清のある歴史学者は彼のことをこう評価しました。
「●清くかしこい面と
●強く度胸のある風と
●盗賊の性格
をあわせ持つ」
その人物とはだれあろう、300年帝国明を開いた朱元璋です。
彼の似顔絵も
●キリッとした聖人君主風なものと
●アゴのあたりのひん曲がった見るからに性格の悪そうなのと
両極端。
本当のところはどうだったと思いますか。
そして、そうなった理由とは。
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朱元璋の性格を表すエピソード
朱元璋は「いい人」なのか「悪い人」なのか、彼にまつわる歴史的事実を見ていくと実に両極端です。
いい人エピソード
① 朱元璋を引き立ててくれた軍閥のリーダー郭子興という人がいます。
郭子興が権力闘争に敗れ、ほうほうのていで朱元璋をたよってきたことがありました。
その時、朱元璋は郭子興をむかえいれ、自分の兵権をゆずりました。
② 朱元璋軍が和州を落としました。
その時、朱元璋軍の家来が和州の女性たちをおそいます。
朱元璋はそれを知り、家来たちにこう厳しく命じました。
朱元璋軍はとてもルールが厳しいです。
破ったら身内でも殺されかねません。
悪い人エピソード
① 天下統一後、ちょっとしたことでも密告させる大変な警察国家を造ってしまいました
② 天下統一後、今まで支えてくれた家来とその一族をなにかれと言いがかりをつけていっぱい殺しました(※)。
知識人もジャマになると思っていっぱい殺しました。
これらをあわせると犠牲者は4万人と言われます。
(※)無実の人たちをかなりいっぱいふくみました。明を造るために朱元璋のもとで働いた有力な家来のほぼ全員が殺されました。
朱元璋の生い立ち
14世紀の危機
朱元璋の性格を知るには彼の人生をふりかえらなければなりません。
彼が生きたのは14世紀。
今、世界史では「14世紀の危機」と言われております。
世界的に気候が寒くなり、深刻な不作などを広大な範囲にもたらしました。
やはり世界中で恐怖の死病ペストが猛威をふるい、ヨーロッパでは全人口の3分の1~2の人々が亡くなりました。
日本でも鎌倉幕府の支配がゆらぎ、長い南北朝の争乱へと移ってゆきます。
世界的乱世です。
中国大陸もこれはまったく変わりありませんでした。
あまりに過酷すぎる身の上
朱元璋はものすごく貧しい農民の出身です。
元朝モンゴル人や大地主たちによるしぼり取り。
しかも記録的大不作。
疫病の大流行。
朱元璋の家族のほとんどは彼が若い時に死に絶えました。
乱世に軍人として最底辺から頭角を表しつつ、行く先々で上司たちから受けた自分勝手な理由による仲間外れ、部下から受けた逆ギレ裏切り(※)、……。
(※)命のとり合いの世界で、です。
飢(う)えた化け物
朱元璋は大変優秀なリーダー。
そのためいつも表向き冷静沈着、公平で、度胸もあります。
しかし、こんな環境を幼いころからずっとやっていたらどうなるでしょう。
朱元璋は生きることに徹底的にシビアです。
その表向きの仮面とは裏腹に、中身はおそろしい化け物に成長しておりました。
彼にとって「いい人の仮面」も「悪い人の仮面」もすべては彼の目的を達成するためのシビアすぎるその時々の判断でしかありません。
彼は“生きることに飢(う)えていた”のです。
親族を愛する
朱元璋は晩年になるほど親族を大事にしてゆきます。
なぜなのかは、彼の生い立ちをふりかえってください。
彼は若いころに親族のほとんどを亡くしてしまっております。
ここでもやはり心の“飢え”です。
失ったものを取り戻そうとしているのです。
そして、彼らの行く末にジャマになる者はだれであろうと排除すべき対象なのです。
もはや朱元璋にためらいはありません。
きょうのまとめ
私は朱元璋という人間を見ていると豊臣秀吉を思い起こしてしまいます。
同じくとても貧しい生い立ち。
そして一代で最高権力者まで成り上がりました。
ただ、権力を得た途端のおどろくほどの様変わり。
朱元璋は亡くなる寸前、自分の跡を託(たく)した孫にこう言います。
「朱棣(しゅてい。後の永楽帝)には気を付けろ」
秀吉も死の間際、徳川家康に
「わが子秀頼をたのむ」
とくどいようにその後見をお願いしておりました。
しかし、あまりに皮肉なものです。
彼らの死後、残された者たちはその朱棣、家康に反逆され、殺され、政権を奪い取られてしまいます。
朱元璋は先を見通せ、そのための“実行”も粛々とできる人間でした。
ただ、なおも足りなかった、のですね。
① 朱元璋の生きたのは世界的に波乱の起こった14世紀
② 朱元璋はものすごい貧しい身の上から一代で出世したが、そのプロセスが壮絶だった
③ 朱元璋は統一後に“悪魔”のようなことをいっぱいしでかしたが、すべては“生きるため”“親族のため”。しかし、彼の死後にははかなさがつきまとう。
この重苦しさもまた歴史の一面です。
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