政策方針となりました。

その後中国国民党と共産党の提携による第一次国共合作が成立すると、

1924年1月、広州で中国国民党一全大会が開かれ、そこで新たなスローガンとして発表されます。

「連ソ・容共・工農扶助」とは、

「ソ連と連帯し、共産主義を認め、労働者や農民の戦いを助ける」という新たな三大政策です。

これによって、ソ連の共産党を中心とした組織と連携を取り、

中国の共産党員が党籍を持ったまま国民党に加わることが認められ、

労働者や農民たちを支援する、といったことが目指されました。

 

きょうのまとめ

今回は中国の革命家、孫文が唱えた「三民主義」について、

その内容や誕生した背景、そしてその後の発展に関してご紹介しました。

いかがでしたでしょうか。

最後に、三民主義について簡単にまとめると

① 孫文が革命活動をするうえでかかげた政治理論のことで、「民族主義・民権主義・民生主義」のことである

② 「民族主義」は中国各地の民族の統一、「民権主義」は個人の自由ではなく国家を創るために与えられる国民の権利、「民生主義」は土地所有の平等化により貧富の差をなくすことを目指していた

③ 清朝の封建社会や帝国主義列強を打倒し、中国を中央集権の近代的な立憲国家にするために西洋の政治思想を参考につくられた

④ 中国同盟会から中国国民党に組織が発展すると、「連ソ・容共・工農扶助」からなる「新三民主義」へと発展した

偉人と呼ばれる、私たちからは縁遠く思われる人物も

その思想や信念について知ることで、その人物像が輪郭を帯びてきます。

当サイトには他にも孫文に関する記事がありますので、

興味を持たれた方がいましたら、お時間の許すときにでも立ち寄ってみて下さい。

 

孫文の年表を含む【完全版まとめ】記事はこちらをどうぞ。
関連記事 >>>> 「孫文とはどんな人物?簡単に説明【完全版まとめ】」

 










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