歩いた総距離はなんと地球一周分と言われております。
55才から17年の歳月、
日本各地津々浦々をその足で歩き、
日本地図を完成させた伊能忠敬。
しかも、
その地図は現在最新のものと見比べてもほとんど誤差がありません。
では、
そんな忠敬たちは実地でどのような測量方法を執り行ったのでしょうか?
今回はそのあたりのナマの様子を紹介させていただきます。
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伊能忠敬による測量の基本①歩測
伊能忠敬の日本列島測量調査は全部で10回に区分けされます。
まず、第一次測量は蝦夷地(現在の北海道)であります。
付き従うのは
・弟子2人
・下男2人
・測量器具を運ぶ人足3人
・馬2頭
でありました。
この時に使用された観測方法が
”歩測”
です。
歩く幅が70cmになるように訓練し、
複数の人間の歩数の平均値から距離を割り出していく、
というものです。
毎日40kmの移動。
蝦夷地滞在は117日間。
帰宅後は測量データをもとに3週間をかけて地図を完成させたといわれております。
伊能忠敬による測量の基本②”間縄”
翌年、第2次測量は伊豆から東日本の太平洋沿岸を対象としました。
この時”歩測”は使われませんでした。
そのかわりに、
間縄
と呼ばれる道具を使用いたします。
間縄とは、
1間(けん。≒180cm)ごとに印の付いた長い縄です。
ただ、このやり方でも、
海岸線が複雑に入り組んだ場所が多かったり、
断崖絶壁に縄を張らなければならなかったり、
と、苦労は絶えなかったようです。
この第2次測量に費やした日数は230日間です。
伊能忠敬らが使用した測量道具とは?
次に、伊能忠敬らが測量に実際使用した道具を紹介してまいります。
もちろん、今のように人工衛星があれば一発なのですが、
そうは時代が行きません。
むしろ、そういった”ない”ところからこそ先人たちは様々な創意工夫を生み、
また、それが醍醐味だったのかもしれません。
鉄鎖(てっさ)
一定の長さの鉄の鉤を長くつなぎ連ねたものです。
もちろん、長さを測るのにつかわれました。
“間縄”より劣化がしにくいです。
杖先磁石
杖の一番頭の部分に方位磁石を付けております。
梵天
長い竹の竿の一番頭に白布を短冊状にしたものを束にしてつけております。
いわゆる神社で神主さんが振る”御幣”の大型版みたいなものです。
測量のポイントとなる場所に”目印”として立てられました。
量程車
手押し車のような見た目です。
中身はたくさんの歯車が複雑に噛み合っております。
実際に押すと、
進んだ距離だけ正確な距離をはじき出してくれます。
しかし、道路は今のように舗装されてはおらず、
しかも、道なき場所へも多々踏み込んでいかねばならず、
使用には相当の制限があったでしょう。
象限儀、半円方位盤
いずれも分度器のような形をしております。
これで、坂や山の傾きを測ります。
伊能忠敬らが行ったさまざまな測量テクニック
次に伊能忠敬らが行ったさまざまな測量の”技”を紹介いたします。
導線法
たとえば、
海岸線などは入り組んだりしております。
すると、ポイントポイントとなる点にまず梵天をそれぞれ立てます。
そして、その間を間縄や鉄鎖などで距離を測り、
また、方位磁石で角度を測ります。
それをつなぎ合わせて、海岸線などを正確に描写してゆきます。
交会法
「導線法」だけではどうしても、誤差が生じ、しかもそれが積み重なるとやがては大きなものにふくれあがってしまいます。
伊能らはその誤差をなくすために並行して
「交会法」
というのを採用しました。
たとえば、先の海岸線を測りたかったとしましょう。
今度はある目印、たとえばその海岸にほど近い「大きな寺門」を起点といたします。
ここから海岸線に立てておいたそれぞれの梵天との距離、角度を測るとどうですか。
横ぎり法
岩場の多い岬の先端などはどれだけ努力しても測量は難しいもの。
そこでやむなく使われたのが
「横ぎり法」
です。
岬の付け根から測りやすい横ぎりルートまで距離と角度を測ります。
こうして手間暇はかかるけれども、確実な観測方法を駆使し、重ねて、あの類稀な正確さを生み出したのですね。
きょうのまとめ
いかがだったでしょうか。
正直私には
想像するだけで気の遠くなるような事業です。
彼らは何を思い、継続していったのでしょうか。
壮大で気まぐれな自然を相手にし、しかもお互い人間同士でやっているのですから、うまくいかないことは多々あったようです。
① 伊能忠敬の日本測量において距離を測る基本として”歩測”と”間縄”使用などを行った
② 伊能忠敬の日本測量において使用された道具は”間縄””鉄鎖””杖先磁石””梵天”などといったごく基本的なものにほぼ限られていた
③ 伊能忠敬らは「導線法」「交会法」「横ぎり法」などを駆使して、誤差のきわめて少ない測量を重ねていった
そんな過去の人々の思いを思う。
時が違えどそこには同じ人間としての心があったのですから。
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