哲学の創始者ソクラテスは「人はどう生きるべきなのか」に生涯をかけて向き合い、次代を担う若者たちを真理へと導こうとした人物です。
導く…といってしまうのは簡単ですが、人の考えは少し教えを説いたぐらいで変わるものではありませんよね。
教えというのは教わろうという気持ちがあって、初めて受け入れられるもの。
しかしソクラテスが相手にしていたのは、自分を智恵者だと思っている者や、権力におごる者…人から物を教わろうなどとは、到底思いいたらない人たちです。
ソクラテスはどうやって彼らを導いたのかというと、教えたのではなく、気付かせたのです。
この記事では、そんなソクラテスの問答法について、詳しく迫ってみましょう!
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ソクラテスが行った問答法とは?
言い聞かせるのではなく、相手から真理を引き出す問答法
ソクラテスが行った問答法は、相手が「わかっている」と思っていることに対して、質問を繰り返すことで、考えの矛盾に気付かせるというものでした。
わかりやすく会話で例えてみましょう。
といった具合です。
会話を見てもらえばわかる通り、問答法で得られる気付きはすべて、教えられるのではなく、自分で考えたことから導かれます。
考えを正すのに、相手の意見を否定するのではなく、質問を繰り返すことで、自ら気付きを促す…これが問答法です。
相手が物事の本質を理解していなければ、質問を繰り返していくことで、必ず矛盾点が出てくるということですね。
問われているほうも、一方的に教えを受けるのではなく、自分で気付いた分理解度が高くなるのです。
ソクラテスは自分が無知であると自覚していたから、問答法が行えた
ソクラテスの名言のひとつに
「自分は真理をわかっていると思っている者より、自分は無知であるとわかっている者のほうが賢い」
というものがあります。
その言葉に基づき、わかったつもりでいる者を「無知である」と気付かせるため、彼は多くの権力者を論破していました。
かくいうソクラテスが問答法を行えたのも、彼が自身を無知であると自覚していたからです。
無知だと思っているからこそ「こうだ」と断言されたものに「本当にそうなのだろうか?」と疑問を持つことができます。
断言されたものに対して、自分の中に別の思い込みがあれば、会話は意見の衝突へと発展するでしょう。
問答法は、自分にはまだまだ知らないことがたくさんあるという、謙虚な姿勢を持ってして成立するものなのです。
小学生も難しい真理に気付かせた問答法
ソクラテスが生きたのは紀元前400年代のことですから、問答法は2000年以上も前に編み出された教育法ということになります。
その後にも様々な教育法が編み出されたことでしょう。
それでも問答法は現代にも良質な教育法として残り続けているんです。
法学を教えるアメリカのロースクールでは、問答法を使い、質問形式で展開されていく授業があり、これを「ソクラテス・メソッド」と呼びます。
難しい法学を理解するのにも有効だということが、実際の授業に使われていることからも伝わりますね。
またアメリカ・アラバマ州にあるトロイ大学の教授、リチャード・ガリコフ氏が行った実験では、「コンピューターや計算機が二進法で動いている」という仕組みに、小学3年の生徒たちが深い理解を示しました。
大昔に編み出された教育法が、現代でもこれだけ有用とされている例があるのです。
自分で考えて気付くのが大事だということは、原始的でありながら不変の真理なのですね。
きょうのまとめ
ソクラテスの問答法は、相手の内側から真理を引き出す方法。
質問をする彼自身もまた、謙虚な姿勢で丁寧に相手と接していったことでしょう。
それによって無知なことに気付かされた相手も、自分で気付いたわけですから、納得もしていたはずです。
それでも、最終的に怒りを買って裁判にかけられてしまうのですから、人間はつくづくプライドの高い生き物なのだな…と思わされます。
最後に今回の内容を簡単にまとめてみましょう。
① ソクラテスが行った問答法は、「教える」のではなく、質問を重ねることで「自ら気づきを促す」教育法
② ソクラテスは「自分は無知だ」という謙虚な姿勢を持っていたから、問答法を行うことができた
③ アメリカのロースクールには問答法を使ったソクラテス・メソッドがある。また、小学生に行った実験でも高い理解度が証明された。
問答法を一言で表すとすれば「一緒に考えていこう」という言葉がしっくりきます。
これは指導者が相手に寄り添う姿勢が、真理へと導くとも取れますね。
ソクラテスの年表を含む【完全版まとめ】記事はこちらをどうぞ。
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