同じコンキスタドール(征服者)でもピサロやバルボア、コロンブスなどとはひと味ちがいます。
三国志でいえば、曹操と董卓、呂布、袁術などを比べるようなものです。
ただのヤンチャではありません。
メチャクチャ練れているんです。
ヨーロッパ版“乱世の奸雄(ずるがしこい英雄)”。
アメリカ大陸最強アステカ帝国を、たった2年で制圧したエルナン・コルテスの名言(巧言?)集です。
エルナン・コルテス名言(巧言?)2選
人生にはまず行動し
社会人になれば、まずたいがい1発目に教えられる格言があります。
“ほうれんそう”です。
「報告」「連絡」「相談」。
特に新入りなのですから、未熟なまま独断で行動してしまっては周りにどんな迷惑がかかるかしれません。
だから、「おや?」と思ったらまず「報告」「連絡」「相談」。
しかし、エルナン・コルテスはひと味ちがいます。
あまりに優秀で、独立心が盛ん。
ディエゴ・ベラスケスというコンキスタドールの先輩がおりました。
こいつも相当にくせ者。
超ブラック労働などでいっぱい減ってしまったキューバの現地人に替わる労働力として黒人奴隷の輸入を認めた人です
(今はキューバ人といえば黒人というイメージですが、こういう由来です)。
コルテスはベラスケスのもとでその有能さを発揮し、“よい部下”としてしっかり働いていたのです。
が……。
コルテスはメキシコという新たな冒険地を求め、征服の旅に出ようとします。
ところが、ベラスケスは部下たちから
「彼を野放しにしたら取り返しのつかないことになりますよ」
と忠告され、不安になります。
コルテスは“わかる”男ですから、ベラスケスに何の「報告」もなしに、ある早朝、いきなり軍団を引き連れてメキシコへと出航します。
「やられた」と思ったでしょう。
ベラスケスは大急ぎでコルテスの船を走って追いかけ、呼び止めます。
そこでコルテスはさりげなく、船から降りてあの名言。
「人生にはまず行動し、相談は後に、という瞬間があるのです。」
こうして、強引に再出航(見逃すんだ……。ベラスケスは優柔不断・中途半端な袁紹っぽいですね)。
コルテスはメキシコでアステカ帝国の征服事業をたくみに推し進めてゆきます。
すると、ベラスケスは不安になってくるのです。
「あいつはオレの言うことを全然聞かず、ついに本性むき出しとなって強大になり、オレをないがしろにしようとしている。」
そこで、ベラスケスは本国スペインに無断で、コルテス征伐軍を興します。
その司令官に任じられたのがナルバエス。
大軍でコルテス打倒におしかけます。
コルテス絶体絶命。
が、コルテスは自分の強みを存分に生かし、相手の弱点をたくみにつきます。
コルテスはメキシコで手に入れた大量の黄金があります。
ナルバエスの家来たちを裏から買収。
さらに、不意を突いてナルバエス本陣を夜襲。
ナルバエスは目を突かれ、難なく生け捕りに。
そして、コルテスの前に引っ立てられ、一言。
「コルテス大尉。君が私に勝ち、私を捕らえた、ということは素晴らしい軍事行動だ」
コルテスはこう言い返します。
君との戦いは
「新イスパニア(メキシコ)で私がおこなった軍事行動のうちでは、こんなことは子どもの遊びと同じだ」
当時南北アメリカ大陸で軍事最強とも思われるアステカ帝国をごくわずかな兵数で征服しようとしていたのです。
はかりごと深く、がまん強く、勇気があり、行動が素早く、残酷で、言葉たくみで、人望に優れたエルナン・コルテスからしたら、ナルバエスでは相手になりませんでした。
きょうのまとめ
アステカ帝国を倒すために、アステカにいやいや従っている部族を順番に手なずけてったりしています。
あなたがタチの悪いブラック先輩やハラスメント先生に悩まされている時、こんなこと言われたらどうします?
「なら、オレがダチらといっしょに戦ってやるよ」
ただ、このコルテス、
●いきなり3000人虐殺したり
●アステカとその敵対部族、両方の味方をよそおっておきながら、両方を裏であおって戦争に発展させ、自分がおいしいところを持っていこうとしたり
ちょっと恐いんです。
コンキスタドールをダテにやっちゃあいませんよ。
① 先輩!“ほうれんそう”より大事なもんってありますよね!byエルナン・コルテス
② おかげ様。修羅場はいっぱいくぐらしてもらってるんでね。君との戦争なんて子どもの遊びかな?byエルナン・コルテス
③ うざい先輩がいるんだって?じゃ、オレがダチらといっしょに戦ってやるよ。byエルナン・コルテス
(名言の出典いずれも『コルテス政略誌~アステカ帝国の滅亡~』著・モーリス・コリス/訳・金森誠也/講談社学術文庫より)
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