旧約聖書に登場する、モーセの「十戒」に関するエピソード。
宗教にあまりなじみのない人でも、モーセが海を割るというシーンをご存知の方は多いのではないでしょうか。
後のキリスト教やイスラム教の教えにも大きな影響を与えた「十戒」。
今回は、教養として押さえておきたいポイントを簡単に解説していきます。
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モーセの「十戒」
まず最初に、そもそも「十戒」とは何なのかはっきりさせておきましょう。
一言で表すと、神が人々に与えた十の戒律、つまり10個の決まり事のことです。
これを人間代表として受け取ったのがモーセでした。
モーセが十戒を受け取るまで、そしてその後が描かれた一連のエピソードは旧約聖書の中にあります。
「出エジプト記」
旧約聖書の中でモーセの十戒が登場するのは、「出エジプト記」という物語の中のエピソードとして。
「出エジプト記」とは、ユダヤ人(イスラエル人)の指導者モーセが、神のお告げを受けてイスラエルの民たちを約束の地、カナンへ導く物語です。
エジプトでファラオによって厳しい労働を強いられていたユダヤ人たちを救う為、選ばれたモーセが数々の神の奇跡を味方に、神に与えられたカナンという土地を目指します。
ファラオの追撃や先への不安から、人々はモーセの教えに半信半疑のまま旅を進めます。
十戒のエピソードは、不満を漏らす人々に困り果てたモーセが旅の途中でシナイ山へと導かれ、そこで神と遭遇した場面です。
神はまず自身が唯一の神であることを宣言し、十の戒律が書かれた石板をモーセに授けたのでした。
「十戒」その内容とは
ここで、神が人間に与えた十戒の内容を簡単にご紹介します。
・偶像を造ってはならない
・主の名をみだりに口に出してはならない
・安息日(休日)を定め大切にせよ
・父母を敬え
・殺人を犯してはならない
・姦淫を犯してはならない
・盗んではならない
・偽りの証言をしてはならない
・隣人の財産を欲してはならない
特に後半に関して言えば、現代を生きる私たちにとっては当たり前に理解しているものが多いことに気づくはずです。
しかし「出エジプト記」のエピソードが成立したのが紀元前13世紀頃だと考えると、この十戒が当時の人々にとって倫理や秩序を形成する上で重要な役割を果たしていたことがお分かりいただけると思います。
この戒律は、実際に今でもユダヤ教信者たちの重要な教えとして守られているのです。
後の宗教にも影響
旧約聖書に描かれ、ユダヤ教の教えとして根付いた十戒。
実はこの教えが後のキリスト教やイスラム教の基になっていたことをご存知でしたか。
以下ではそれぞれについて見ていきましょう。
キリスト教
キリスト教の創始者とされるイエス・キリスト。
彼は元々ユダヤ教徒だったのです。
そして、十戒やモーセの「出エジプト記」のエピソードを基に、彼は自身の新たな思想を展開していきます。
それが後の弟子たちによってまとめられたものが新約聖書になります。
例えばイエスが説いた
という教え。
これは旧約聖書の中でモーセが、「隣人を愛し敵を憎め」と人々に説いたことに対する新たな思想として登場します。
イスラム教
一方イスラム教では、モーセは預言者の一人として扱われています。
そして十戒を含む「出エジプト記」の物語も重要な教えの一つとして伝承されてきました。
イスラム教の聖典であるコーランには、モーセやイエス等の預言者たちが説いた教えがまとめられており、それを担ったのが預言者ムハンマドなのです。
キーワードは「救済」
モーセの十戒のエピソードを通して重要なキーワードになってくるのが、「救済」というテーマ。
モーセはカナンへの旅で次々起こる問題の中、迷いながらも最終的にはいつも神の言葉を信じて行動していきます。
そして神はいつもそんなモーセのことを助ける唯一絶対的な存在であり、自ら唯一の存在として宣言しています。
一方でその後、十戒を破った人々がいたことで、モーセたちの旅はさらに困難を極めることになりました。
それら一連のエピソードを受けて、後の人々の間には
・信じて信仰することで救済される
という、救世主信仰の考えが根付いていきました。
信者たちの間には救世主の存在を信じ生活を送ることで、エジプトから脱出した人々の様にいつか苦悩から脱出することができる、という思想があるのです。
この救済と救世主信仰の思想は、特にキリスト教に強く引き継がれています。
イエス・キリストの存在は、人々をあらゆる悪習や苦しみから救う存在として、現在まで位置付けられているのです。
きょうのまとめ
今回はモーセの「十戒」について、簡単にご紹介してきました。
いかがでしたでしょうか。
最後に、今回ご紹介した内容を簡単にまとめると
① 「十戒」とは、神がモーセに授けた十の戒律のことである。
② モーセの十戒は、旧約聖書の「出エジプト記」の物語の中に出てくるエピソードである。
③ 十戒は、後のキリスト教やイスラム教にとっても重要な教えである。
日本人にとっては、なかなか馴染みが薄い宗教や聖書の物語。
この記事を読んでくださったことを機に、まずは「出エジプト記」から読んでみてはいかがでしょう。
世界中にいる信者たちの思想の一部が垣間見えるかもしれません。
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