プラトンのイデア論とは…真実はイメージの中にある?

 

紀元前4世紀、古代ギリシャで活躍した哲学者の一人、

プラトン

彼は西洋哲学の核を担った存在ともいわれ、現代に与える影響力も決して少なくありません。

例えばプラトンの思考の中心となった「イデア論」と呼ばれるものがあります。

現代でも企画を考えるときなどに「アイディアを練る」などとよくいうでしょう。

そのアイディアの語源になっているのはプラトンのイデア論なのです。

アイディアという言葉のニュアンスからもなんとなく、イデア論は思考に関するものなのかな?と感じることができます。

しかしイデア論を説明しようとなると、一言二言ではとても済ませられません。

今回はそんなプラトンのイデア論について、わかりやすく解説していきましょう。

 

イデア論とは?

現実はイメージの中の真実の投影

プラトンのイデア論は、一言でいうと

「真実は人間のイメージの中にあって、現実で見えているものはそのイメージの投影でしかない」

というもの。

例を挙げると、野球ボールとバスケットボールは大きさも材質もまったく違います。

しかしどちらを見ても、人はそれをボールだと認識できるでしょう。

それは人間が「ボールはこういうものだ」というイメージを持っているからです。

実在している野球ボールやバスケットボールは、ボールというイメージがなければ布やゴムの塊でしかありません。

こういったことから、プラトンはボールというイメージを真実の世界…つまりイデア界に存在しているものとしました。

そして現実世界の布やゴムの塊がボールに見えるのは、イデア界の真実がそこに投影されているから…としたのです。

洞窟から出たことがない者は壁に映った影を真実だと思い込む

プラトンがイデア論を説明したもので有名なのが、洞窟に閉じ込められた囚人の例えです。

生まれたときから洞窟の中に閉じ込められていた囚人は、外の世界を見たことがありません。

外から光が差し込んで来て、物の影が映されれば、囚人はその影の様子を外の世界の真実だと思い込むでしょう。

しかし外の世界へ出てみると、影で見ていた世界とはまったく違う世界が広がっています。

プラトンはこの例を用いて、我々人間が現実で目にしているのは、洞窟の中で囚人が見ている影のようなものだと説いたのです。

 

どうしてイデア論へ行き着いたのか?

それではプラトンはどのようにイデア論へ行き着いたのでしょうか。

相対主義への疑問から

そもそもプラトンがイデア論に行き着いたのは、当時古代ギリシャの哲学界では主流となっていた相対主義に疑問を抱いたところからでした。

相対主義というのは、「国や社会の決まりによって善悪の基準は変わるから、本当の善悪など存在しない」という価値観のこと。

現代でいうと、日本では飲酒運転は絶対にダメですが、アメリカだと少し飲むぐらいなら許されます。

日本ではダメだけど、よその国へ行けばOKとされる…つまりそれは国の価値観で決められているだけで、本当の善悪など存在しない…ということです。

プラトンはこれに対して、「ならどうして、人間は善悪に対して共通認識を持っているのか」と疑問を抱きました。

つまり飲酒運転の例で考えると「法律的にOKだとしても、飲酒運転があまり良くないってことは、みんなわかってるよね?それでも本当の善悪は存在しないといえるの?」と考えたのです。

そして国や社会の決まりで善悪が別れたとしても、人のイメージの中にある真実の世界に本当の善悪は存在している…という結論に至ったのです。

人間に共通認識があるのは輪廻転生の影響?

プラトンは人のイメージに共通認識があるのは、生まれ変わりの段階で、みんなが天界で真実の世界を目にしているからだと考えました。

法律で裁かれないにしても、本当の善悪に対する共通認識を私たちはたしかに持っています。

人の悪口ばかりいっている人を見ると気分が悪くなるし、電車でおばあさんに席を譲ることに報酬が出なくても、それが良いことだとわかるでしょう。

しかし何が悪いことで何が良いことだと、いちいち教わるものではありませんよね。

プラトンいわく、生きている人は覚えていないだけで、天界でみんな同じ経験をしているから、同じイメージを持っているというのです。

これに関しては、実際に天界に行った人を知らないので、なんともいえませんが…。

プラトンが生きた少し前の時代に、ピタゴラスという哲学者がいます。

ピタゴラスは「肉体が死んでも魂は何千年に渡って、生まれ変わりを続ける」という輪廻転生りんねてんせいの思想を支持していました。

そしてプラトンはピタゴラスの思想に影響を受けたうちの一人です。

きっと輪廻転生の思想から、天界でみんなが同じものを見ているという考えに至ったのでしょうね。

 

きょうのまとめ

プラトンのイデア論は、現代に残るアイディアという言葉のニュアンス通り、人の思考に関するものでした。

そしてイデア論は一概に昔の人の考え方だともいえません。

対面する人の悪い噂を聞けば、どんな人かわからなくてもなんとなく悪い人に見えてしまう…といったことはないでしょうか。

これは完全に自分の認識によるものの見え方です。

イメージが現実の見え方に影響を及ぼしているのは、紛れもない真実なのです。

最後に今回の内容をまとめてみましょう。

① イデア論とは、「現実に見えているものはイメージの中の真実の投影でしかない」という考え方

② プラトンは「国や社会のルールによって善悪の基準は変わる」という相対主義に疑問を持った

③ 真実の世界・イデア界は天界に存在している?

たしかに人間は誰しも教わらずとも善悪の概念を持っているし、プラトンのイデア論は腑に落ちる部分もあります。

しかしどうして共通認識を持っているかについては、単に宗教的な話になってしまって、あまり論理的ではありません。

現代風に考えると、長い歴史の中でご先祖様が「こうすると良い結果になる」といった経験を積み、DNAにその概念が刻み込まれている…といったところでしょうか。

いずれにしても実態のない思考の話である以上、解明されるのはまだまだ先になりそうです…。

 

プラトンの年表を含む【完全版まとめ】記事はこちらをどうぞ。
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