アリストテレスは、ソクラテス、プラトンの後を継ぐ古代ギリシャの著名な哲学者の一人です。
彼は万学の祖とも呼ばれ、現代に続くあらゆる学問の基本となる「物の在り方」に対する考え方を確立しました。
そんなアリストテレスの考え方を根本から記した著書が「形而上学」です。
形而上学には、彼が示した物の在り方の全貌が詰まっている……そう聞くと、興味を持つ人は多いでしょう。
しかし哲学に馴染みがない人が読むには、多分に難解なことは否めません。(途中で挫折しそうになります…)
この記事では、「アリストテレスの考え方には興味があるけど、難しいのはちょっと…」という人に向けて、形而上学の一部をなるべくわかりやすく説明します。
おおまかに知っているだけでも、アリストテレスがあらゆる学問の基礎を築いたと、いわれる理由がわかるはずです。
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物事が存在する原因を追究するアリストテレスの形而上学
アリストテレスの形而上学は、簡単にいえば物事が存在する原因・理由を追求した考え方です。
形而上という言葉には「目には見えないもの」「人知を超えたもの」のような意味があります。
どこかスピリチュアルで宗教的な印象を覚えますが、言葉のイメージに反してアリストテレスの考え方は現実的です。
ではなぜ、彼は形而上という言葉を用いたのでしょうか。
恐らく「物事が存在することには説明できる原因があるものの、その原因は普通に暮らしていると見えにくい」といった意味合いが込められていると感じます。
物事は4つの原因によって存在している
アリストテレスは、物事が存在する原因は、大きく4つの種類に分けられると定義しました。
彼が上げた4つの原因は「質量因」「形相因」「目的因」「始動因」です。
順を追って説明していきましょう。
質量因
物事を形作っている素材を、存在する原因と捉える考え方。
例えば人間の身体が存在するのは、たんぱく質という素材があるから…といった具合です。
形相因
形相は物事の本質…つまり物体が特定のものであることを確立する要素のこと。
例を挙げると、一人の人間が存在するのは、その個人を特徴付けるものがあるからとする考え方です。
人間に一人一人特徴があるのは、個々に先祖から受け継いだDNAがあるから…よってDNAは形相因と呼べます。
目的因
物事が存在するのは、なんらかの目的があるからだとする考え方。
例えば学校が存在するのは教育という目的があるから、包丁が存在するのは物を切るという目的があるから…といった具合です。
始動因
物事が存在するのは、なんらかの力が加えられたからだとする考え方。
例えば家が存在するのは大工さんが家を建てたから…などが始動因となります。
アリストテレスは、これら4つの原因を元に物事は存在しているということを徹底的に考え、その土台を元にあらゆる学問が形成されていったのです。
形而上学は、師プラトンのイデア論に異を唱えた論説?
ここまでで説明したように、アリストテレスの形而上学では、物事が存在する原因はすべて現実にあるとしています。
実はこの考え方は、彼の師である哲学者プラトンの考え方を否定するものでもあるのです。
プラトンが物の在り方として唱えたものに「イデア論」というものがあります。
イデア論では、物事が存在する原因は、それを目にした人たちが持っているイメージにあるとしているのです。
木を木だと認識できるのは、それを見た人が「木とはこんなものだ」というイメージを持っているから。
木のイメージを持っているから、樹齢何百年の大木も、クリスマスに家で飾るツリーも同じ木だと認識できるというのがイデア論です。
そしてイデア論では、その人の認識によって物の見え方が変わるのだから、その人のイメージこそが真実なのだとしています。
つまり物事が存在する原因は現実世界にあるのではなく、人のイメージの世界にあるということ。
それに対してアリストテレスは、原因は現実に存在しているといったので、師匠の唱えたイデア論を否定したといわれているのです。
実際のところは、プラトンは精神的な面から考え、アリストテレスは物理的な面から考えた…というだけの違いにも感じられますね。
きょうのまとめ
今回紹介したのは、形而上学のほんの触り程度の内容で、実際にアリストテレスが残した著書と向き合ってみると、比ではないぐらい難解なことがわかります。
興味が湧いた方は挑戦してみても良いでしょう。
最後に今回の内容も簡単にまとめておきましょう。
① 形而上学はあらゆる学問の基礎となる考え方
② 形而上学という名前は、「物事の存在理由は普通にしていると見えにくい」ことからだと推測される
③ イデア論は精神的な面から、形而上学は物理的な面から物事の存在する原因を考えたもの
人間は哲学という答えの出ないテーマを、何千年にも渡って考えてきました。
考えたところで答えは出ない…けれども、その哲学があらゆる学問の基礎になったという事実は紛れもありません。
答えの出ない問いだからといって、考えることに無駄はないといったところでしょうか。
アリストテレスの年表を含む【完全版まとめ】記事はこちらをどうぞ。
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