大阪商法会議所や、大阪株取引所をはじめ、関西のさまざまな企業の創設に携わった実業家
五代友厚。
幕末の時代、薩長同盟を成立させ、明治維新の立役者となった
坂本龍馬。
2020年に公開された映画『天外者』では、ふたりは互いに新時代の幕開けを夢見る親友として描かれています。
明治の礎を築いた英雄ふたりが史実でも親友だったとしたら、それはまた胸躍る話ですよね。
実は、そこまで逸話が残されているわけではないのですが、親しかったことはたしかなようですよ。
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五代友厚と坂本龍馬、実際の関係は?
五代友厚と坂本龍馬が親交を深めたのは、1866年ごろの話。
このころ五代は薩摩藩の会計係として商事を任され、長崎を拠点に外国との貿易や、貿易をしたい諸藩の橋渡しを担っていたといいます。
一方の龍馬はこの時期に海援隊を結成し、長崎と大阪を行ったり来たり。
土佐藩をはじめ、倒幕へと舵を切り始めた諸藩を相手に、西洋の武器などを調達する業務を行っていました。
同じように外国と諸藩の仲介役を務めていたふたりは長崎で知り合い、親密な関係になっていったといいます。
詳しい記録こそ残っていませんが、ビジネス上で連携するような場面もあったかもしれません。
海援隊vs紀州藩「いろは丸事件」を調停
五代と龍馬の接点として唯一記録が残っているのが、1867年の「いろは丸事件」です。
同年4月19日、海援隊の蒸気船「いろは丸」と、紀州藩の大型艦船「明光丸」が、瀬戸内海を行く途中に衝突。
880トンもの重量を誇る明光丸の前に、160トンのいろは丸はひとたまりもなく、ほどなくして沈んでしまいます。
このとき龍馬を含む、いろは丸の乗組員34名は明光丸に避難したため、死傷者は出なかったのですが、積み荷ごと船を失ってしまった海援隊としては大損害。
紀州藩に賠償金を求めるため、龍馬は交渉を切り出します。
その際に、調停役として話を取りまとめたのが、五代だったのだといいます。
御三家・紀州藩にケンカを売る龍馬
紀州藩は徳川御三家のひとつでもある強大な藩で、権力的に見れば、龍馬の土佐藩はとても太刀打ちできません。
しかし、龍馬はこの時期に導入されはじめていた国際法「万国公法」に乗っ取った交渉を行うことで、話を有利に進める自信がありました。
龍馬は神戸海軍操練所にいたころ、師匠の勝海舟から国際法を学んでいましたが、紀州藩はこの法律にてんで疎かったためです。
航海日誌や談判記録などの証拠を揃え、海上のトラブルに慣れているイギリスの領事まで味方につけ、龍馬は一方的に賠償金を要求します。
紀州藩相手に一切怯まないその姿は、さながら幕末版・半沢直樹。
息まいていた龍馬は、巷でこんな言葉を言って回っていたといいますよ。
たとえ相手が紀州藩だろうが、ひれ伏せさせてみせるぜよ!…といった感じですね。
談判を解決へ導いた五代
万国公法を用いることで、すんなり交渉が進められると考えていた龍馬ですが、紀州藩もそう易々と認めはしません。
龍馬が一歩も譲らないと見ると、土佐藩参政・後藤象二郎に直談判。
直属の上司に掛け合うことで、龍馬を納得させようとしたのです。
紀州藩はなんと
「場合によっては武力行使も辞さない」
とまで言い出したのだとか…。
「これはさすがにまずいぞ…」
と考えた後藤は、留学経験があって国際法にも詳しい五代に調停を依頼しました。
五代があいだに入ると、平行線を辿っていた談判は解決に進み、紀州藩が賠償に応じることに。
こうして、龍馬は最終的に7万両の賠償金を勝ち取ることになるのです。
龍馬ですら無理だった紀州藩を納得させてしまうとは…、五代の類稀なる交渉力を物語る逸話ですね。
ちなみに、龍馬は沈没したいろは丸に、
という言い分でそれだけの金額を要求したのですが…
近年の調査で、海底のいろは丸のなかからは、銃も金塊も見つからなかったと報告されています。
紀州藩から大金を引っ張りだすための嘘だった…?
龍馬のことですから、またそのお金で世のため人のため、大きな事業を起こそうと考えていたのかも。
きょうのまとめ
五代友厚と坂本龍馬の接点は決して多いとはいえませんが、そのぶん、ひとつで十分に濃い逸話が残されていました。
賠償金で支払われた7万両は、現代で100億円にも相当する額です。
いってしまえば、国から新興企業にそれだけのお金が支払われたようなもの。
幕末の志士はやっぱりスケールが違います。
最後に今回のまとめ。
① 五代友厚と坂本龍馬が出会ったのは、長崎にて、互いに外国と諸藩の貿易を担う役を務めていたから。
② 海援隊の船と紀州藩の船の衝突事件で、龍馬は紀州藩に賠償金を要求。国際法に精通していることを武器に、御三家が相手でも噛みついてみせた。
③ 紀州藩と龍馬の談判は平行線を辿り、武力行使も辞さない事態に。土佐藩の依頼で五代が調停に入り、紀州藩を賠償に応じさせた。
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