古代イスラエル第2代の王、ダビデ…そしてその息子にして、第3代の王となったソロモン。
キリスト教ではダビデにしてもソロモンにしても、聖人として扱われているように、二人はどこか人知を超える力を持っています。
そんな神秘的な力も相まってか、イスラエルはこの二人の代で、国を大きく発展させていくことになりました。
二人はどんな境遇を持っていて、いかにして国を繁栄させていったのか…。
今回は古代イスラエル最盛期において、活躍したこの二人の事情を探ってみましょう。
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ダビデからソロモンへ受け継がれた古代イスラエル
ダビデの不倫から生まれたソロモン
聖人というからには、ダビデとソロモンにはさぞかし清らかな背景があるのでは…と想像してしまいますが、実はソロモンはダビデの不倫で生まれた子でした。
あるときダビデは、家臣であるウリヤの妻、バト・シェバが水浴びをしているところを見かけると、恋に落ち、そのまま関係を結んでしまいます。
夫のウリヤは戦場に出ていて不在だったので、不倫をしてもバレないと踏んでいたのでしょうね。
しかしあろうことか、バト・シェバがダビデの子を妊娠してしまいます。
当時王に複数の妻がいることは珍しいことではないものの、相手が他人の妻とあってはそうはいきません。
マズイと思ったダビデは、ウリヤを戦場から呼び戻し、妻と床を共にするよう促しました。
しかしそれが上手くいかず、最終的にダビデはウリヤを最前線につかせ、故意に戦死させてしまうのです…。
夫は死んでいるのだから、不倫ではない…とでもいうのでしょうか。
勝手な都合で殺されてしまったウリヤも浮かばれませんね…。
こんなことをすれば、神様も当然怒ります。
神の怒りに触れたダビデとバト・シェバは、二人の間に宿った一人目の子の命を奪われてしまいました。
そしてその次の二人目の子が、ソロモンだったのです。
衰えたダビデに取って代わろうとする者が現れる
ソロモンはダビデから生前(紀元前971年)に王位を継承しています。
ダビデが生きているうちに、息子に王の座を受け渡したのは、単に「そろそろ隠居するか…」といった感じではなく、とある事件に伴うもだったのです。
ダビデは晩年、年老いて身体の自由が効かなくなり、側にお世話の者を置いて静かに暮らしていました。
そんな状態にあっては、国の内情にまで目が行き届かなくなることも当然。
あるときダビデがまだ王位を空けていないにも関わらず、息子の中から自らがイスラエルの王だと名乗る者が現れたのです。
これを経て動いたのは、預言者ナタンと、ソロモンの母、バト・シェバでした。
二人はダビデの元へ赴き、ソロモンに王位を継承するよう促すのです。
ソロモンが王に推された理由はバト・シェバが、自分の子が即位してほしいと思ったからでしょうか。
はたまたナタンが神のお告げなどから、ソロモンを王にすべきだとしたのか…。
どちらにしてもこの後ソロモンが王としてだけでなく、知恵者として名声を広げていくことを思えば、その審美眼は正しかったといえます。
ダビデとソロモンが行った政治
数々の民族を打ち破り、中央集権国家を確立させたダビデ
ダビデはとにかく戦が強い王でした。
自身がイスラエルの王になってからは、ペシリテ人、アモブ人、アラム人、エドム人、アンモン人など多民族を打ち破り、配下に収めることで勢力を拡大。
内政に関しても、傭兵部隊を組織するなど、軍事力の強化に主眼が置かれていたことが見て取れます。
ダビデの強さを物語るもので有名な逸話は、彼が前代のサウル王に仕えていたときの話。
ペシリテ最強の戦士、ゴリアテと対峙することになったダビデは、なんと鎧や武器を持たず、杖と石投げだけを持って戦いに挑んだのです。
一見無謀に見えましたが、ダビデがそのときいったことは「この戦いは主のものだ」という言葉。
要するに、勝利は神様が望んだほうに訪れるということでしょう。
この言葉を表すかのごとくダビデは、重装備で挑んできたゴリアテを投石だけで倒してしまうのです。
このときのようにダビデは戦いの神様を味方に付けていたから、数々の戦を制していったのかもしれませんね。
また同時に王に権力を集中させる中央集権国家を発足させたのも、ダビデです。
宗教が重んじられていたイスラエルでは、国は王のものではなく神のものでした。
その点を踏まえると、王を中心とする国家を築いたダビデは革新的だったといえます。
古代イスラエルを豊かで安全な国へ導いたソロモン
一方ソロモンが行った政治は、ダビデとは真逆の印象を受けます。
ソロモンは他国との親交を重んじ、国内においても外交のための制度や設備を強化。
外交を活性化させたことで経済を発展させていったのです。
また国内の安全を確保するために、政略結婚を駆使し、都市の強化も積極的に行っていきます。
ファラオの娘を嫁にすることで、エジプトとの安全保障を確立させたことは有名ですね。
またその知恵深さに感心した他国の王たちは、親交を求めて頻繁にソロモンを訪ねてきたといいます。
逸話ではソロモンは神から知恵を授かっており、天使や悪魔を遣わせたり、動物や植物と会話したりもできたんだとか。
この辺りは伝説として作られている部分もあるとは思いますが、それほどに優れた智恵を持った人物だったということですね。
きょうのまとめ
ダビデが中央集権国家の基礎を作り、ソロモンが受け継いだ権利を使って安全で豊かな国を築いていく…。
二人の王によって、古代イスラエルが最盛期を迎えた経緯は感じていただけたでしょうか。
今回の内容を簡単にまとめると…
① ソロモンはダビデの不倫から生まれた
② ダビデは戦が強く、多民族を配下に置くことで、中央集権国家を確立していった
③ ソロモンは他国との親交を重んじ、安全で豊かな国を築いた
ダビデと妻、バト・シェバの関係は不純なものでしたが、その結果ソロモンが生まれたから、古代イスラエルは繁栄していきました。
また親子で真逆の政治を行っていることも興味深いですね。
ダビデの政治に思うところがあり、ソロモンが正したのか…または、たまたまそういう志向だったのか。
出来事から当事者の心情を想像すると、歴史はさらに面白くなってきますね。
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