このまま戦争に向かうのか、戦争回避を目指すのか、
満州事変直後、国内がそんな問いに揺らぐ情勢下で首相を務めた
岡田啓介。
陸軍青年将校によるクーデター未遂「二・二六事件」で襲撃を受けるなど、まさに激動の時代に日本を指揮した人物でした。
今回はそんな岡田啓介の子孫について。
なにより平和を願った父の背中を、子どもたちはしっかりと見て育っていました!
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岡田啓介の家系図
本文に登場する人物を中心とした系図です。
岡田啓介の子孫
岡田啓介はふさ、郁という二人の妻のあいだに、2男3女、5人の子どもを儲けました。
長男・貞外茂と次男・貞寛は共に海軍へ出仕。
娘たちは、政治家や軍人などにそれぞれ嫁いでいます。
子どもたちの経歴が、ほぼすべて啓介の職業と関係しているのがおもしろいんですよね。
詳しく見てみると、息子はもちろん、娘婿とも実の親子のように関わった啓介の人となりが垣間見えます。
啓介は先妻のふさ、後妻の郁のいずれもを第二次世界大戦前に亡くしているため、余計に子どもたちと密に関わろうとしたのかもしれません。
長男・貞外茂
啓介の長男・貞外茂は、海軍水雷学校高等科を首席で卒業したエリート軍人。
少将以上になるには欠かせないとされる海軍大学校もなんなく卒業しています。
優秀な人材というだけあり、太平洋戦争直前の1940年には、アメリカ西海岸にスパイとして駐在していたり…。
結局、同僚が現地警察に摘発されたため帰国を余儀なくされましたが、かなり危険な任務を任されていました。
戦時中の情報は父に随時報告していたということで、啓介としても非常に頼りになる息子だったはずです。
最期は1943年、太平洋戦争下でマニラを視察中に墜落事故で死没。
海軍中将・佐藤鉄太郎の五女・昭子と結婚していましたが、子どもはいなかったようです。
次男・貞寛
次男の貞寛は兄とは少し異なり、海軍経理学校を卒業。
海軍主計少佐が最終階級となっており、戦時中も主に経理・事務に従事していたようです。
啓介の晩年、『岡田啓介回顧録』の口述筆記を手伝ったほか、自身でも『私と父の二・二六事件』を残している著述家でもあります。
戦後は飯野海運や川崎汽船など、海運・貿易系の企業に勤務。
妻とのあいだに1男2女を儲け、現在の当主は長男の貞和さんに相続されているようです。
迫水常久
次女・萬亀の夫である迫水常久は、東大卒業後に大蔵省へ入省した高級官僚。
啓介が首相に就任した際は秘書官を務め、「二・二六事件」のときも官邸で身を隠していた啓介を救出しています。
終戦に立ち会った鈴木貫太郎内閣では内閣書記官長を務め、啓介にポツダム宣言受諾の報告をしたのも迫水でした。
その際啓介は、
と、言い聞かせるように語ったのだとか。
終戦後には著書『機関銃下の首相官邸』を発刊。
二・二六事件や太平洋戦争にまつわるインタビューもテープに残しており、現在も国立国会図書館に史料として保管されています。
戦後は公職を追放され、弁護士として生計を立てていた時期もありましたが、公職追放を解かれてからは再び政界へ戻りました。
義兄・貞外茂の墜落事故がトラウマになり、無類の飛行機嫌いだったという逸話もあります。
鈴木英
三女・喜美子の夫は、海軍中佐・鈴木英です。
長男・貞外茂とは海軍兵学校時代の同期で、共に成績優秀だったため、天皇陛下から「恩賜の軍刀」を授与されています。
太平洋戦争では
・ホノルル日本総領事館との機密連絡
など、これまた貞外茂に劣らない危険な任務を担いました。
航空隊長や参謀として従軍もしましたが、終戦は内地の航空本部で迎えたようですね。
戦後は海上自衛隊に入隊し、自衛艦隊司令官、幹部学校長などを歴任しました。
きょうのまとめ
岡田啓介の息子や娘婿たちは、全員が軍人か政治家。
戦時中の日本を支えるために奔走した面々でした。
ほんとにどの人物も重要な局面を任されているのがすごいですよね!
最後に今回のまとめをしておきます。
① 岡田啓介の長男・貞外茂は海軍水雷学校を首席で卒業したエリート軍人。太平洋戦争下で戦死した。
② 次男・貞寛は海軍にて経理・事務を担当していた。啓介の晩年には『岡田啓介回顧録』の口述筆記を手伝った。
③ 次女・萬亀の夫・迫水常久は、啓介の秘書官も務めた高級官僚。二・二六事件の際は、官邸に身を隠す啓介を救出した。
④ 三女・喜美子の夫・鈴木英は海軍軍人で、長男・貞外茂の同期。真珠湾攻撃に際し、実地調査やホノルル総領事館との連絡など、危険な任務を担った。
岡田啓介は海軍大臣のときも、総理大臣のときも、常に戦争回避の道を模索し続けた人でした。
息子たちもそんな父親の姿に、軍に協力したいと突き動かされたのではないでしょうか。
娘婿にしても、その影響を受けていることは明らかです。
このように家族との関係を見ても、岡田が特に人望の厚い首相だったことを納得させられますね。
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