紀元前10世紀頃の話、それまで王の存在しなかった古代イスラエルにて、
初代の王としてサウルが即位しました。
そして第2代の王は
ダビデが担うことになるのですが、これは厳密に見ればサウルから継承されたものではありません。
ダビデはサウルの死後、そのまま国を受け継いだわけではなく、自分の力で王として名乗りを上げたのです。
というのも、元はといえばサウルはダビデを嫌っており、王位を渡そうなどとは思ってすらいませんでした。
サウルとダビデは王と従者の関係…一体何が二人の間に衝突を生んだというのか、また何がダビデを第2代の王へと導いたのか。
記事を通して、真相に迫っていきましょう。
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羊飼いの息子から王サウルの従者へ
まずはダビデはどのようにして、古代イスラエルの王サウルの従者となったのかをみていきましょう。
王となるも、神に背いてしまったサウル
サウルが古代イスラエルの王となったのは、イスラエルの指導者サムエルが神の導きにより彼を見出し、その地位へ誘ったことからでした。
つまりサウルは神に選ばれた者であり、以降彼の心には神が宿っていたといいます。
主に戦場で活躍したサウルへの、民衆からの指示も高まりつつありました。
そんな折、サウルは自身に宿っていた神の命に背く行いを犯してしまいます。
神はサウルに向かって、そのとき戦を交えていたアマレク人を全滅させるように命じたのですが、サウルはアマレク人の中でも、自軍で使えそうな者は生かすことを選んだのです。
「神の怒りを買うぐらい非道なことをした者でも、戦力になるなら殺すなんてもったいない…」といったところでしょう。
このことをきっかけに神はサウルには愛想をつかしてしまい、その心から離れてしまいます。
同じく指導者のサムエルもサウルを見限り、再び神の導きによって、次代の王となるダビデを祝福することになるのです。
悪霊に憑かれたサウルを癒すため、雇われたダビデ
その身から神が離れてしまったサウルは、代わりに悪霊に憑かれてしまいます。
ダビデは竪琴の名手として名が通っていたため、その音色を使って、サウルが悪霊に苦しめられるのを癒す目的で雇われたのです。
こうして恵まれた家柄ではない、羊飼いの息子が王の従者として歩みを進めることになりました。
神の導きとは不思議なものですね。
ダビデとサウルの衝突。その理由とは
悪霊に苦しめられるのを癒す目的で雇われたダビデですが
二人は衝突するようになります。
ダビデとサウルの衝突したきっかけとは何だったのでしょうか。
勇者ゴリアテを討ち、名声を上げるダビデ…サウルは嫉妬に狂う
元は癒しを求めて雇ったわけですから、サウルはダビデのことを最初から嫌っていたわけではありません。
それに加え、長く対立していたペシリテ人の間で、勇者とされていたゴリアテをダビデが討ったことで、サウルはダビデを大層気に入っていました。
しかしその武功をきっかけに、国内でのダビデの人気がサウルを上回るようになってしまったのが、サウルがダビデを目の敵にするようになるきっかけです。
なんでも「サウルは戦で何千人倒したが、ダビデは何万人倒した」などと噂されていたんだとか。
これに嫉妬したサウルは、ダビデの命を度々付け狙うようになります。
あるときは竪琴を弾いているダビデに向かって、槍を投げつけて殺そうとしたり、あるときは「ペシリテ人を100人倒してこい」などといって戦死させようとしたり。
その際ダビデには何度も反撃のチャンスはあったのですが、彼はサウルには一切手を出しませんでした。
これは王として慕っていたというよりも、「一度は神に見初められた者に手を出してはいけない」という観念からです。
神に背いてしまったサウルに対し、ダビデは神に忠実でした。
そのことから、後に運命がダビデに味方していったといえるでしょう。
サウルの息子たちはダビデの味方だった
サウルはダビデがゴリアテを倒した際に、娘のミカルを嫁に与えると約束していました。
これによりダビデとミカルは夫婦となり、サウルがダビデに暗殺者を仕向けたときも、ミカルはダビデが逃げる手伝いをしています。
またダビデはサウルの息子のヨナタンからも好かれており、二人は親友でした。
嫉妬に燃えるサウルに対し、ヨナタンが「ダビデはあなたに害を与えたことはないどころか、助けになっているではないですか」と諭したこともあったといいます。
これを受けても尚、サウルはダビデの命を狙うことをやめず、ダビデはサウルの元を離れ、逃げなければいけない状況になってしまったのです。
そこからダビデがイスラエルの王として戻ってくるのは、ペシリテ人との戦いで、サウルやヨナタンが戦死した後のことでした。
きょうのまとめ
一時は神の加護を受けていたサウルですが、その意に背いたため、神はダビデの元へ。
このことを機に、運命はダビデを中心に回り始めました。
二人の関係を簡単にまとめると…
① 神に背いてしまったサウルは、自身に憑いた悪霊を退けるためにダビデを雇った
② ダビデはペシリテ人の勇者ゴリアテを討つことで、その名声を一気に上げた
③ 人気が自分を上回ったことに嫉妬し、サウルがダビデの命をつけ狙うことになる
といったところでしょう。
サウルの息子、ヨナタンもいっていたように、ダビデはサウルに害を及ぼすような存在ではありませんでした。
サウルは神に見限られたこともあって「ダビデに取って代わられるのでは…」という不安が少なからずあったのではないでしょうか。
そのままダビデを側に置いていれば、後のペシリテ人との戦いが優位に運べることもあったかもしれませんね。
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