1940年に首相となり、第二次世界大戦でイギリスが勝利する1945年まで戦争を主導した、
ウィンストン・チャーチル。
歴史上もっとも偉大なイギリス人、とも言われる彼のリーダーシップ性や
その演説力は現在でも多くの人々に尊敬されています。
イギリスの危機的状況のなか首相になり、人々を鼓舞しその心を捉え、
やがてイギリスを勝利に導いた演説にはどんなものがあったのでしょうか。
一緒に見ていきましょう。
国民を鼓舞する不屈の精神 英首相チャーチルの演説
第一次世界大戦に参戦した経験があり、新聞記者や小説家、
そして政治家としてこれまでの人生を歩んできたウィンストン・チャーチル。
彼が首相の座に就任したのは、65歳のときでした。
イギリスがドイツとの戦争に参入し、危機的状況に直面したなか
行われた演説をご紹介していきます。
下院での首相就任演説
以下はチャーチルが首相になって初の、1940年5月13日に行われた演説内容です。
私には、血、苦労、涙、汗しか提供できるものはない。
諸君は『我々の政策とは何か』と問うだろう。私はこう答えたい。
それは陸海空において、神が我々に与えた全ての力をもって戦うことである。
人類の犯罪史にさえ例のない、卑劣で暴虐な圧制(ヒトラーのナチズム)に対し、
全力を注いで戦う。これが我々の政策である。諸君は『我々の目的とは何か』と問うだろう。私は一言で答えることができる。
『勝利』である。
あらゆる犠牲を払っても勝つこと。
そこに到るまでの道のりが、どれほど長く悲劇であろうとも勝つこと。
それが目的である。
勝利なくして生き残ることはない。
5月10日に首相になって3日後に行われたこの演説で、
チャーチルはヒトラー政権の打倒とイギリスの勝利について熱く語りました。
しかしイギリスが勝利するのはずっと先のことで、しばらくはチャーチルの元に、
敗戦の報せばかりが届きました。
下院での鼓舞演説
チャーチルやイギリスにとって屈辱的な状況が続くのとは反対に、
絶好調だったヒトラーは1940年5月15日にはオランダを、
5月27日にはベルギーを降伏させ、その矛先を英仏連合軍にも向けるようになります。
ヨーロッパ大陸で応戦していた連合軍は次第に追い詰められ、
遂に対岸のイギリス本土へ退却することになります。
そんななかでもチャーチルの闘志の炎が消えることはありませんでした。
以下は、同年の6月4日に行われた下院での演説です。
ヨーロッパの大部分と、多くの国々が嫌悪すべきナチスドイツに陥落したとしても、
我々は、ひるみはしない、くじけはしない。
我々は最後まで戦い続ける。我々はフランスで戦う、海で戦う。そして日々募っていく自信と力をもって、空で戦う。
我々はどんな犠牲を払おうとも、我々の島(イギリス)を守りとおす。
我々は海岸で、水際で、平原で、街路で、そして高原で戦う。
我々はけして降伏しない。
どれほど悲惨な戦況になっても、イギリスはドイツと徹底的に抗戦するという意志を
力強く唱えたチャーチルでしたが、その後パリ占領によりフランスがドイツの手に落ちると、
イギリスは一国でドイツに立ち向かわなければならなくなり、
その命運はチャーチルの手にゆだねられることになったのです。
議会演説での警告
フランスがドイツに敗北し戦線を離脱すると、チャーチルは6月18日の議会演説の場で、
以下のような警告をしています。
我々イギリス国民の生活、社会、そして大英帝国の存続も、この戦いにかかっている。
敵の全勢力と士気がやがてこちらに向けられるだろう。
ヒトラーは知っている。我々を倒さない限り、この戦争に敗北するしかないと。我々がもし彼に立ち向かうことができれば、全ヨーロッパは解放され、
全世界が光に照らされた高見の世界へと前進するだろう。しかし我々がもし倒れれば、アメリカ合衆国含む全世界、そして我々が大切にしてきた全てが、
歪んだ科学の光明により長引いた暗黒時代の深淵へと沈んでゆくだろう。よって、我々は使命遂行の決意を固め、立派に振舞おう。
そうすれば、たとえ大英帝国が以後千年に渡り続いていったとしてもなお、人々は言うだろう、
『あの戦争のときがイギリス国民の「もっとも」輝かしいときであった』と。
チャーチルはこのように常に国民を鼓舞し続け、勝利を諦めませんでした。
下院での称賛演説
その後、ヒトラーから送られた自分たちにだけ都合の良い和平提案を突き返し、
主に空中戦におけるドイツとの激しい戦闘を繰り広げた後に、イギリスが窮地を切り抜けると、
チャーチルは下院で以下の演説を行いました。
「人類の争いの場において、
このように多数の人間(英国民)が、このような大きな恩恵を、
このような少数の人間(パイロット達)から受けたことは、
いまだかつてなかったのです。」
この場で彼は、命を賭して祖国を守り抜いたパイロットたちの活躍を称えました。
きょうのまとめ
今回は、英首相チャーチルの演説をドイツとの対戦の流れに沿ってご紹介しました。
演説内容を簡単にまとめると
① ヒトラー政権を激しく批判し、打倒の意思を強く表明していた
② 唯一の頼りだったフランスが離脱した後も、不屈の闘志で国民を鼓舞し続けた
③ 激しい戦闘の後にイギリス空軍がドイツに勝利すると、その活躍を演説の場で称えた
一度は完全に孤立したイギリスがドイツに打ち勝つことができたのは、
ウィンストン・チャーチルという、国の精神的な支柱が国民に不安を感じさせないよう、
その不屈の姿を示し続けていたからなのかもしれませんね。
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