日本史にふれていると“上洛”
という言葉にえも言えぬ”響き”を感じます。
時代は幕末。
まるで思いがけず時代のリーダーとしてそれを決行”せねばならない”男がおりました。
まだ、20才にも満たない徳川家茂です。
なぜ、徳川家茂は”上洛”しなければならなかったのか。
そして、そこで彼らは何をなし、結果として時代はどう動いていったのか。
あまたの志士たちの野望と夢が大いにうごめく血風の”魔都”へあなたをいざなってまいりましょう。
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攘夷を全然実行しない!朝廷の圧に幕府もやむなし
黒船の圧力などにより、
幕府は諸外国と通商条約を勝手に次々と結ぶなど、
かなりの攘夷派である孝明天皇は我慢なりません。
まして、「幕府が攘夷を決行する」という約束であの異母妹和宮をいろんな無理に無理を重ねてまで
江戸に降嫁させたというのに。
幕府は口先ばっかで全然あてにならん!
その圧をひしひしと感じ入っていたのでしょうか。
幕府もとうとう大技に出ます。
229年ぶりの将軍上洛です。
むかしは遠くなりにけり。徳川家光時代の超バブリー上洛
229年前というのはまだ徳川家光のころ、
あの頃は30万人ともいう大軍を率い(大坂の陣でも20万人なのに……)、
天皇や上皇、京の町人や寺院や有力公家だけでなく、旅筋の大名、江戸・駿河・大坂市民にたくさんの領地やお金や米をばらまいたり、税を免除したり、
ひょっとして日本史上最大の大バラマキでしょうか。
少なくとも日本史上一番経費のかかった旅行?
まあそれにしてもずいぶん羽振りがよかったものですね……。
京における朝廷と幕府の駆け引き
どうにか上洛したのですが
どう考えたって攘夷は無理です!
火力がちがいすぎます。
こんなもん戦にもなりませんよ。
でも、孝明天皇をはじめとした攘夷派はものすごくせまってきます。
そこで、ついてきていた一橋慶喜。
「攘夷やりましょう」朝廷と約束してしまいました。
あったりまえですけど、幕閣はおさまりません。
「何勝手なことやってんだ!」
しかし、慶喜。
そこはしたたかなものです。
孝明天皇が徳川家茂らを連れて石清水八幡宮行幸を呼びかけますが、
家茂に仮病を称させ、これに欠席させます。
石清水八幡宮は古来
国家鎮護の宮として皇室の尊崇あつく、平将門や藤原純友の乱の折には天皇や上皇が何度も行幸に訪れました。
まして、ここは源氏のゆかり深い“武の神”としての信奉も集めております。
徳川は源氏の末裔を名乗り、かつ、“征夷”大将軍(皇室に服従しない“異民族”をやっつける任務を帯びた将軍)。
天皇から節刀(※)を拝領してしまえば、いよいよとんでもないことになってしまいます。
まあ実は、のちのち“じゅうぶん”とんでもないことになってゆくのですが……。
上洛している間に一番の”難敵”が急成長!
その後も家茂は翌年、翌翌年、と上洛を繰り返します。
そうこうしている間に、あの”約束”を真に受けてしまった長州藩は一藩のみでアメリカ・イギリス・フランス・オランダを相手に、勝手に戦争をおっぱじめてしまいます(やるだけやって列強への賠償金はなぜか”幕府もち”のおまけつきです)。
いわゆる下関戦争です。
一方で、ものすごく尊王よりのはずなのに、朝廷や諸大名らのはじきものとされ、会津藩・薩摩藩などの連合軍と戦い、敗れた
禁門の変も引き起こしております。
さらには第一次長州征伐。
何度敗れても、結局は幕府打倒でまとまり、
もうたまりかねた幕府はついに第二次長州征伐を決意します。
まあそれが幕府方のとんでもない大惨敗となり、
徳川家茂も前線で征伐が行われているさなかに大坂城で亡くなることとなります。
結果として江戸時代の終わりが決定的となってしまいました。
長州藩もいろんなムチャを重ねた末に、
攘夷はとてもじゃないけどムリ、とその実体験でもって感じ取り、
かえって、“最新鋭”の外国製の武器で幕軍を圧倒するようになってしまうのですね。
きょうのまとめ
そういえば古来より”上洛”はリスクがつきもの。
それを夢見て志半ばに倒れた人。
上洛は果たしたけど、それがもとでかえって自分を死地に追いやってしまった人。
そこに新たな未来を切り開いた人も多くいますが。
千年の都にはあまりにたくさんの人々の夢と屍が眠っております。
① 徳川家茂の上洛は徳川家光以来229年ぶり
② 幕府方は攘夷を声高に叫ぶ朝廷を何とか手なずけるために上洛した
③ 一橋慶喜の機転のはずの”約束”が、のちのちまわりまわって幕府にとんでもないダメージを与えることになってしまった
拝啓慶喜様。
幕府方の人間からの視点であなたを話すと、どうしてもこういう風になってしまいます。
あなた様はあなた様で後世に残した意義はとても大きいと思います。
ただ、将軍様で、かつ、思いっきり幕府方人間であるはずなのに、というパラドックス。
……。
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