6世紀末、隋を興した文帝は国内に仏教を盛んに勧めました。
しかし、時代ははかなくも激動をむかえます。
大陸中が戦乱で荒れ狂い、そんな中で育ったある一人のお坊さん。
「ブッダの教えを知りつくした者」として、人々は彼のことをこう呼びました。
玄奘三蔵法師。
そして、そんな彼があくまで目指した土地、それがインドです。
ブッダの教えのルーツを求めて。
彼のたどった西遊記のルートを追いかけてみましょう。
玄奘三蔵法師出発
●長安(今の西安)
紀元前1000年周王朝のむかしから何度も都となった地です。
戦争からも少し経って、町のあちこちで復興に活気づいております。
さあ、はるかな西を目指して。
玄奘三蔵法師26才、さわやかに天高まる初秋のことです。
長安から西を目指すと、身の回りの草木がみるみると低くなり、緑はまばらとなってゆきます。
替わりに目の前いっぱいに広がるのは荒れ果てたゴビ灘(固い土質の砂漠です)。
あそこに見えるのは万里の長城ですね。
もちろん、よく画像で見かける八達嶺なんかの豪快立派なヤツではありません。
腰高ぐらいに盛り固めた土塀みたいなのが続いております。
青い空と黄色い大地の彼方まで。
そして、
●涼州(今の武威)
さらに、
●瓜州(今の敦煌)
当時の唐の国境地帯です。
涼州の長官は玄奘三蔵法師がインドを目指していることを知り、「行くな」と命令し、瓜州でも邪魔だてしてきます。
しかし、玄奘三蔵法師の固い意思は揺らぎません。
すると行く先々の人々が、玄奘三蔵法師の高い志に打たれ、なんとか出国できるようそっと手助けをしてくれました。
諸行無常、高昌国
行く先々の人々はたいがいこう言います。
「あなたは絶対にそこまでたどりつけない。やめなさい」
玄奘三蔵法師の足はなおも西へと向いたままです。
すっかりサラサラの砂漠も越えてゆきます。
空に鳥も、土に獣も、まったくいない死の大地です。
しかも、どこかの兵隊がうろうろしております。
時折、妖のものまで現れて大いに惑わします。
そして、ようやくたどり着いた
●高昌(今のトルファン)
という国。
ここは当時漢人国家でとても仏教を大事にしておりました。
ここの王様は玄奘三蔵法師をとてもありがたがって、「ずっとここにいて」とキリがありません。
なんとか王様を説得すると、
「わかりました。あくまで行くとおっしゃるのですね……」
とやっと放してくださり、旅に戻れました。
ただ、この高昌国。
玄奘三蔵法師が唐への帰りに寄ると、唐によってすでに滅ぼされておりました。
まさに仏教の説く諸行無常です。
シルクロードを行く
玄奘三蔵法師は
●天山山脈の峠道を越えてゆきます。
ぶ厚い氷河の張ったものすごく寒いところです。
同行する十数人が死亡。
牛馬の死はそれ以上です。
やがて、中央アジアの大都会
●サマルカンド
南に下って、巨大な大仏さんが立つ(先年、破壊されました)
●バーミヤン
さらに、高山にある風景のとってもきれいな
●カシミール
●パラーシャ
の密林では盗賊におそわれ、同行者ふくめてみんな身ぐるみがはがされてしまいました。
インドを回る
やがて、今のネパール、インドの国境地域。
おしゃかさんとはとてもゆかりの深い土地柄です。
玄奘三蔵法師はここでもまた賊におそわれます。
しかし、この時は玄奘三蔵法師が説法し、賊たちを改心させてしまいました。
ブッダの生まれ故郷
●カピラヴァストゥ
ブッダが初めて説法をした
●バラナシ
すでにこのあたりはヒンドゥー教が盛んで、どこの仏教遺跡も荒れ放題です。
ただ、
●ナーランダ
までたどりつくと、まだ仏教の信仰が根強く、立派な僧院もいっぱい立ち並んでおりました。
玄奘三蔵法師はここでたっぷり勉強し、その後インドをほぼ一周してようやく故郷中国へと帰ってゆきます。
長安の都にたどり着いたのは旅立ち始めてから16年後。
この時、唐の政府も人々も大歓迎で待ち受けておりました。
きょうのまとめ
玄奘三蔵法師が旅先から持ち帰ってきたお経の数はとてもたくさん。
玄奘三蔵法師は唐の太宗皇帝(李世民)からの
「政治家になって国造りを助けてくれないか?」
という誘いも
「私は政治に向いていないと思いますので」
と断って、お経の中国語への翻訳に一生懸命打ち込みます。
彼が翻訳した中で特に有名なのが『般若心経』。
「ぎゃあていぎゃあていはあらあぎゃあてい……」
真理ははるかな時と距離を超えて。
あらぶる東シナ海をもわたり、われらが国へも……。
① 玄奘三蔵法師の旅立ちはいろんな人々の助けがあってなしとげられた
② 玄奘三蔵法師が行きがけに立ち寄った高昌国は、彼が帰りがけに寄った時には滅ぼされていた
③ 玄奘三蔵法師は死の砂漠も極寒の峠道も越え、途中賊におそわれたりしつつ、なんとか本来の目標を達成し、16年かけて中国へと無事帰り着いた
「西遊記」のルートは今もエキゾチックでとっても素敵です。
ここはいろんな物産や宗教、民族が行き交い続けるまさに“人間の道”です。
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